43話 貿易都市到着とトラブル(いつもの)
「へえ、こりゃ凄い」
貿易都市に着き、いつも通りに自分だけが外に出て、手続きをした後でまたシェルターに入り、小人形態で街を歩きながら発した言葉である。
ついでに言うと、地方都市以来のトラブル無しの入場に感動してもいるのもある、うん。まあ、前の都市が特殊だったんだ、きっと。
「こちらに来たのは大分前ですが、また増えましたね」
レインさんは何度か来ているようで、どこが変わったとかを教えてくれる。日本で言う所、移り変わりが激しいアーケード街の感じがするな。
ギルドも結構多い。変わった所だと海運ギルドと言うのもある。こっちで探しても良かったかもしれないなあ。ただ、出入りしてるのが荒くれっぽいので、やはり探して正解だったとも言えるかもしれない。
「ライさんによると、結構な回数の船出してるらしいから、出航はいつでも良いと聞いてるし、まずは街を歩いてみようか」
『賛成!』
「はい?船が出せない?」
『ええ』
まずは配送ギルドに寄り、いつも通り、ギルドマスターに手紙を渡しに来たのだが、ここで意外な情報を得る事になってしまった。こちらのマスターである男性ハーフエルフのリーフさん曰く、数日前から、謎の津波と言うか、とにかく酷い荒れで外海に行けなくなっているらしい。
『正確に言えば、沖までは出せるんですが、正規の航路ルートが信じられない程荒れてまして、戻らざるを得ないっていう事です。かと言って、非正規ルートでは魔物や遭難の恐れもあります』
「海の魔物が暴れたとかの可能性は?」
『いくつかのギルドの船が沖まで確認しましたが、そのような影も跡も見えなかったそうです』
「魔法反応はいかがでしたか?」
レインさんが聞く。勿論、その可能性もあるのだが、リーフさんは首を横に振る。
『その可能性も考え、魔法関連のギルド、エルフが船で確認しましたが大規模魔法の痕跡は無かったそうです』
となれば、考えられるのはアレしかないが、こればかりは確認しようがない。同じく気づいたであろう、リンさんとオウカさんも難しい顔だ。多分、間違いなくアレだとは思う。しかし、そうなるといつ収まるか分からない。何故か?
(こっちにはアレを知る術が無いもんなあ・・・)
う~ん、まあ、都合良くそんな能力持ってる転生者に会える訳無いよなあ、どうしよう?一応、探してみるけど、まさか、自分が考えた方法で探しても仕方ない気がするが、念の為だ。
「おったわ・・・・・・」
「あ、あはははは」
まず、自分が考えた、ある意味では馬鹿げた情報を集めていくと、まさかとは思ったが、そういう事が出来るであろう人を発見した。正確に言えば、騒乱罪で捕まった人を発見し、今、リーフさんが連れて来てくれる所だった。
こんな条件・・・後程説明する条件で簡単に探せるとは思わなかったから、リンさんも苦笑気味だ。レインさんは件の人物の保護手続きをしてくれているので、今回はリンさんを連れている。リィルさんは弓の弦の張り直し、オウカさんは向いてないと辞退したからである。
『お待たせしました』
「ありがとうございます。お二人招待しますので、少しお待ちを」
連れて来てくれたのは女性。眼鏡をかけて、結構大きい方だろう、どこがとは言わないが。そして、こちらには居ないタイプのこう、魔導士系のようなローブを着ていた。
入室は勿論だが応接間。2人はしばし驚いていたが、リーフさんは仕事として、もう一人の女性は転生者の為、落ち着きを取り戻す。流石だわ。
「初めまして、間宮 萌衣と申します。メイと呼んでください」
「初めまして、カミヤと申します。単刀直入お聞きします。貴女は能力として、天気を見る事が出来ますね?」
そう、彼女の騒乱罪とは、異変が起きる前辺りから、船は危険だ!と喧伝したのが原因らしい。まあ、名前的に日本人らしいと言えばらしい。
罪としてはそれほどではなく犯罪歴に付ける程ではない。だが、1週間程度の拘留が言い渡されていたようだ。実際、犯罪歴が付かないのは危険であったからこそとも言える。貿易都市以外だとどうなったか分からないけどね。
「そうです。と言うか、皆さんは取ってなかったんですね」
うん、ぶっちゃけ、天気に関してはシェルターあったし、オウカさんは工房が、リンさんは働き口ならいくらでもあっただろうからね。まさか、コレがピンポイントで必要になるとは思わなかったのだ。
更にぶっちゃけてしまうと、船乗りが夢でもない限りは取る人居ないんじゃないかな?いや、船乗りが夢でもこの世界の船を考えると微妙?必要かと言われると必要かもしれないが、絶対に?と言われると微妙なスキルだろう、うん。そこら辺を交えて説明したら、撃沈した。
「うぅ、良いんです。魔法の研究にも使えますしぃ・・・」
「まあ、魔法の研究にしても必要か問われれば・・・・・・微妙だね」
「かふっ!」
リーフさんの悪意無きこの追撃である。まあ、天気が分かるからって何が出来るかって言われるとねえ?うん、とどめである。自然魔法ってのがあれば別ではあるが、確か無かった筈である。
ついでに言うと、この世界の船は帆船であり、風が無風でも魔法があるのでその辺は何とかなってしまうのも大きいだろう。
「で、この天候の荒れの原因ですが・・・」
「はい、魔法では無い、魔物でも無い。そして、私達の世界で最も厄介な天候・・・・・・台風から変化の温帯低気圧の停滞と思われます」
要は、日本で良くある台風が変化した名残のアレが留まっているのであろう。そら、台風が来てたのも分からないし、それが変化して、停滞してるなんて知れと言うのが無理であろう。
先程、船乗りなら持ってるかもとは言ったが、現代船では無いファンタジー世界の帆船のみだからなあ、多分、この世界でこの能力を持ってるの・・・彼女だけじゃないかな?
「え~、メイさん、提案なんですけど・・・」
その日、新たな同居人を言迎える事になりましたとさ。リーフさんもその方が良いって言ってたしね。
さて、貿易都市に着きましたが早速のトラブル!温帯低気圧だけだから待つだけ・・・・・・にはなりませんよ
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 6
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5