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46話 海底ダンジョン探索

今回はいつもよりちょっとだけ長いです

「なるほど、これは()()()()()。そりゃ、攻略チーム居ないわ、コレ・・・」


とりあえず、冒険者ギルドから船を出して貰い、現地に到着。1ヶ月後にまたここに来てもらうのを約束した後で小人形態でまずダンジョンの入口付近を探索してみた感想がコレである。

何がヤバいとかそう言う問題ではない。なるほど、こりゃ、1階層も攻略が進まない訳である。


「当たり前だが、まず塩水だから普通の鉄の武器はNG。魔法が付与されてて当たり前の武器と防具が要る」


「ですね。ついでに海流があるから弓は完全に死んでますね」


リィルさんの得意武器であり、割とこのシェルターの主戦力とも言える武器がまず殺された。海流が流れている為、バリスタの勢いですら海流に翻弄される。その為、まず、100%命中しない。

確実に命中させるなら超至近距離、ぶっちゃけて言えば、息がかかるぐらいの距離で放つである。そんな弓使いが居る訳が無いわ。


「武器が手から離れるだけで飛びそうですよね、コレ」


レインさんの言う通り、入り口が解放されているせいか、海流は人が踏ん張れない勢いとまではいかないが、結構流れている。この為、ダンジョンの中で軽快に振る為の軽量化魔法をかけた武器が弾かれたりして手から離れると、放置すればそのままダンジョンの奥まで流されそうである。

かろうじて,重い大盾なら追いつける感じだろうか?かと言って、軽量化魔法かけずでは、水の中で軽快に動くのは難しいだろう。しかも、追いかけてる内にモンスターと遭遇したら、武器、あるいは盾無しで戦わねばならない。


()()()()()()()()というのも厄介ですね」


多分、このダンジョンの探索難度を上げてるのがコレ、海流である。先述の通り、弓がまず役に立たない。かと言って、水棲系モンスターに近接戦を挑むのは無謀である。ここで前衛はタンカーと言うか、盾役以外はほぼ役割を無くす。

更に、海流に乗るのが上手い水棲系モンスターがタンカーだけを狙うとは思えない。その気になれば、後衛を攻撃する事も可能だろう。ゲームや小説とは違うのだ。しかも・・・


「水棲系に有効な雷系魔法に炎系、下手すれば氷系、水系、土系も封じられますね、コレ」


魔法専門のメイさんの言う通り、まさに、攻撃専門の魔法使い殺しである。地上ならば逆の事を冒険者側が食らうのである。雷系は敵は勿論、味方が感電しかねないし、炎系は言わずもがな。氷系は凍傷・暴発の危険あるし、水系は天然の海流に阻まれるし、土系は相反属性の水流が邪魔をする。

ぶっちゃけた話、この時点でゲームで言う所、ソーサラーの役目は支援魔法と水中呼吸の魔法のみになってしまっているのだ。うわあ・・・


「しかも、()()()()()()()()()()()よね、コレ」


そして、とどめのオウカさんのお言葉。水の中で火は焚けんし、火が無ければ料理も作れない、モンスター避けも出来ない。しかも、寝袋もテントも使えないので、役に立たない。

干し物系とかぐらいしか栄養が取れないし、水もサッと飲まなければ、海水が入ってくると言う。うわ、長期探索に向いてねえ。


「コレ、2階層以降があっても、1階で撤退推奨なのでは?」


追撃のリンさんのお言葉。多分、ポータル的な物があるかもしれないが、一度潜ったらもういいやってなるよな、コレ。むしろ、自分の様なシェルター持ちでもない限りは赤字にしかならない。

いや、断言してしまおう。先述の全ての要素に加え、補給も難しい事から、モンスターを間引く報酬と素材買取の料金が高くなければ、完ッ全ッに赤字である。むしろ、間引いてくれるクランがあるだけでも温情まである。


「エリカさんと言うか、ギルドマスター自らが土下座する勢いの上にメッチャ良い条件の報酬提示するわけだよ・・完全に探索者殺しだ、ここ」


何が酷いって、地上での冒険の常識が完全に通用しないのだ。しかも、武器は槍、しかも錆防止の魔法がかかってないと武器の寿命が減る上に、槍自体も敵に対して、多少有効でしかない程度のほぼ縛りプレイ。その上で、魔法も身体強化が精々と言うダンジョン。地図に至ってはお察し。う~ん、クソゲーすぎる。

しかも、()()()()()()()()()()()。下手すれば魚人系等の知能を持つ敵は自爆覚悟で魔法も使ってくる。酷すぎる・・・なんや、このクソゲーダンジョンェ・・・


「更に、ダンジョン内で拾った宝箱は地上で開ける事が絶対条件と来た」


かなり昔に宝箱だ!と開けて毒系罠が水に溶けだし、敵・パーティ諸共全滅の上に、溶けだした毒の所為でダンジョンがしばらくは入れないようになったのが、このダンジョンでの宝箱は地上で開ける事の決まりの始まりらしい。あ~と思わず納得してしまった事である。


