前編
ひっさびさに思い付いたから投稿しました。
Twitterのチャラ男構文見てたら思い付いた。
「ウェーイ☆オタク君見てるー?」
手元のスマートフォンの画面に映し出される友人の姿。
画面の端には自身の最愛の女性の姿が映っている。
映像が進むにつれて、不安が胸を締め付ける。
最初は理解が追い付かなかったが、その映像が終盤を迎える頃には、大事な、掛け替えの無い大切なものを失ったという虚無感が押し寄せた。
信じられない。
信じたくない。
悔しくて。
悔しくて。
悔しくて!
何故?
どうして?
こんな事になってしまったんだ!!
―――時を遡ること数か月前。
そう、あれはまだ、僕たちが高校の昼休みをいつものように穏やかに過ごしていた時。
「ウェーイ☆オタク君なに読んでんのー?」
彼はチャラ男君(仮称)。
見た目はチャラいが陰キャの僕に普通に話しかけてくれる数少ない友人だ。
「こ、これかい?これは今日発売されたラノベで、主人公が異世界に召喚されるところから始まって、(以下、異様に早口で内容を語っているので略します。)で、やっぱりよくあるナーロッパ系特有の(以下、異様に早口で内容を語っているので略します。)ていう事なんだよ。」
「……なるほど☆(よくわかってない。)」
「あ、ごめん。僕ばっかり話しちゃって。つまらなかったよね?」
長々と一方的に話してしまい、申し訳ない気持ちで謝る。
「いんや?俺バカだから内容は良く解らなかったけど、オタク君がそんなに言うってことは、きっと良いもんなんだって言うのは解ったから全然つまらないってことは無かったよ☆」
「チャラ男君……」(トゥンク……)
「ところでさ、オタク君☆」
チャラ男君が何か言いたそうにしている。
「何かな?」
「オタク君の足元、めっちゃ光ってるけどダイジョブ?」
チャラ男君が指さす先である、僕の足元を見る。
そこはチャラ男君が言ったと通り、めっちゃ光ってた。
あからさまに「私、魔法陣です。」と言わんばかりに幾何学模様に光り輝いていた。
「オタク君ヤバいじゃん☆これ、あれじゃん?オタク君がよく読んでる本の召喚?的なやつじゃん?ウケるw」
不味い!
これは、不味い!
なにが不味いかと言えば、この手の召喚系は大体が異世界側では対処できない敵がいるから召喚するパターンが殆どということだ。
しかもここは教室。
このパターンは基本的に教室全体が召喚に巻き込まれるくらい大きい魔法陣か、カースト上位数名プラス陰キャという組み合わせが殆どの筈なのに、これは何故か陰キャ(自分)ピンポイントの個人サイズの魔法陣だ。
そういう場合は、大抵が召喚される側が、KOBUJUTSUだったりKENJUTSUの達人か、前世や生まれが特殊なパターンの筈。
にもかかわらず!
マジで何にもない【ただの陰キャ】である僕が召喚されるのは基本的にあり得ない。
そういう場合は危険の無いハーレム系じゃないかって?
