40話 移動革命と道中
「ああ、なるほど、これは必要そうですね」
「必要無いのが一番なんですけどね」
あれから2日、完成した物をレインさんが感心したように見て、他の皆も頷く。その必要な物とはこれ。
鉄の設置型巻き上げウィンチ:地に設置して使う射出タイプの巻き上げ型のウィンチ。縄の先に鉤爪が付いている。オリジナルレシピ。等級:C
本当は鉤縄でも良かったのだが、そうなると、どこに紐を括るんだ?って話になるので固定設置出来るタイプのウィンチも通販技能で買った様々な資料を見て作った。ビバ、鍛冶スキル。
小人タイプで山なども登れるようになったが、小人状態であるし、違う大陸でも整地した道があるとは限らないし、危険が無いとも限らない。なので、リトルグランにゆっくり向かいつつ、作り上げたという訳である。
「備えは大事ですしね。じゃあ、テストしますね」
適当に作った鉄の板を庭に立てて設置し、ウィンチも離れた所に設置する。そして、しっかり狙いを付けてスイッチオンすると、鉤縄が付いたロープが鉄の板に向かい、しっかり絡まる。
『おぉ~』
目論見は成功。まあ、ぶっちゃけ飛ぶ機能はいらないのだが、まあ、そこは浪漫って事で。リトルグランに向かう最中、山を超える必要があるので車形態用になるだろう。後、学術都市みたいに追いかけられた時に逃げる用に、うん。
小人形態なら、山道は苦労しないだろうけど、車形態の方が移動は早いからなあ。
「後は鉄球で攻撃も出来るようになるのね」
そう、ついでに鉤縄部分を鉄球にも出来るようにして、攻撃手段にもなるようにしてみた。とは言え・・・
「ええ。ですが、レシピは封印。個人的に使う感じですかね」
『デスヨネー』
まあ、仕方ない、仕方ない。使い様によっては、攻城戦とかに使えてしまう代物だからね。一足飛びの技術は流行させるべきじゃないよな。
『お~』
でかい山である。リトルグランが貿易都市であり、要塞都市であるのはこの山の由来が多いらしい。名を鉄甲山。名前の通り、鉱山地帯とかそういう訳ではない。
由来がなんと、トンネルが掘れない程固い地盤だからである。と言うのも、この山が貿易都市に向かう一つの難所となっている。勿論、回り込むことも出来るが大幅な時間ロスになってしまう。
勿論の事だが、王様や各都市領主もトンネルを作ろうとしたのは言うまで無いのだが・・・
「稀少鉱石の鉱脈や鉱石が大量に見つかった上にそれを無視して掘れば地盤が緩くなるかあ」
「少しづつ採掘に補強はしてるのですが・・・」
うん、レインさんが口籠るのも分かる。でかいというか、でかすぎる。まず貿易都市にとっては天然の城壁と言っても良いほどでかい。
更にトンネル開通の安全性を考えるなら、採掘と補強が完全に終わるまでは遠回りか、山の道を整備しての登るかしかないだろう。それも何十年、いや、下手すれば何百年かかるか分からない。
「まあ、それ故に、山の道より、遠回りする方が安全とすら言われていますね」
「が、安全と引き換えに時間がかかる故に魔法道具は必須と」
「ですね。正直、この山を登るならキャラバンがそれこそ3隊以上は要るでしょう」
リィルさんの言う通り、このでかい山を人間、馬車の足で登り降りするなら、最低でも4日以上はかかるだろう。その間の安全や野営も考えると、最低でもキャラバンが3隊はあるのが条件になるだろう。
ついでに、自分が言ったように商品の安全も考えなければならない。そうなると、例え、道がどれだけ整備されていても、自然と、大半は遠回りルートを使う事になる。
「事実、山への道は本当にキャラバンが集団で通っている」
自分達が現在居るのは、遠回りか、登山かの分かれ道である。個人商店であろう商人や小さなキャラバンは遠回りを、でかいキャラバンはここで装備を整えて、登山ルートを。
たまに、冒険者チームであろう者達が登山ルートに行っているが、これは最短ルートで慣れているからか、狩り場として見ているからと思われる。護衛してる訳でもないから動けるって訳か。
「ま、自分達は登山で問題ないか」
『ですね』
モードを車から小人に変えて、もう慣れた周りの驚きの視線から逃れるように登山ルートを選ぶ。意外と動きは軽快なので、踏まれる事も無く山道を進む。
そして、茂みに突っ込む。狙いは山を登りつつ、山の幸を探す事である。食の確保は大事。
「色々あれば良いなあ。出来れば、この世界の果実系のゲットだな」
まあ、今まで安全だったし、早々にトラブルなんかある訳無いな!と、この時まで思ってました・・・
カミヤ君、それはフラグぞ!と言いつつ、次回に続きます。山と言えば、やはりお約束は アレ ですよねえ。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 6
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5