「こうなると、モンスターは遭遇したら相手にして、宝箱は無視、マップのみ作る感じかねえ?」


「ですね。正直、マップに集中しないと、どの程度出来るか分かりませんし」


レインさんの言葉に自分も含めて頷く。今日は車形態で、扉付近で休み取り、明日から探索開始するとしよう。




「うん、なるほど。コレは意外だ」


「ですね。しかし、これで安全はとりあえず確保出来そうですね」


探索中、魚系モンスターと運悪く出会ってしまい、とある魔法で撃退したのがきっかけで、マップ作成依頼は結構進んでいる。


「まあ、なんていうか、()()()()()()()ね」


「気づいてる人も居るんでしょうけど、凄く割に合いませんからね」


とりあえず、探索は操縦室で自分が操縦、レインさんがマッピングしつつ、庭でメイさんがそのとある魔法を使い、オウカさんとリィルさんがとどめを刺すというローテーションが出来上がっている。リンさんは食事係である、重要。


「当たらないなら、拘束魔法か麻痺系の魔法で動き止めれば良いじゃんっていう。ホントに単純かつ簡単すぎる論理」


「あはははは・・・」


「麻痺系魔法に至っては魚系モンスター、まさかの心臓麻痺」


「嫌な事件でしたね・・・」


多分だが、体が小さい分、麻痺かかった時にかかる負担が半端ではなく心臓が止まった。と思われる。メイさん、目を丸くしてたもんなあ。しかも、麻痺系魔法は所謂グループ範囲攻撃にも出来る。という訳で、無双状態という訳だ。

ただ、問題が無い事も無い。と言うか、初めて麻痺で倒した時、その問題に直面したのだが。


「まさかの()()()()()()()()()()()()()光景。天然の水流、恐るべし」


「皆、同時に、は?ってなりましたもんね。最初は復活した?と思いましたし」


こう、海中ダイビングを経験した人とかならば、分かると思うが、海流で死体が剝ぎ取りする前に奥の方に流されてしまったのである。そうなるのは分かるが、そうはならんやろと言うのが最初に見た時の感情である。更に飛んでった死体は他のモンスターに食べられるか、壁に叩きつけられミンチとかになる。酷い。

しかも、海流が早い時と遅い時は完全にランダムなので、麻痺か拘束が通った瞬間槍で刺し、内部に入れるという形にしている。これなら、素材の鱗は多少傷がついてしまうが、素材を無駄にせずに済む。ギルドには悪いけど、素材に傷つけないと言うのは無理である、うん。


「この海流の中で、解体ナイフ使うのも罠だよね。アレ見てなかったら」


「ですねえ」


解体結果の素材よりは重いであろう死体がカッ飛んで行くのだ。素材になった瞬間、各素材もカッ飛んで行くに決まってる。うん、このダンジョン、心の底から意地が悪すぎるわ。


「ただ、まあ、あのリンさんの輝く笑顔」


「刺身でしたか、大変美味しかったですね」


そう、魚系は出会い次第、狩ってるのもこういう訳である。解体ナイフの仕様か、この世界の常識かは分からないが、()()()()()()()()()()()()()()()のだ。モンスターだから居ないのだろうか?まあ、とにかく、刺身で食べれるのだ。

いや、寄生系モンスターとか居れば分からんが、安全は確認出来ている。と言うか、シェルターが弾かないからその辺りは確定している。身質も様々で、マグロやアジ、サンマ的なのが様々ある。


「回収しますね~」


その御蔭で料理担当のリンさんはニッコニコである。勿論、日本人である自分とオウカさんとメイさんもありがたやと拝むほかない。レインさんとリィルさんも最初は躊躇していたが、今やどっぷりハマっている。

マグロの大トロ、中トロ、赤身らしき部分を作った3色丼は絶品であった。ほうじ茶で舌を新たにして、また違う部位を楽しむ時間は素晴らしかった。うむ、思い出すとまた頼みたくなる。いや、頼もう。


「しかし、コレって・・・もしかしてだけど、うん。レインさん、通信の宝珠でギルマスのエリカさんに連絡を」


「あら、何か思いつきました?」


「ええ、上手くいけば、この都市に冒険者に商人、ついでに飲食店を増やす事も可能かなって」


そう言って、一旦シェルターを車形態にした後、近くの瓦礫の近くに隠し、レインさんと共に通信用の部屋である応接間に行くのだった。


『お話があるとの事でしたが?』


「ええ。マップは順調。ただ、すでに期間は10日使ってるので。という話は置いておきまして・・・」


まあ、自分の予想が正しければ、返答される言葉も予想付くのだがね。


「確か、()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()って言っておられましたよね?」


『ええ、それが?』


「もしかしてですが、鱗と魔石、牙とかしか提出してないんじゃないですかね?」


『え?なんで分かるんですか?』


なるほど、こりゃ、間引きに来てる奴も()()()()()()()()()って事かあ。先述の通り、このダンジョンは美味しくはない。なら、間引き要員達も儲けが出ないなら既に見放しているはずである。

