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三限目の国語  作者: 理科実験室
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全部脱がないとできない

ぼくも今日の2限の終わりまでは3年生の時のようにまたおしっこすれば家までガマンできると信じていた。だからぼくは理科室から4年2組の自分の教室に戻る途中、西側の「男子児童便所」に立ち寄ると、そのときもいつものように小便器に向かいおしっこを始めた。

ところが、ぼくにこれまでに経験したことがないことが起こった。

おしっこ中に、うんちは引っ込むどころか、だんだんしたい感じも強くなっていった。これ以上おしっこを出そうとすると両方とも一度に出てきそうになったので、両方の穴を閉めてあわてておしっこを止めた。そのときうんことおしっこが逆流してくる感じはとても苦しかった。吐くかと思った。

それから、小便器を前にしてうんちとおしっこの二つの敵を相手にしたぼく一人の戦いが始まったんだ。

おしっこを出そうとちんちんを緩めると、いっしょにうんちまでせめてきた。それでうんちを押し返そうとおしりの穴を閉めるとおしっこが出せなかった。それでも何とかおしっこだけ出そうとぼくは努力した。

でも、おしっこは数滴出ただけでどちらも収まらなかった。それどころかぼくがこれ以上おなかに力を入れたらどちらが出て来るかわからないところまで追いつめられてしまった。ぼくは入学以来はじめての大ピンチを迎えてしまった。

そのとき、ちょうど壁の向こうの「女子児童便所」から個室のドアを閉める音とかおしっこの音とか水を流す音とかいろいろな音が聞こえてきた。

二人や三人なんかで連れ立って来ていて、外の子が「▲▲ちゃん、まだ?」ときいて、入っている子がおしっこの音とともに「ちょっと待って、今すぐ出る」と返事する女の子たちの気楽なおしゃべりが聞こえてきた。

ぼくにはそのおしゃべりがうらやましくて仕方がなかった。ぼくがあの個室に入っている最中に外から「おまえ●●だろう?」と聞かれても、絶対答えられない・・・。

女子も学校でのうんちは恥ずかしいからしたくないと言っているのは聞いたことはある。でも、これからおしっこするような顔をして個室に入れば中でどちらをしようと誰も見ていないし、「女子児童便所」の個室のドアが閉まっているのはいつものことなので男子をふくめて誰も気に留めない。

しかも、女子の場合、どっちもしゃがんでおしりを出してすることには違いないので、ぼくのようにおしっこしている最中にうんちしたくなったら、ためらうことなくおしっこの穴と一緒におしりの穴のほうも思いっきり開くだろうな。そして両方終わったら、まるでおしっこだけしましたという顔をして個室から出て手を洗って教室に戻るんだ。

でも、ぼくはオトコだった。あの後ろにある個室に入ってドアが閉めれば、そこは「男子児童便所」で、ぼくはオトコだからその場でウンコマン認定だった。

しかも今休み時間で廊下にはたくさんの教室移動や体育館の遊びに行く子たちがたくさん歩いていた。「女子児童便所」と違ってめったに閉まることのない「男子児童便所」の個室のドアを閉まろうものならば、たちまち注目の的になって、うんちしているぼくをのぞいたり、からかおうと集まってくるんだ。

ふだんは、女子はおしっこするたびにおしりを出さないといけないから大変だと思っていたけど、うんちしたくなったときは男子に比べたらおしっことうんちの間の壁が低くていいな。今のぼくにはそんな女子がうらやましくて仕方がなかった。

しかし、ぼくが越えなければならない壁はその男子にだけある高い壁だった。その高い壁を登れ、とおしっこが僕の背中を押していた。仮にうんちだけならば家までがまんできても、おしっこは次の休み時間どころかこの次の授業中に限界を迎えそうだった。

でも、おしっこだけしようとしても、うんちが出てきそうで、家でのうんちはもう絶望的だった。

ぼくはおしっこをこの場でもらさないためにも、恥ずかしいけどウンコマンにならなければならないことを覚悟した。

でも、そのとき、まだ学校でウンコマンになろうとしている自分をまだぼく自身許せなかった。ただ、おしっこをするためにはウンコマンになるのは仕方ないんだ、こっそり入れば見つからないよ、そのようにぼく自身に言い訳する自分もいて、それはやがて何でもいいからラクになりたいという気持ちの支援も受けてぼくの頭の中で圧勝した。

気が付くと、薄暗い「男子児童便所」にはぼくと、隣の同じ組のさちお君だけが小便器の前に立っていた。

もちろん個室は開いたままだった。ぼくはちんちんを持っておしっこをしているふりをしながらさちお君が去るのを待った。さちお君がおわったら絶対あの個室に入ろう、ぼくはそう心に決めていた。

でも、さちお君はよほどガマンしていたらしくて、はーっと気持ちよさそうにため息をつきながら長くじょぼじょぼという音をさせていた。その時間はぼくにはとても長かった。

それは、ただうんちとおしっこの両方で苦しかったというのもあるけど、さちお君のおしっこが終わるまでの時間がぼくが個室に向かう覚悟をしなければならない時間だったことが大きかった。さちおくんが「男子児童便所」を出て4年2組の自分の机に座っているころ、ぼくはあの個室の中でお尻をだして便器にしゃがみウンコマンになっているんだ・・・。


そんな入学以来ついさっきまで自分は絶対しないと思っていたことをこれからすると思うと、何かしてはいけないことをするときのようにぼくの胸はドキドキした。

でも、さちお君のおしっこは彼が隣に立っているぼくがそんなことを考えているなんてまるで気付かないかのようにじょーっと気持ちよさそうに続いていた。

それからしばらくして、さちお君のおしっこの音はようやく止まった。そしてぼくがウンコマンになるときがきた。

でも、彼はちんちんをふりズボンにしまいながら、そんなぼくに「お前もションベン長いな」とおせっかいにも聞いてきた。ぼくがうんちしたいのが彼にばれたらどうしよう、と頭がパニックになり胸のドキドキが最高潮に達した。やっと「ちょっと・・・」と答えかけたとき、さちお君は「オレ先にもう行くよ!」とチャックを閉めて、走ってトイレの出口に向かった。

よかった、彼はいまのぼくを気にしていなかった。彼は何かあるのかぼくを気にするどころか手も洗わずにそのまま教室に戻った。「ちんちんを持った手を洗わないなんて汚ねーな!」ぼくは思わず心の中でつぶやいた、ぼくはこれからもっと汚いことをするけど。

でも、それから手洗い場に長々と手を洗っているよりは早く苦しみがおわるわけでぼく自身にとってラッキーだった。これで「男子児童便所」には前の手洗い場もふくめてぼく以外には誰もいなくなった。今がうんちする絶好のチャンスだった。ぼくはちんちんをしまいズボンのチャックをあげて個室に向かって歩いた。

ぼくのいた西側の「男子児童便所」に個室は二つあった。

ぼくは入口から遠い方に向かった。もう隣の「女子児童便所」の声も聞こえなくなったことあって「男子児童便所」は授業が終わり学年の子たちが押し寄せてきた最初の数分前がうそみたいに静かだった。個室に向かうぼくの運動靴がたてるパタパタという音だけが響いた

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