84話 カジノ船騒動 前編
「なるほど、そういう事でしたか、ようやく腑に落ちましたわ」
歩兵愛の町の配送ギルドマスターであるラミアの女性であるルイさんをシェルター内部の応接室に招待して、まだ予想ではあるが自分の考えを話すと、こう返答された。やはり、滞在期間が長い事に違和感を感じていたらしい。曰く、最初は余程、引き抜きの交渉とかに時間を使ってるのかと思ったがその様子が無い。と言うか、普通にカジノとして営業しているだけで、物凄い違和感しかなかったらしい。裏の噂も知っているから余計にだそうだ。
「ええ、ですから、おそらく、目的を達成すれば、すぐにでも港から離れるはずです。そこで・・・」
「なるほど。是非、お願いしたいわ。こちらがやってほしい事に関してはすぐに用意しておくわ」
契約完了!ってとこかな。後は引っかかってくれれば良しだな。
「だからって、即日作戦成功するかね、普通」
『あ、あははは』
はい、現在、深夜にカジノ船の拉致担当の連中と思わしき連中が自分達が意図して泊まっている隙だらけの高級宿にやってきたのだ。初日に。いや、こういうのもなんだが、拉致するならもう少し慎重に慎重を期してから行動しろよと言いたい。まあ、ギルドも目を掛けている人間を拉致ともなればスピード勝負もある意味では間違っていないけど。間違ってないけど、重要人物が即日誘拐されるって疑いが確定する事なんだから、もう少しさあ・・・・・・
「いや、表面上寝ているように見える手乗りサイズ幼女を囲む如何にも怪しいですよなフードの連中って、本当に怪しいしか言葉が出ないな」
「ですね」
レインさんも苦笑気味である。今、まさに箱に入れられ抱えられて、向かう先はグルグル回ってるように見えて、潮の匂いが強くなっているから港だろう。いや、もう少し取り繕うなり、何処を周っているのか分からないように何らかの対策ぐらいしろよとここでまた言いたくなるのを外には聞こえなくてもグッと堪える。一応、情報でこちらも転生者と言う事知ってるはずなんだけどな・・・
「あちらの準備は?」
「すでに完了しているそうだ。いつでも行けるとの事だよ」
とある人達と連絡を取っていたリィルさんがそう言うと、自分は頷く。では・・・
「これだけ急いでるんだ。早速黒幕とご対面しようじゃないか」
全員がこくりと頷く。と言っても、もう、末路は決まってるんだけどね。ん~、セーフかアウトかは、黒幕さんとのお話次第・・・・・・かなあ?
「 」
さて、とりあえず、一言だけ良いだろうか?外へのマイクを切ってあるので、きっと女性陣も同じことを言うだろう。うん、せーの・・・・・・
『 無 い わ 』
外では黒幕がべらべら喋っている。ああ、あまりのインパクトに詳細を思い出すのを忘れていた。まあ、お約束のようにカジノ船の奥の方に連れて行かれた自分達を歓迎した者は、こう、なんだ。お前、ホントに何だ?と言いたくなるようなコッテコテの、こうライトノベルに出てきそうな悪役のセリフしか吐かない小太り気味で貴族趣味とでも言おうかそんな服を着た男であった。てか、多分、頬が紅潮している事から陶酔している・・・て言うか、かなり、いや相当にキモい。
「え~と、こいつが悪役喋りして、陶酔している内に整理しよう。まず、シェルター能力が欲しい件について」
「せこいですが、考えましたね。違法なモノを隠す倉庫扱いですか」
レインさんの言う違法なモノ、それは薬とかには限らない。例えば、禁止テイムモンスター、強制奴隷などがある。中でも、モンスターは高く売れるというのもあるが稀少なモノが多い為、禁止とされた物は本当の意味で禁止されている。また、強制奴隷も奴隷商ですらやらないが強いスキル持ちは高く売れる。こういう取引は地球で言えば、単純所持を禁止している言うレベルで、発覚次第、即時死刑まで行くそうだ。まあ、それでも需要はあると言う事だ。つまり、陶酔してる奴の狙いはそういう事である。
「闘技コーナーでのごまかしも限界がありそうなので、シェルター持ちに運ばせる・・・と。万が一、バレてもシェルター持ちが犯人になるし、スキル封印されれば証拠が出てこないだけって訳か」
「せこくはあるけど、カジノ船自体に被害は無いって訳ね」
アマネさんの言う通り、せこくはあるけど、本当に考えられている。要するに、徹底的にカジノ船に繋がりはあれど、いつでも切れる状態にしていると言う事だ。う~ん、せこい!大事な事なので何度でも言う!
「更にスキル強度を求めたのはスキル封印でも容易に封印出来ないと思ったから・・・ね」
あながち間違いではない。自分は勿論だが、アマネさんやオウカさんの能力を封印したとする。確かにスキル強度も高く、封印も容易ではないが、出来ない訳ではない。しかし、時間はかかる。そして、その間に遊覧と言う名目で逃げればカジノ側には何の損害もない。むしろ、シェルター持ちに全てを押し付けれると言う訳だし、スキルが封印されたら、中から取り出せないし、証拠も暗殺などを行えば隠滅出来る。スキルが封印されてしまえばただの人だからね。
「しかし、こうなんだ。転生者ってこういうベラベラ喋りは危険だと思ってる人多数だと思ってたんだけどなあ」
「もしかするとですが・・・・・・私の予想前提になるのですけど・・・」
ここでアマネさんが手を挙げる。続けてと頷く。
「外の太っちょな男の方の髪色見る限り、多分、日本人転生者ですよね?染まっちゃったんじゃないですかね?」
『ああ~』
自分も含めた地球組が頭を抱える。そうだよ、なんで思いつかなかったんだ。こいつの主張、SNSとかに良く載るDQNの文法そのものじゃんか。
「あ、演説終わったみたい。んじゃ・・・」
中指を立てるように操作するとお約束な「ならば、ゆっくり考えてください」的な事を言われ、閉じ込められましたとさ。分かり易すぎて草しか生えない。
「あっちの準備は?」
「いつでも・・・だそうです」
くすくすとレインさんが嗤うと他の女性陣も嗤う。笑うではなく、嗤うと言った辺り、あの小太りの男が何を言ったかお察し頂きたい。う~ん、それでも美人!
「それでは、作戦開始と行きますか」
まあ、自分も許す気はさらさらに無いけどね。行動開始と行きますか!
まあ、やってる事はラノベファンタジー世界のテンプレの犯罪の為でしたが、こうなったのも勿論理由があります。その辺りは後編にて。このお話でもアマネさんがヒントを出してますね。ヒントと言うか、モロですがw
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 9
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV1




