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アリー

「先生ー!!今日は差し入れを持ってきましたよー」


いつも元気なリア。

今日は最近オープンしたケーキ屋のショートケーキを買ってトキオの所に来たのだが、いつもの通りに「いませんよ」とか「寝てます」とかの"いますよ"の返事が返ってこない。

お店の扉は開いていたのでいるはずなのだが、何かに集中していても返事してくれるトキオが何も言わないなんて………


どうしたのだろうと、扉は開いていたのでとにかく侵入し確かめようとお店の奥へと足を進める。


するとお店の奥で、いつもトキオが何かを執筆する時に使う部屋で声が聞こえてきた。それも独り言ではなく誰かがいるようだ。


「ここの細部はもっと派手やかにと申しましたよね?」

「そうしたらバランスが悪くなるんです」

「そうでしょうか?私にはきらびやかになると思いますが如何ですか」

「ご自身のお部屋ですよ。派手すぎると気が滅入りますよ」


どうやら先客がいたようだ。

このお店に直接くるお客は珍しい。大体会社からリアに連絡が来てそれからトキオに注文を入れる形にしているのだ。

それがなくこうして来ているということは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


しかしこのままここに留まるとせっかくのケーキが……と考え、思い切って二人の前に出てみることにした。


「す、すみません……」

「リア。来てたんだね」

「あぁ。貴女がトキオの担当している……なるほど……」


出来るだけ邪魔しないようにゆっくり部屋に入ると会話を止めてこっちを見てくれた二人。トキオはいつも通りの反応をしてくれて、隣にいる女性はリアは観察するかのようにジッと見てきた。


「え、えーと………」

「アリー、リアが困ってるから」

「すみません。つい……」

「い、いえ……」


見た目はリアと同じ位の女性。

しかしとんでもなく気品がある人に見えた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「リア。この人はアリー。リア、この人が僕の担当になってくれたリアですよ」


「アリーといいます。マイペースなトキオには困ってませんか?」

「リアです。はい、困ってます」

「さっそく仲良くなって良かったです。ちょっとお茶を用意しますね」


トキオに対しての悪口なのにまったく気にすることなくお茶を取りに出ていった。それにはお互い経験があるのか苦笑いして


「皮肉をいっても全く相手にしてもらえない。相変わらずなのですね」

「そうなんですよ。締切ギリギリだから焦ってほしくても全然応えてくれなくて……」


「あれは1種の病気ですわ。やっぱり医者に見せるべしかしら」

「無理だと思いますよ。先生の病気は死んでも治りません」


そんなことをいい、ちょっとした間が空いたあと二人して笑いだした。

本当にお互いに苦労していることが分かり、そしてトキオを信用しているのだろうと言うことがそれだけで分かった。


「そうだ!アリーさんもケーキは如何ですか?最近オープンしたお店のケーキなんですよ!!」


「それはぜひとも。私、甘いモノには目がないのです」

「はい!!先生ーお皿とフォークを3つ持ってきて下さーい!!」


奥の方から「はいはい」とため息混じりの声が聞こえてきたが、戻ってきたトキオのトレーには紅茶とケーキを取り分ける為のお皿とフォークがあった。


「このショートケーキは人気なんですよ!!

私のコネを使って朝一番に用意してもらったんです!」


「おお。確かに美味しそうだ」

「休憩を兼ねて食べますか」

「はい!!」


…………………………………


ケーキを食べながら談笑をしているとフッとアリーからこんな質問が出てきた。


「そういえばどうしてリアはトキオの担当に?

この人は基本的にこの店から出ないから接点もなかったでしょう」


「先生との出会いは偶然だったんです。

私仕事を探しにこの街に来まして、で、この街のお城は凄いと聞いていたのでまず始めにお城を見学に行ったらそこで迷子になって入ってはいけない場所に侵入してしまって………そこでお城の内見に来ていた先生と会いました」


「そしてその時に僕の服装がお城と合わないから何をしている人ですか??と訪ねられて答えたらこんなふうに」


「そんな簡単に仕事を決めたんですか??」


それでもその時は心細かったリアにとっては助けであり、王族や関係者じゃないと入れない場所を、それも平然としているトキオの姿に衝撃を受けたようだ。そしてなにより決め手が


「だって私も先生に付いていくことがあれば、もしかしたらもう一度お城に入れるかもしれないじゃないですか?そして偶然にお姫様に会ったりして一緒にお茶をすることだって出来るかもしれないじゃないですか!!?」


そう一番の決め手は今度は正々堂々とお城に入って見たかったこと。願わくはお姫様とお茶をすることらしい。それを聞いてポカーンとするアリーに苦笑するトキオ


「言ったでしょう。この子も変わってるって」

「……確かに。トキオに合わせられる者なんて一般人ではないかもしれないですわね」


「それってどういう意味ですか!?アリーさんも笑わないでください!!」


そんな子供のような願いのために仕事を決めたリアに対して笑いたくもなる。そんなトキオとアリーに対してむくれたリアは立ち上がってその場から離れていった。


「もう!ヒドイです!!私は先生ほどおかしくはありません!!」

「そうなんだね。ちなみにお姫様を見たことある??」


「あるわけないじゃないですか??何言ってるんですか??」

「えーと、名前は知らないのかしら??」


「アリシア·フォード·スタンですよね。それくらい知ってますよ!!」


自信満々にいうリアを見て二人は何か信じられないような不思議な表情をしたようで、それを見たリアが不審に思って


「なんですか二人とも。あっ!私が常識がないって思っていたんでしよう!!!」

「………そうだね。いま確証を得たよ」

「なんでそうなるんですかッ!!!??名前、合ってましたよね!ねッ!?」


それをアリーに問いかけるために距離をつめてくる。それに動揺するアリーは苦笑いをしながら


「あ、合って、合っていましたよ……」

「視線を合わせてください!!」

「ほら、アリーも困ってるから止めなさい」


力づくでアリーからリアを離したトキオ。しかし未だに納得していないリアは


「いくら私が田舎からの出もそんな扱いしなくてもいいじゃないですか……私の所ではお姫様を見る機会なんてないんですから……」


「でも、この街にきたら見るよね。よくポスターがあるでしょう?」

「先生が描いたポスターですよね!!もうあれは会心の出来といってもいいんじゃないでしょうか!!気品があり美しく、聡明で透き通るようなそのお姿がハッキリと描かれてますッ!!!もう素晴らしいですッッ!!!!!!」


「………………………」

「………………………」


そこまでハッキリ見ているというのに未だに気づかないリア。

目の前にいるアリーがそのお姫様、アリシア·フォード·スタンだというのに………

服装や帽子、眼鏡をかけているかもしれないけど、そこまで力説するぐらいなら見破ろうよ…………


未だにポスターのアリーについて一人力説しているリア。

そんなリアに聞こえないように………


(どうする?正体明かします?)

(い、いえ……リアが落ち着いてからにしましょう……)

(僕的には気づくまで言わなくてもいいと思うけどなー)

(流石に落ち着いたら気づくと、思いますけど………)

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