39話 手に入れたコネ
「ふむ」
あれから数日、自分はシェルター内の操縦室、本体は図書館に来ていた。ん?あの自称一般人はどうしたのか?って?そこは簡単だ。
「問題無しじゃなかったら詰んでたね」
まず、小人タイプの状態は性別、大きさを設定できる。つまり・・・
「流石にコレを追い回したら衛兵が介入する手段になるからなあ、複雑だけど」
猫耳フード付き幼女にした。しかも、サイズは手乗りサイズ。これを追い回したら、ロリコンどころではない。女性とて同じだ。絵面が完全に犯罪者のソレである。
それでも、涎出しながら目を血走らせて追い回してきた奴は居たが、悉く逮捕である。まあ、当たり前だよな。唾とか汗まき散らした老人や男や女が手乗りサイズの幼女を追い回してたら、そりゃ兵士達も追って逮捕する、誰だってそうする。自分だってそうする。
「それでも、数日追って来たのって執念っていうべきなんだろうな」
「まあ、とりあえず、何とかなって良かったではありませんか」
一緒に操縦席に居たレインさんが苦笑する。他のメンバーはリンさんが料理の研究、ようやく市場に行けそうなのでオウカさんは陶器像づくり、リィルさんはそれぞれの補助をしている。
「そうだね。とりあえず、色々スキルについて記録出来たし、ここも用は無くなってきたから・・・」
「コネ作りですね」
シェルター内なら、スマホがあるので、それで素早く写真を撮り、次々と資料を紙に書いていくだけだが、スキル・刀に関しては量が量なので少し時間がかかってしまった。まあ、仕方ないね。まあ、手乗りサイズの幼女が自分よりでかいサイズの本を次々捲っていくのは注目されまくったのだが。
地図・歴史関連は後でスマホで撮っておくだけとして、本題の他大陸に行く為のコネ作り。ここからが本番なのだが・・・
「どう作りましょう?」
「ホントどうしましょうねえ・・・」
学者勢とのコネは出来れば、遠慮したい。絶対、等価交換レベルを超える無茶を言われるのは目に見えている。と言うか、何を要求されるか分かったもんでは無いのがここ数日で証明されている。
「となると・・・やっぱ、事前の相談の通り、かなあ?」
「ですね」
事前の相談とはこの都市に居る学者とも商人との交渉とは違う、いや、正確には商人が該当するのだが、規模のレベルが違う。そう、商人の親会社とも言える商会である。
「旦那様は勝算はおありで?」
「向こうが乗るかどうか次第かな?手札は多めに持ってるつもりだけどね」
後、まあ、やっぱお約束とかありそうだし、色々通販で買っておくかね。
「餌に食いつくの早?!」
「流石は商人あるいは学者の集まりって所かな?情報早いねえ」
自分の言葉にオウカさんが返答し、他が絶句する。勿論の事だが、商会と交渉するに当たり、代価と言う物は勿論必要である。
「うん、まあ、利益として欲しいのは分かるんだよね、でもさあ・・・」
「ですねえ」
事の次第の相談に乗ってくれたレインさんもある理由で呆れ気味である。さて、こちらが用意した代価とは何か?