では、何故、間引き要員は一定数居るのか?単純だ、()()()()()である。そう、その儲けとは・・・


「そりゃ、間引き要員がそれ等以外を売って、儲けているからでしょう」


『え?!』


そう、ギルドが重視するのは鱗や牙。そして、魔石である。まあ、そういう事だ。そして、少し前に感じた違和感がまさにコレだ。こんなに底意地悪いダンジョンの間引きを何故、間引き要員が嫌がらないのか?である。

それが()()()()()()()()()()()()。高級レストランや転生者クランなど引く手数多だろう。しかも、ギルドは特に肉には注目してないので量を持っていけるので儲かると言う訳だ。


『ああ、そういう事かあ・・・』


まあ、気づこうにも、ダンジョンに関してだから、モンスターの牙や魔石がギルドにとっては優先。素材の肉はあまり冒険者ギルドでは有用ではない。そら、その視点だと見逃しもするよと言う話である。あくまで外から見た視点でないと、気づきようはずもない。

ついでに言うと、気づいたとしても、報酬とダンジョンの危険度を考えると、反論出来ずに結局現状のようになっていただろう。いや、ギルドに不信感が持たれない分、現状が良いまである。


「と言う事でして」


『おぉ、もう・・・』


魚肉に関してやその有用性、どうして冒険者達は不満を言わないかを発言していくと、エリカさんがどんどん沈んでいく。まあ、仕方ないよなあ。


「けど、逆に言えば、これで人呼べますよ?」


『はい?』


生で食える魚の肉と言うのは貴重だ。モンスターである事を気にしない転生者なら必ず買う。その転生者から評判が広まれば、まずは市民、そこから貴族、王族にまで広まるだろう。

今、それほど広まっていないのは間引き要員が秘密のルート、つまり、一定のルートしか流していないからである。まあ、ギルドの目があるからだろう。となると?


「あえて、間引き要員達には大々的な販売の許可を。更に一定ランク以上には情報の開示と間引き要員と同様の許可を出す事を推奨します」


『なるほど』


この段階までくると、エリカさんも気づく。販売ルートを冒険者ギルドに今更すると、そっぽを向かれかねない。それならば、大々的に許可を出した方が、ギルドに利益が来る。つまり、探索する冒険者が増える方が有用だろう。

更に言えば、転生者に人気の商品ともなれば、もしかすると、自分が別大陸に行った後も引き続きどこかが調査してくれるかもしれない。何せ、まだ1階層で様々な身質の魚が居るのだ。未知の魚だって深部に居るかもしれない。


「販売ルートに関しては海運ギルドに料理ギルドが良いかと。料理ギルドはもう持ち込まれてるかもですが、ギルドからの販売許可があれば大々的に販売を開始するでしょう」


『海運ギルドにも許可を出すのは?』


「いやね、想像してみましょう。コレ、1階層で獲れる魚肉ですよ?近さを考えると、日帰りも可能です」


『あっ……』


はい、そういう事だ。要するに、今まで難解且つ意地悪ダンジョンが、今、エリカさんの目に金成るダンジョンになった瞬間である。

簡単に言えば、日帰りで美味しい魚を収穫出来る巨大な生簀である。しかも、扉付近でも襲い掛かってくる事あるから、その新鮮さは間違いなく良い。他国への輸出に海運ギルドを噛ませれば更に話題になるだろう。と言うか、海運ギルドに漁師の知識は必須である。


『す、すみません。すぐに幹部会に』


「あ、はい。行ってらっしゃいませ」


慌てて部屋から出ていくエリカさんを見つつ、通信を終了する。なんだろう、目覚めさせてはいけない怪物を目覚めさせてしまった気分だ。いや、この町には多数のギルドあるし、抑止力はある・・・・・・と思いたい。


「・・・・・・念の為、ライさんにも同じ話持っていこうか?」


「それが良いと思います」


思わず、レインさんと顔を見合わせて、苦笑するのだった。だ、大丈夫だよね?

まあ、こうなるよねと言うお話。海底で火が付くわけ無いし、素材は海流流れてれば吹っ飛ぶし、遺体は抵抗しないからカッ飛んで行くっていう酷いダンジョンです。それでも、潜る人には何かしらのメリットないと潜らないよねと言うお話です。


現ステータス


NAME


シロウ・カミヤ



SKILL


安全シェルター LV 6


健康的な体 LV MAX


投石 LV 1


鑑定 LV MAX


鍛冶 LV 5


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