それは陰キャのフリしたコミュニケーション能力カンストの【ハーレム主人公】というナマモノだ。
絶対に陰キャではない。(Q.E.D.証明終了)
※この間0.1秒
ん?意外と冷静だな。
あと、チャラ男君ウケてる場合じゃないよ……
と、とりあえず魔法陣からどこう。
「!?」
足が動かない。
「オタク君どしたのwww?」
僕の動きを不審に思ったのかチャラ男君が僕の肩に手をかける。
その瞬間魔法陣が一際輝き、僕とチャラ男君は教室から消えたのだった。
――――
パシャッ。
パシャッ。
ウケル―。
「……ぅん?なに?」
何かの音が聞こえて目を覚ます。
どうやら気を失っていたらしい。
「はっ!?ここは?」
「あ、オタク君やっと起きたのww」
あたりを見回すと見慣れた友人の姿と見覚えの無い豪華な造りの部屋。
「チャラ男君!?なにが!?」
「なんか良く解らないけど、異世界に召喚?されたみたいだわ。」
友人の口から突然のファンタジー。
いや、直前の記憶からしてもそうだろうとは思っていたけど、まさか自分が召喚されるとは。
それからなんやかんやあって部屋に入ってきたメイドさんに連れられて、見るからに謁見の間ですと言わんばかりの扉を潜り、現在謁見中。
「おお。勇者達よ遥々遠き世界より良くぞ参った!」
「うわwめっちゃ王様じゃんウケるww」
そう言いながら王様の言葉を無視してスマホで撮影しまくるチャラ男君。
これは完全に首が飛ぶ案件。
「チャラ男君不味いよ。」
「そちらの勇者の言う通りです。陛下の御言葉を無視するとは何事ですか!不敬ですよ!即座に跪くのです。」
チャラ男君の態度におそらくこの国の姫と思わしき僕たちと同年代らしき少女が声を荒げる。
「良い。突然了承も無く召喚した此方の方が礼を失しているのだ。」
「ですが陛下!?」
「余が良いと言ったのだ。それともなにか?お前は余の言葉に異を唱えるのか?」
「ッ……申し訳有りません。」
王様の言葉で姫は消沈した。
眼力強っ怖っ!
その後はなんやかんやあって例の如く魔王倒して来てと依頼されて、召喚時に付与された僕の能力が良くある勇者的なバランス型で5回まで使える触れたものを消滅させるスキル付きだったり、チャラ男君が錬金術っぽい道具作成能力だったりしてヒーラーとして優秀なうちの姫を連れてけというので三人で旅をすることになった。
あと軍資金として王様から手形を貰ったのでお金の心配は要らない。
国内ならこれ見せれば王宮にツケにして貰えるそうだ。
ついでに伝説の剣も用意されてた。
引き抜けないから台座ごと持って来たらしい。
至れり尽くせりだった。
50Gで世界救わせようとする王様なんて居なかった!
旅が始まってからは色々とあった。
王都周辺に生息しているスライムに半殺しにされたり。
敵の幹部と戦って初手でロッズフロムゴットを連発してきて消滅スキルを使い切らされたり。
敵と戦ってる最中に崖から落ちた姫と一緒に川に流されたり。
その後なんやかんやあって姫と仲良くなったり。
まあ、色々あった。
そんなこんなで現在は魔王城突入前に付近の森で野宿。
明日に備えて食事している最中だ。
「はい。これオタク君の分。」
「ありがとうチャラ男君。」
チャラ男君が器に盛った食事を手渡してくる。
「姫ちゃんもどーぞ―。」
「ありがとうございます。」
「それじゃいただきまーす。」
チャラ男君の音頭で食べ始める。
しばらくして僕は急激な眠気に襲われた。
そして、意識を保つことが出来ない強い眠気に負け、僕の意識は落ちた。
「……ッ!?これはいったい!?」
「オタク君?オタクくーん?……うん。寝てるね☆」
ペチペチと頬を軽く叩いて意識を確認するチャラ男。
「よしよし。完全に寝てるね☆」
「チャラ男!彼に何をしたのですか!?」
「何って?見て解るっしょw睡眠薬盛って寝て貰ったんだよ☆これで明日の昼までは絶対に起きないよ☆」
悪びれもせずそう語るチャラ男。
「何故!?明日は魔王を倒しに行くのですよ?どうしてこんな事をしたのですか?」
「なんでってそりゃあ、これからヤること、オタク君が起きてたら困るからに決まってるっしょwウケるww」
そう軽薄な笑いを浮かべながら姫に近づいていくチャラ男。
彼の手には何かが握られている。
それは以前に彼が作った道具で失敗作だと言ってすぐに隠してしまった物だった。
姫はその物体から異様な気配を感じ後ずさる。
「止めなさい。それ以上近づかないで!」
「大丈夫大丈夫。悪いようにはしないってww」
チャラ男はさらに姫に近づいていく。
――――この数時間後、目覚めた僕は何故意識を保てなかったのかと死ぬ程後悔することになるとは、まだ思っていなかった。
後編に続きます!
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