「カミノ湯の経営権。それがどういう事か分かるだろうになあ、ここも駄目っと」
そう、あの温泉の経営権だ。というのも、他大陸に行くからにはオーナーが長期不在ではまずいし、王都にずっと管理してもらう訳にもいかない。代理経営者、すなわち、自分の代わりが必要だ。
で、まあ、結果。こちらとの面会申し込みの為にギルドが直接面接した結果の書類が目の前にドン!という訳である。で、皆で書類選考で排除してる商会は、うん。
『我が商会なら、カミノ湯を更に大きくする事が可能です』
と、このようなのが異口同音で言っている商会である。正直、カミノ湯の事が分かってないし、その魂胆丸見えである。要するに、金儲けでしか興味が無い商会である。金が実のらなくなれば捨てるであろう事も十分というか確実だろう。そんなのに任せる気は一切ない。
ついでに言うと、そんな商会の連中が用意する船に乗る気はさらさらに無い。当たり前である。むしろ、命預けれる?と言いたい。
「ん?」
『あら?』
そんな中で、自分は見ていた書類の1枚に手を止め、女性陣も覗く。その後、詳細を見て、採用を満場一致で決めたのだった。
「どうも、初めまして、こんな姿で失礼します」
「ええ。こちらも情報を集めておりますのでお気になさらず。冒険者支援商会、会長のライと申します」
今回は配送ギルドのVIP室を借りて、面会を行った。と言うのも、今回目の前にいる人間の男性が興した商会は配送ギルド、冒険者ギルドに関係するからだ。勿論、場を貸してくれているラークさんも同席している。
「冒険者支援商会。文字通りと取っても?」
「ええ。文字通りとなります」
自分が目に留めた書類に載っていたのが、お爺さんとも呼べる歳の人間の人がかなり昔に立ち上げた商会で様々な都市、大陸にコネを持ち、冒険者を支援すると言った商会だ。普通ならば、立ち上げから数年で衰退しそうなものだが、その実、大成功しているし、今もなお成長中である。
更に言えば、ギルド員との面接で、きっちりした計画書を持ってきたのは ここ だけだったのである。うん、皆、餌に釣られすぎ。
「では、まずは単刀直入お聞きします。ライさん、貴方は転生者ですね?」
「ははは。流石にバレましたか」
立ち上げがおおよそ、30年前、書類を信じるならば、当時の彼が20歳前後。立ち上げから赤字を出さずに、30年黒字を続けている。一見チートに見えるがおそらく違う。
いや、スキルのお陰もあるかもしれないが、おそらく、彼は誰もしなかった事、誰もが面倒くさがる事を丁寧に行っただけだろう。そして、それは日本人に最も必要なスキルとも言える。
「事業計画書、拝見しました」
「ほう」
その言葉に、彼の目が鋭くなる。事業計画書という言葉はこちらは勿論、地球では大きな意味を持つ。まして、転生者で出身が日本同士なら尚更である。
まあ、要するに、計画書のレベルと信用の度合いが排除した商会と比べると、数倍も信頼感が違うレベルという事だ。
「大変、感服しました。これでよろしくお願いします」
「こちらこそ」
握手は出来そうないので、お互い笑顔で返す。こりゃ、本当に任せて正解かもしれないな。
「それで、船なのですが」
「こちらの割符をお持ちになってください」
スッと出されたのは割符。こちらの世界では中々見ないが、なるほど、これは良く出来ている。一見、日本で昔使われていた割符に似てはいるが、偽造は絶対に出来ないだろう。
冒険者支援商会の割符:一見ただの木の割符に見えるが、特殊な加工が行われている。等級:A
特殊な加工とは、おそらく魔法的な物と予想出来る。彼の商会独特と言うより、彼の考案で出来た物には間違いなさそうだ。同時に害は無いと信用出来る為、シェルターにしまい込む。
「なるほど、噂通りのスキルです。安心しました」
「ええ。こちらも安心です」
やはり、魔力による追跡も可能だったっぽいな。しかし、安全シェルター内部に入ると切れる感じかな?ぶっつけ本番だが、確認取れただけでも良しとする。
「では、細部を詰めていきましょう」
「ええ」
「一筋縄では行かない相手でしたね」
交渉を終え、ライさん、ラークさんが帰った所で内部で聞いていたレインさんの言葉に全員が頷く。
「あれで商会に関してはほぼスキル未使用って、本当ですか?」
リィルさんの質問に自分は首肯する。
「勿論、チートは貰ってるだろうけど、アレは誰にでも出来るんだ。ただ・・・」
