54話 小さな店を開こうぜ!
「あれ?」
あれからそれなり経過した頃、とある事情(意味深)があり、昼間にテントからシェルターで外に出ると防衛戦力は居るが、あれほど居た探索者達がかなりの数が居ない。
「あ、そうか」
寝惚けた頭が覚醒してくると、何故かを思い出す。そうだったなあ。
「ダンジョンが見つかったんだっけか?」
そう、未探索、つまり、あの溶岩龍のフィールドを超えた先にダンジョンが発見されたのである。ある意味、探索者や組合員達も納得していた。襲撃に来るモンスターのレベルが総じて高い理由である。つまりだ・・・
「まさかの溶岩龍の偉業、モンスタースタンピードの食い止め」
シャカシャカと歯を磨きつつ、呟く。つまりだ、弱い奴はあのフィールドで淘汰され、あの溶岩フィールドを超えれる頑強な体且つ強い奴が超えてきたのが港への攻撃モンスターであるという事だ。
あの容赦なく解体されたアースドラゴンなんか、その一例で溶岩とか涼しいだけだろうなあという訳だ。後、空飛ぶタイプなんかも超えれるだろう、ただし、上に強ければが付く。弱ければバニシングドラゴンの餌食という訳だ。
「ある意味抑止であったという事かあ」
で、更に、ダンジョンからそういう系統が出てきたかもしれない。と言う事で、ここでもダンジョンフィーバーが起きたという事だ。お陰で、問題であったスカウトマン問題やクラン勧誘問題は解決したと言ってもいい。
『おはようございます♪』
で、しばらくゆっくりしてると、5人が薄いローブ姿で露天風呂に入っていく。はい、まあ、その、しばらくは爛れた生活を送ってました。仕方ないんや、魅力的過ぎるのが、ね?
「しかし、高レベルダンジョンねえ?」
自販機からスポーツドリンクを買って飲みつつ、考え込む。まず、ぶっちゃけると、特に用は無い。いや、無いに等しいと言うべきか。温泉から上がってきた5人も相談すると同意見ではあるようだ。
「でも、素材は興味あるんですよね?」
「勿論」
上がってきたリンさんがキッチンに入りつつ言ったコレである。武具防具は正直、更新の必要がない。が、素材による強化などは個人的に興味がある。後、リンさんが各魔物の肉。あ~、そういえば、ワイバーンの霜降り肉は美味かったなあ。ただ、ダンジョンアタックする場合は問題点がいくつかある。
「発見されたダンジョンをアタックする場合、まずは誤射の可能性。なお、敵味方問わず」
「内部でかなり起こってそうだよね」
そうなんだよなあ。リンさんの言う通り、何かしらの行動をする際は数日も時間を置いているので分かるのだが、病院代わりの神殿に明らかに罠やモンスターが原因ではない傷を負った開拓者兼冒険者が担ぎ込まれる事案が増えた。いや、多いと言うべきだろう。
まあ、新規ダンジョンに何の制約も付けずに、この島で鍛えられた戦力が突入!したら、そら、モンスターの取り合いに、思わぬところから出てきた人に誤射!は充分にあり得る。勿論、中には悪意、つまりはそう言う事案もあるだろうがね。
「そう言えば、オウカさん。出来ました?」
「バッチリ。ただ、もう少し時間欲しいかな?」
おぉ、そうなるとちょっと変わってくるというか、かなり、変わる。よしよし。
「素材を手に入れる手段、完成です。その為には皆の協力が必要だ」
そう言って、改めて、皆に考えていた計画を話すと、皆同意してくれた。さて、計画実行の時間だ!
「こんなとこかな?」
「ですね」
「じゃあ、コレを外に出すよ」
さて、あれから色々買い足してから数日。ようやく計画が開始まで行えるようになったのである。場所はダンジョンの入口付近。勿論、組合やギルドを周り、行う事への許可は取ってある。
まあ、隠すほどじゃないから簡単だ。計画とはリンさんの料理の販売である。ただし、バフ付かない、本当に普通の料理である。実は食堂とリンさんのスキルの組み合わせでバフが無い普通の料理を作る事が出来たのである。更に、リンさんの指導の下で調理家電を使えば、自分達も同じクオリティの料理が出来る。ただし、簡単な料理に限るけどね。もしかしてレベルだったが、まさかの副産物であった。ナイス、食堂を取った過去の自分!
