55話 稼ぎの結果と思わぬ素材の情報
「ふぃ~」
うん、まあ、想像つくと思うけど、昼の分は瞬時に完売した。最初こそ、客は居なかったのだが、門番が昼にステーキとパンを購入した事から流れが変わった。
肉が焼けている匂いと焼き立てのパンの匂いって、人間抗えないもんなんだなと分かった瞬間でもある。勿論だが、ダンジョンアタックしてるクラン内のシェルター能力による調理などもあるが、こちらはスキルだけでなく、しっかり腕を磨いていた調理者が作るバフ無しとは言え鉄板でしっかり焼いたステーキに竈で焼いたパンの香りが漂えば、そら、目を引くという話である。
「昼に用意した分は完売しましたね」
「夕方もこの分だと完売しそうだよね」
自分の言葉にオウカさんの返答に頷く。いやあ、凄かった。こう、ね?切ってあるとは言え、ステーキ肉が漫画みたいに次々焼かれて、皿に乗って消えていくのって軽くホラーだと思うよ、自分は・・・
「ステーキ分だけで銅貨200枚」
単純計算、40枚のステーキが売れたという事である。スープに至ってはラーメン屋にあるような寸胴2つ用意してあったのだが、こちらもカラである。
「予想以上であるとしか言いようがない」
自分の言葉にうんうんと頷くうちの女性陣。いや、まあ、売れると踏んではいたが、ここまでとはね。途中からリンさんの指導の元に地球における最新調理器などを使って、自分達も手伝いしてたもんなあ。スチームオーブンに、AI搭載のコンロ、マジ偉大。ビバ、技術大国、日本。いや、マジで。
「コンロの方も学習とレシピをブチ込んだし、調理は更に楽になるとは思うけど、まさか、これほどとはねえ」
中にはでかいクランなのに涙流して食べてる奴も居たからなあ・・・・・・あれ?おかしい、高ランククランって、料理スキル高い人居るのでは?
「いや、待てよ?リンさんは前世、料理関係色々やってたんですよね?」
「そうですね。色んなレシピや料理試してました。お金だけはありましたからね」
オウ、思わぬとこで判明するリンさん、前世セレブ説ぅ!ん?てことは、う~ん?
「もしかして、スキルの量の違い・・・か?」
「と言いますと?」
自分の呟きにレインさんが反応する。まだ仮説なんだけどね、うん、多分、間違いは無いと思う。
「料理スキルを取る。料理スキルのレベルが上がると出来た料理は美味しくなる、これは間違いない、ここまではOK?」
そう、料理スキルは取れば料理が上手くなる。これは確かだ。しかし、おそらくここに恐ろしい抜けがある。
「確かに上手いんだが、美味いじゃないんだ、美味って文字が付く方のね」
そう、上手く作る技術はある。技術はあるが、おそらく、美味い物を作る技術、つまり、リンさんが持ってる中華や和風、フレンチ料理などの料理派生スキルを取得してない人が多いと思われる。
「多分、料理スキル高い人は総じて、模倣、これに近いと思うんだよね」
「あ、なるほど」
これに関してはリンさんが一番早く理解し、首肯する。
「どういう事、リン?」
「えっとですね、ご存知と思うんですけど、レシピ有りますよね?」
「あるね?それが?」
レインさんの言葉にリンさんが答えると、リィルさんが頷き、オウカさんとメイさんはあっ!と言う感じになる。
「レシピ通りにそのままに作ったらどうなると思います?」
「「あっ!!」」
そう、ザナに居たニックさんの料理が美味しいのは既存の料理に飽き足らず、地元の料理に対し、工夫していたからだろう。多分、それが普通の事でスキル一覧に載らなかったのだと思う。と言うより、地元の料理に工夫をして提供する。この時点で料理スキルと共に示される事が無いザナ料理と言うジャンルのレベルが高いのだろう。だから、上手いではなく、美味い。
「なるほど、つまり、感涙している者達は・・・」
「レシピ通りは悪い事ではないけど、文字通りのレシピ通りの料理を食べてるんだろうね、ずっと」
『うわあ・・・・・・』
栄養もある、上手いの方だが、味は普通よりは美味い。しかし、個人の好みの味付けや嗜好などが考慮されていない味付けをずっと食べれるだろうか?無理に決まっている。そりゃ、感涙の涙出るわな。例えるならこう、バターロールを何も塗らないまま、何日も朝昼晩食べ続けると言えば分かり易いだろうか?コレを飽きるな!とか、うん、無理だな!
