42話 異世界の山のお約束 後編
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『助かったぞぉおお!』
さて、あれから3日。ここは貿易都市側の山の麓である。後は貿易都市の方向を目指せば完全に降りれるところまで来たので、ひとまず、女子供も外に送り出し、ホッとしている。
外では奥さんや子供が隊商列に駆け寄り、護衛達も感動のハイタッチなどを行っている。
「ふぅ」
「お疲れ様です。旦那様。皆さんも」
さて、作戦は単純である。山頂で休まない事。これだけである。火口部に居るドラゴンは卵を盗まれない為に警戒している。よって動けない。
そして、ドラゴンが一番警戒するべきは卵を狙うであろう不届き者である。ワイバーンは確かに多かったが30匹と言う数、要は足止めや脅し的な意味があったのだろう。
「流石に山頂で休憩せず、結界石無いとこで夜営したのはほぼ賭けだったけどね」
流石に山頂で休まずに駆け抜けるとはいえ、数日かかる道を休みなく完徹と言う訳にはいかない。どこかしらで休まなければならない。
だが、一番大きい休憩スペースである山頂以外では団体が休めそうな結界石がある所はなかなか無い。もうここからは賭けだったのだが・・・
「ドラゴンに感謝ってとこですかね」
自分の言葉に女性陣がうんうんと頷く。要は、団体で休むのは難しいので、交代制で山頂はサッと降りて、結界石が無い道中で警戒しながらの夜営となったのである。ドラゴンが居る為か、魔物達も恐れて出てこないのが幸いした。
それでも、魔物が出るかもしれない道を夜営しながらは色々と消耗する。後、道が数日長かったら、護衛されている側、すなわち、商人が参ってただろう。
「ドラゴンが伝説級且つ、頭良くて良かった」
狙いは卵じゃなく貿易都市を目指す事ですよアピール作戦とも言えたのが成功したのはこちらの意図を読み取ってくれたからだろう。流石に伝説級で知能が低いとは考え難かったが、産卵中だ。判断力の低下も十分あり得た。まさに、全てが賭けだったと言う訳である。
「後は貿易都市目指すのみかね」
『お、もう行くのかい?』
ルーンさんが、こちらが小人形態で行こうとするのを見て話しかけてくる。
「ええ、皆さんは確かこの麓の結界石でしばらく休まれるんでしたっけ?」
『流石に人数の都合でそちらに入れなかった男性勢が緊迫感で寝れなかったのもあるからな。ここで1~2日休息してから向かうつもりだ』
ああ、まあ、そりゃそうだ。表面上、体力上問題が無くても、精神面ではかなり摩耗してるだろうしね。
『行くならこれを受け取ってくれ』
ジャリッと音がする袋が置かれ、それを窓から受け取る。うぉ、金貨が沢山詰まっとる?!
『商人チームからの謝礼だ。遠慮なく受け取ってくれだそうだ。子供や奥さんに無理させなかったお礼でもあるらしいからな』
まあ、そういう事なら受け取っておきますか。
「では、また縁があれば」
『おう!』
こうして、自分達は貿易都市を目指して、旅を続けるのだった。
『ワォオオオオオオオン!!!』
「そう思ってた時期がありましてね?」
苦笑する女性陣、そして、茂みから出てきたでっかい狼を嫌そうな目で見る自分。そうでした、この世界、魔物出るんでしたね、チクショウ・・・・・・
「フォレストウルフの上位種、見た感じは雄ですから、キングフォレストウルフですね。このシェルターの小人形態が餌に見えましたか」
「確か、上位種の為、フォレストウルフを何匹も呼んで嬲るように攻撃してくる上に不利を悟ると逃げるんでしたっけ?」
「ですね。配送ギルドでも実に厄介であるとして、発見次第、腕に覚えある者が討伐に行くほどです。ついでに言うと冒険者ギルドでも依頼が出ると冒険者がすっごく嫌そうな顔をします」
レインさんが言った言葉にリンさんが質問しリィルさんが補足する。要するに、今吠えたのは増援を呼んだ咆哮で、相手は嬲り殺して食おうとしてるって事ね。なんでじゃ。
「まあ、勝てますね、コレ」
と、レインさんが準備したものを見る。うん、まさか、相手もこんなので攻撃されるとは思わんだろうな。余裕ぶって前に出て来てるのが運の尽きだ。瞬間、ビュォッと言う音と共にソレは発射される。
『ッ?!?!?!?』
バリスタである。矢は避ける事も許さずにキングの頭を貫通し、更に後ろに居たフォレストウルフも複数貫き、木に当たってようやく止まった。
「「「「「あっ」」」」」
別に仕留めそこなったとかでは無いが、こりゃ、別の意味でヤバい事を見てしまったのだ。狼系の素材は牙が主に高く売れるのだが、頭部は攻城戦で使うバリスタの威力だ。うん、消失ってレベルじゃねーぞっていう事です、はい。
キングがめっちゃ酷いやられ方を見たので、他のウルフは逃亡。木に刺さった矢を回収した後、キングに解体ナイフを使ってみたが、牙と魔石が取れなかった。
「アチャー・・・・・・えと、バリスタは遠い所か空中に居る敵限定で」
『賛成』
こうして、また一つ、ルールが出来るのだった。うん、まあ、毛皮も括弧付きで損傷って出たからね。これを人間相手に使うのは勘弁してほしい。マジで。
ドラゴンも伝説級ならアホじゃありません。こっちに来ないなら手は出されませんし、彼の威圧でモンスターも迂闊に動けないでしょうからね。火口には近づかずにサッと山頂から降りてそういう意思はありませんよと提示するしかないですしね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 6
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5