「あ、リィルさん、もう少し前・・・・・・オッケー叩きますね」
外では唐突に看板が現れ、実際はこちらからはハンマーで打っているのだが・・・外から見ると見えない何かで打ち込まれたことにびっくりしている。街での材料で作ってたのはこの看板とメニュー。それとオウカさんの新たなスキルで作った木工細工の皿とコップである。要するに、計画とはそういう事である。
「しかし、考えましたね、旦那様」
「まあ、まずは知名度上げなきゃだけどね」
レインさんの言う考えとは簡単に言えば、現金支払いのほかに、素材と交換支払いも設けたのだ。勿論、交換素材は低階層に限るけどね、深階層の素材なんてどれぐらい料理出せばいいか分からんし。ちなみに、ダンジョンでは中でも外でも一定の需要があるのが料理スキルだ。その為、料理スキル持ちは例えレベル1でも重用される。勿論だが、唯一の街とも言える港でもクランの他に料理店などのスカウトが激しい。まして、野外では、美味しい料理は本当に士気に関わる。まあ、まだ知名度が無いので、そこはこれからになるだろうけどね。
ちなみに、テイクアウトレストランともいうべき、こちらの店だが営業は昼から夕方。要は昼食時間と夕食時間に限定。メニューはパンとステーキ、それと日替わりにスープである。まあ、ぶっちゃけた話、調理の手軽さを考えると、この辺が一番で、価格も常識的な範囲で落ち着くという事でこうなったのである。宅配も考えたが、そこまでする義理は無いで一致した。まあ、当たり前だよね。
「パン、スープが銅貨2枚、ステーキが銅貨5枚。普通にお安いですね」
レインさんの言う通り、港のレストランに比べると圧倒的に安い。まあ、港は所謂、観光地価格と言うのもあるのだろう。ある意味、料理スキルが開拓者間で重要視される遠因の一つなのかもしれない。
「パンはしっかり粉をふるって、スープはしっかり味付けを、ステーキは柔らかくなるようにしっかり加工してあるから、手を抜いてる訳じゃないから、評判はすぐ出ると思うけどね」
「販売数と購入個数も限定なのですね」
「流石にリィルさんや皆のサポートあっても、いくつものクランやパーティを捌ききるのは無理だし、どんどん作れなんて無理ですしね。買い占めなんかもっと困りますしね。ついでに趣味の時間は必要でしょうから、休みの日も設定しましたしね」
リンさんの言う通り、最大限、様々な面で注意はしているが、それでも馬鹿は出るだろう。その辺の準備も万端ではある。まず、店の場所が組合から派遣された門番の近く。問題起こせば厄介な場所である。ついでに言うと、看板には組合及び各ギルドへの許可も取ってあるという旨を書いてある。勿論、証明書は全てスマホ及び、パソコンにもコピー済みである。
更に、メニューとシェルター本体置き用の机以外は用意せず、前述の通り、持ち帰り専門と言う形にしている。その場で食べるもよし、ダンジョン内に持ち込むもよしである。多分、前者が圧倒的多いだろうけどね。そらまあ、良い匂いする肉にパンを持ち込んで敵に知らせてどうすんの?って話である。
「それなら、私が作るのはタッパー的な物の方が良かったんじゃない?」
「それも考えたんだけど、良く考えたら、この大陸の人達、基本シェルター能力あるって事はアイテムボックス能力も基本常備じゃない?」
『あ・・・』
この計画の為に木工スキルを上げていたオウカさんの言葉にそう返すと、皆、そうだったという顔をする。まあ、普通に、他大陸基準で考えてしまうからだろう。が、ここは開拓大陸、まだ来て1年も経過していないから分かり辛いが、全体的に生活に困らないように準備して来ている開拓兼冒険者の集まりであるからね。
全体的にレベルが高い。だからこそ、理解も早い。が、その分、悪知恵も回る可能性もある。本当に難儀な大陸である。
「念の為、かなりのお皿とコップ作ってきたけど、足りなくなったら一度港に戻るかね」
「森がありますけど、流石に無断伐採は・・・ですね」
自分の言葉に対するレインさんの言う事はもっともである。山を取れば戻らなくてもいいとは思うが、次のレベルアップまで遠いしね。農場には一応、木はあるけど、アレは果物の木で器には適していないのだそう。まあ、切って果物取れなくなるのは困るから却下だけどね。
ぶっちゃけ、前世界にあったプラスチックの器などがあれば良いが、流石に世界観には合わない。ついでに言うと、コレこの世界だとどの分類のゴミで、処理できるか?になる。ゴミ処理場って偉大だったんだなってなる瞬間である、ホントに。働いてた人にお疲れさま!と言いたい。
「しみじみと、俺達が元居た地球って、色々な意味で規格外だったんやなってなるね」
「「「そうですね」」」
女性陣の地球組が頷く。伐採業者が居て、清掃業者が居て、山には猟師が居て、海には漁師が居る。大量生産には各工場があって、開拓には重機がある。ついでに言うと、庶民には買い物に便利なショッピングモール、デパート、ホームセンターがある。あれ?下手しなくてもこういう面は全部ファンタジー世界敗北してね???
「では、営業開始といこうか」
『はい!』
ともかく、ダンジョン前の小さなテイクアウト店、営業開始だ!
書いといてなんですけど、本当に日常生活の必需品の面ではファンタジー世界に勝ってますよね、地球。なんだかんだで生活水準レベルすっげえ高いんですよね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 7
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5