「で、テイクアウト出来るとなると・・・」
「材料、増やします?」
メイさんの言葉に、自分も頷くしかなかった。個数限定とはいえ、1日目でこれだとなあ・・・・・・
「う~ん、荒稼ぎ」
「衛兵さんの分、お渡ししておきましたよ。うわ、凄い硬貨の量ですね」
うん、まあ、アレだよな。感涙の涙流しながらステーキ買ってく強面の男集団って、うん、引く。ちゃんとお金払ってくれるんで商品は渡したけど。まあ、その御蔭でリンさんの言う通りの成果である。しばらくは通販に自販機商品の購入には困らないかな。
「で、こっちは素材?」
「そうそう」
オウカさんが指差したのは主に1階層で獲れるホーンラビット、ダンジョンウルフの毛皮。主にステーキ1枚と毛皮1枚の交換なので購入に個数制限あるとは言え、結構な量になった。次からは肉と交換でも良いかもしれないな。
そして、保管してあったダンジョン外、つまり別の所で獲ったホーンラビットの毛皮を並べる。ふ~む?
「これはまた、意外と差異が出ますね」
リィルさんの言う通り、ホーンラビット同士でもかなりの差異がある。まず、大きさ。ダンジョン外の毛皮は兎の大きさだが、ダンジョン内の毛皮は大型犬ぐらいある。これはやはりレベルが外より高いからだろうか?ダンジョン外は低レベルでも倒せる2だが、このダンジョン内では15程らしい。っていうか、おそらく、他大陸のラビットと比べても恐ろしく高いだろう。
「これ、やっぱり?」
「ですね、これまで放置されていたスタンピードの所為と思われます」
メイさんに確認を取ると同意してくれる。要するにだ、ダンジョン内で選定が起きたと推測される。外に出ようとしたら、溶岩龍のアレで死に、ダンジョンがまたモンスターを生成するが、弱ければ話にならず、ダンジョンが強い個体を少しづつ作っていく。
「人間相手なら、モンスターの個体レベルを上げていくという考えをダンジョンはしなかったかもしれません。ですが・・・」
「そうか!基準がドラゴンだからか!」
メイさんの言葉にリィルさんが言葉を発し、レインさんもハッとした感じで頷いた。そう、基準が人間なら、おそらくダンジョンもモンスターの再ポップに細工など掛けなかっただろう。
「ドラゴンの長期占拠はそれほどにまで、スタンピードを止めていた証明でもありますね、コレ」
本来はレベルが2のラビットが15なのだ。そうなる程にまで、このダンジョンは放置されていた証明でもあり、改めて、かのドラゴンが災害級の上位である事を証明した一端ともなるだろう。ウルフの方も20とこれまた高い。低レベルが潜ったら、ラビットにすらもぐもぐされるんだろうな。が、開拓大陸の練度の所為で、雑魚モンスターのままのようだ。と言うか、聞いた話、後衛でも小剣を横薙ぎにしただけで割いていたって・・・すげえな、人間の可能性・・・
「ただし、その分素材が高品質。むしろ、ステーキ1枚と交換だと申し訳ないレベル」
『 そ れ ね 』
こう、触ると分かるのだが、2枚とも毛皮としてはかなり良しだ。下位素材ではあるが、マントの素材としても最適だろう。普通ならこの2種類の毛皮はマントには全くと言っていいほど向かないが、これならかなり良いマントが出来ると思われる。
ん?待てよ・・・・・・これって?
「リィルさん、ちょっと良いですか?」
「うん?」
とりあえず、考えたモノと一番相性が良いであろうリィルさんに声をかけるのだった。
バニシングドラゴン討伐の思わぬ弊害のお話。溶岩フィールドはある意味街を守ってましたぁ!と言う
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 7
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5