8話 ポーションを売ろうぜ! 前編
「配送終わりました」
「はい、お疲れ様です。ポーションの納品2件で銅貨10枚になります」
あれから2日後、ひとまず今月の依頼を受けるという名目でギルドの依頼を受け、完遂した後に訪れる。
午前に受けた依頼だけに終わった頃には、所謂、昼休みだったので、人もまばらだ。今がチャンスかな?
「あの、ギルドマスターにカミヤが相談があると取り次いでもらえますか?」
「しばらくお待ちください」
割とありがちな理由とか聞かれると思ったが、すでに受付員には告知済みなのか、すぐに手続きが始まったようだった。
「以前の筆記試験部屋でお待ちです、どうぞ」
スッと渡されたのは鍵。要するにこれが許可されたという証明書替わりなのか。それを受け取ると、部屋に向かう。カギを使うとカチャリと外れる音がし、中に入る。
入ると、オランジェさんは前回同様椅子に座っていたので対面に座る。鑑定で防音になっているかもチェックしておく。念の為は大事だ。
「どうかされましたか?」
「ええ、実は、色々相談があるのですが、まず・・・」
とりあえず、ポーションジュースの事は伏せ、新しいポーションを実物と共に出し、これを売りたい事、売れるルートはあるか?等を聞いてみた。
「端的に申し上げますと、売れます」
余分に作っておいた1本を飲んだマスターの第一声がそれだった。にしては、震えてるような?
「ただし、銅貨3枚どころではありません。これ1本で鉄50、いえ、出す所が出せば、金貨1枚になるでしょう」
「はい?」
どういう事だ?確かに等級は上がっているし、説明文も少し変わったが、数倍どころか数十倍以上?!
「ど、どういうことですか?」
思わず、セリフが片言のようになってしまった。いや、驚くなと言う方が無理だわ。
「ポーションの、特に飲み用のポーションの評判は御存知でしょうか?」
「いえ?」
特に気にした事は無い。そういえば、ポーションの塗りの方はともかく飲みの方を買うと、良いのか?って何度も念を押された気がする。
いや、まさか・・・
「ポーションは苦いって鑑定できますけど、まさかですか?」
「はい。苦い、いえ、苦しい!ドロドロして、喉が焼けるようになる!戦闘中飲むと、100%吐いて隙をさらす。たとえ、死にそうになっても飲みたくない!瀕死になってから飲ませろ!気付けにもなる!これが、冒険者に限らず、ポーションを飲んだ人間の感想です」
わあい・・・そういえば、まずい方のポーションを窓から流して捨てた後、モンスターが近づいてこなかったのはもしかして・・・獣の鼻からしてもクッソ匂う上にまずいのか?それ、ポーションじゃなくて、某国民ロープレの聖水じゃね?まさか、中型・大型モンスターにも効果あったりしないよね?あははははは・・・
いや、もしかして、コレは別の意味でまずい方のポーションの使い方思いついたが、今は口チャックの方がいいんだろうな。
「それが!このように飲みやすく!普通に飲んでもまずくなく、喉越しもドロドロじゃない!ああ、なんという神のポーションッ!いや、ゴッド!」
ギルドマスターが壊れた。いや、何かしらの時に飲んでトラウマになったであろう経験を咆哮し、感動している。美人でスタイルも良いエルフさんなのだが、今はちょっと怖い、うん。
ここが防音で良かった。本当にね。しかし、ちょっと、色んな意味で迂闊だったかな?だって、次のセリフが容易に想像つくもん。
「これ、いくつ作れますか?!うちに全部卸してください!」
だよねえ。意識して作った訳では無いが、ポーションの実情を聞いてしまうとそう言われると思った。コレ、ジュースポーションを出してたらどうなってた事やら。当分、冷蔵庫にしまって置く事が確定した瞬間である。
「落ち着いてください。次の相談を聞いてからでも遅くはないと思います」
「え?」
実はポーションに関しては一つの予想と一つの実験をしたくて、ここに来たのだ。
「このポーション。多分、一手間加えるだけ、時間がかかるだけで作れるとしたらどうですか?」
「なんですって?」
ポーションを作りながら気づいた事がある。それは非常にある視点では正しくはあるが、今までとは違うやり方だ。要するに 通常の方法では出来ない という事だ
このポーション作成に関して、それを証明する事は2つ。1つは調合レベルが上がらなかった&取れなかった事。もう1つは作り方、これらを総合して考えると、おそらく・・・
「今日、ギルドに来たのはこのポーションの販売経路と、作り方の実験です。今の所は自分しか作れませんが、予想が正しければ、どのギルドでも作れるでしょう」
「私は何をすれば?」
「はい、ギルドマスターが最も信頼し、口が固い、錬金スキル持ちと、料理スキル持ちを呼んで欲しいんです」
そして、いくつか用意して欲しい物を言うと、文字通り、カッ飛んで行った。あの、残された自分はいったい何をしてれば・・・あ、どうも、いつもの受付嬢さん、お茶、ありがとうございます。
ポーション売りの前段階のお話でした。マスターの暴走はまあ、無理からぬことという事で、そらねえ、ドロドロしてるポーションに悩まされたであろう見習い時代とかあればそうなるかなって。ある意味、主人公はこの後に冒険者の登竜門を叩く若者の救世主かもしれませんね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 2
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV 4