子供達
「………何言ってるの??」
「ですから!先生に先生をしてもらいたいんです!!!」
いつもの日常。
なのにこの子はとうとう壊れてしまったようだ。
真面目な、真剣な表情でそんな変な事を言ってくる辺りよっぽど疲れて心が疲弊してしまったのだろう。
そんなリアにと取っておきの紅茶を用意してあげようと立ち上がるトキオにリアはまだ食らいつく。
「これは先生だから出来る先生なんですよッ!!」
「そうだねー。あっ、お茶請けクッキーでいいかな」
「真面目にクッキーがいいですッッ!!!」
真面目に聞いてください!とクッキーがいいです!がごちゃまぜになってるよー
やっぱり仕事疲れが来ているのだろうなーと思いストレス解消に利くアールグレイを用意してあげようと考えた。
「大体、先生が先生になってどういうことなのか説明してくれる?」
「??何言ってるんですか先生。もしかして疲れてますか??」
この一言はかなりムカついた。人が心配してるのになんで逆に心配される必要があるのかと。そう感じていた時にはトキオの手は無意識にリアのほっぺを引っ張ってお仕置きをしていた。
「ひ、だいです!!ぜんせいッ!!!!」
「おい!とにかくイチからキチンと話してみなさい!
君は、リアは会話を簡潔にしようとする癖があるからねッ!!!!」
「ばがりまじたから!!!はだじでッ!!!!!」
分かってもらうために強めに引っ張っていたから離した時にはほっぺが真っ赤になっていた。痛がるほっぺを擦りながら
「私の友達がやっている託児所の先生が怪我をしてしまいまして、その先生、子供達と一緒に大きな絵を描いていたんですけどそれも出来なくなって……でも先生ならその先生の絵を真似て描けますよね?先生の言うこと理解して先生の絵を先生なりに描けると思ったので先生に先生を……って、いたたたたただだだだだあああああぁぁぁぁッッ!!!!!」
このバカリアが。そんな事をあんな簡潔にいって理解出来ると思っていたのか……あまりにも腹が立ったのでリアの尖っている耳の先を強く握って引っ張ってやった。
「な、何するんですか先生ッッ!!!!」
「あんな簡潔な言葉でそれだけ濃ゆい内容が分かるかあッ!!」
「だったとしても乙女の、それも、み、耳を引っ張るとか……ハレンチですッッ!!!!/////」
「どこの要素にハレンチがあるのか分からないけど……とにかく、やりません」
「な、なんでですかッッ!!!??」
この子は、本当に分かっていっているのか??
「前にも言ったけど、僕のこの"描き師"の力は、他人を真似るということに関しては使用が厳しいってことを分かって言ってるの??」
それをいうとリアはシュンと大人しくなった。
"描き師"それはこの世界に来たときに得た力である。
自分が描くものに対して万能の力を発揮してくれる。
だからこそ、自分の思い描くものしか描かない。それを破ればこの世界に偽物が溢れることになるからだ。
そう、どんな名画もこの力があれば簡単に複製出来る。
本物が本物と全く同じなどあり得ないのに、それがこの世に生まれてしまうのだ。
もちろん加減すればそんなことはないだろうが、それでもその力を求めて悪巧みするものが増えるのは間違いない。そしてそれはきっと自分だけではなくリアにも……
「とにかく、前みたいに喋らないという確証がないかぎりは無理だよ。
それに子供達が完全完璧に誰にも話さないって根拠はある?」
「……………先生、意地悪です………」
そう言われても、リアの身を考えればやらないといけないこと。
すでに僕の担当がリアだというのは知れ渡っわている。だからこそ僕の力を利用しようとしてリアを脅しに使う可能性があるのだ。そうならないようにすでに手は打っているがそれでも安心は出来ないのだ。
しかし、リアのお願いも聞いてあげたいというのは、まぁ、あるが……
「……仕方ないな。託児所に、連れて行ってよ」
「せ、先生……ッ!!」
「僕がやらなくても、"絵"っていうのは何も描くだけが絵じゃないんだよ。」
「えっ?」
……………………………………
「「「で、出来たあぁぁぁぁぁッ!!!!!」」」
託児所のフロワ一面に広がった絵。
それを多くの子達が出来上がった絵に感動している。
その輪の中に今回ケガをした先生が涙を流して感動していた。
「出来て……良かった………」
子供達との絵はその先生とそれを取り囲む子供達の絵だった。
今回提案したのは折り紙などのカラフルな紙を手でちぎり、それをいくつも貼って絵の具の変わりに絵を描く方法だった。
これなら筆もいらない。紙を貼るだけの作業なら怪我していても出来るから。
「本当に、本当にありがとうございました……ッ!!」
「いえいえ。完成して良かったですね」