うん、まあ、上にただしが本当につくんだよな、コレ。言うは易く行うは難しを地で行ったのであろう。
「おそらく、簡単では無かったと思います。初期、かなり無理してお金作ったんじゃないですかね?」
「と言いますと?」
レインさんも興味深げに聞いてきたので、説明する。そう、 ホワイト企業の在り方 と言う物を。まあ、説明していく内に、両名はドン引きしてたけどね。そりゃ、そうだ。
「そりゃ、黒字出せるよ」
「ですねえ」
逆にリンさんとオウカさんは納得したという顔になっている。そりゃ、少し考えればそうなるよね。
「どういう事、リン?」
リィルさんがリンさんに聞く。この世界の人には考え難いが、こちらの世界、要は自分達の転生前の世界の者なら、少し考えれば思いつくだろう。
しかし、実行は容易いが、その実行の為の前段階の資金集めはかなり無理しなければいけない。その上で、状態を保たなければならないので、かなりの難易度とも言える。赤字が出そうになったのは1回や2回では済まないだろう。しかし、逆に言えば、条件と環境さえ揃えば、なるほど、黒字は維持出来ると言う物だ。
「ライさんの商会、こっちでは企業と呼ぶんですが、休みがしっかりあって、しっかりした福利厚生がある企業をホワイト企業って呼ぶんですよ」
そう、そして、それは転生者にとっては最も、誘惑の言葉とも言える。必ずしも冒険者や貴族、平民として転生して、全ての人間が成功した訳でない。そうすると、ドロップアウトした者にとってはどうしても抗えないだろう。
ホワイト企業についての説明をリンさんがしていくと、納得できたのだろう、2人は頷く。
「なるほど、そういう事か!」
「そうなると、集ってくる人間の大半は、転生者って事になりますよね?転生者は大概、体力お化け、知識の塊ですから」
「例え、最初期に赤字が出そうになったとしても取り戻せるという訳ですね」
リンさんの言葉にリィルさんもレインさんも納得した様にうんうんと頷く。
「冒険者支援というのもミソですね。支援がやがて、様々な方面に縁を繋ぎます。が、恨まれる事は少ないでしょう」
だって、真っ当に儲けたお金をちゃんと還元しているのだ。しかも、コネとして様々な方面からの危険に対する支援も受け取れるだろう。これに文句あるとしたら、余程の馬鹿野郎だ。一瞬で身分がどうあれ、干されるだろう。
「で、転生者が大概取ってるであろう、空間収納。まさしく、運輸の革命でしょうね。何せ、見かけ一般人がまさか支援用の倉庫も同然なんて誰も思いません」
そこから、自分が説明を引き継ぐ。なにも、冒険者パーティや商会のキャラバンなどが移動手段ではない。船もあるし、馬車もある。危険もあると神様に言われてたので戦闘技能を取ってる者は少なくないだろう。
「冒険者にとっても、自分の通販技能みたいな便利な物で、しかも、依頼の近くの街やダンジョン以外で支援物資を買える、受け取れるのは大きい。自然と財布が緩まる。つまり、ホワイトでありながら、儲かる」
となれば、どうなるか?自然と答えは行き着くだろう。
「なるほど。噂が噂を呼び・・・」
「自然と転生者が集まり、更に躍進するって事でしょうね。おそらくは、現在も」
レインさんとリィルさんがなるほどと言った感じで頷く。おそらくだが、自分と協力体制に入った事も更に噂を呼ぶだろう。
「だが、その分、彼は裏切らないし、裏切れない。信用に足るだろうね」
自分の言葉に全員が頷く。裏切り、騙しは無いとは言い切れないが、そんな彼の商法は 信用 この一言から成り立っている。
そして、彼は情報を集めている。当然ながら、このシェルターについても集めているだろう。生存第一というか、確実に生存するであろう相手をどうかする等は100%レベルで無い。
「何はともあれ、コネは手に入りましたね」
『となると?』
うん、女性陣の期待通り、明日にでもリトルグランへと言いたい所なのだが・・・
「リトルグランへ!と言いたいとこだけど、少し、作っておきたい物があってね」
『?』
まあ、作っておいて損はないから、作ったら出発かな?
どんな世界であれ、信用は大事。コレ基本ですね。ライさんが行ったのは本当に困難な事です。普通なら破産して路頭に迷いますね(汗)
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 6
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5