37話 鍛冶環境の強化とピッケル(ピッケルとは?)
『あ~』
やめて、皆様。そんな憐みの目で見るのやめてぇ!いや、ホント。
そして、その話題のブツは庭にドンと置かれた初心者用鍛冶セットのアップグレートした後の中級用鍛冶セットである。
「なんで気づかなかったのかと言うか、リィルさんが来た当日に気づけ、自分」
これまでアップデートしなかったのは、前も言った通り、シェルターの中に突っ込むとセットを置く位置を確定出来ないからである。なら、持ったまま入って、持ち運べばと言うが、アップデートするセットはかなり重い上に入るのは玄関からなので万一落として床が凹むとかはまずい。
ならば、中庭までリィルさんが持ってきたマジックバッグ、もしくは、収納魔法を知ってるレインさんが持ち運べばいいのだ。まさに、今更気づいたか、マヌケ!まである。
「んじゃ、さっそく」
まずは鋼板を……と言いたいとこだが、まずは失敗ではなく成功のインゴッドから作る。失敗しても気にしない方向で作る。
『おぉ・・・・・・』
失敗したとはいえ、最初のインゴッドを見て、自分、リンさん、オウカさんが感心する。
鋼のインゴット(失敗):いっぱしの鍛冶師が作った失敗作のインゴット。このままではとてもではないが鍛冶には使えない。等級:D
鋼のインゴット(成功):いっぱしの鍛冶師が作った成功作のインゴット。失敗作に比べ、光り輝いている。鍛冶に使える。等級:B
「鋼ですねえ」
「鋼だねえ」
「鋼だな」
「感動するほどなんです?」
自分達の感動にレインさんが分からないって感じの顔をする。そら、この世界なら日常的なんだろうけどねえ。
「鋼って自分達の世界だと製錬しなきゃいけないし、その方法も結構重労働なんですよ」
「私達の世界は機械もありましたけど、どうしても人の手が無ければいけない所もあったのに、それがこんな簡単に・・・・・・感動通り越してミステリーですね」
リンさんの言う通り、コレはもうミステリーレベルの簡単さだ。更に凄いのは本当に鉱石から抽出できるという点だ。なるほど、こりゃ、買い占め起こるし、玉鋼と勘違いされても仕方ないかもしれない。
そういや、刀の製法とか探すなら学問・・・・・・行かないとダメだよね、アレ。なんとなく、足が行くなと言ってるんだが、うん、まあ、行くしかないか。
「さてと・・・作りますか!」
成功作のインゴッドを持って、イメージ通りに作り上げる。あ、鉄のインゴッドも持ってこないと・・・・・・
「いやあ、出来るもんだね」
やめて、マジックバッグの時以上の呆れの視線を向けるの止めて!出来ちゃったんだよ、仕方ないじゃない!
鋼のピッケル(鉄棒):鋼のピッケル刃に鉄の棒を填めたピッケル。採掘用と言うより、戦闘用であるかもしれない。オリジナルレシピ。等級:A
『武器ですね』
「ぐふっ!」
女性陣の満場一致!ちゃうねん。木だと腐食するから、鉄の棒で作ったらどうなるかな?と思っただけやねん。
とは言え、流石にコレで採掘は腕が危険で危ないだろう。鋼で掘れる所は良いが、万が一固い鉱床に当たったら、棒の硬さも相まって、かなりの反動がくるのは間違いない。
「う~ん、思い付きが珍しく失敗かな?」
「いえ、そうでもありませんよ」
「だね」
レインさんとリィルさんがうんうんと頷く。どういうことだろう?
「冒険者の怪我の原因ナンバー1が前線の武器の扱いにくさです。剣はリーチが短く、槍は技巧が無ければならず、斧は一撃がかわされると弱いですし、弓は装填に時間が掛かります」
「かと言って、先日見つかった棍棒は取り回しは良いですが、木ですからね、向かない環境・魔物もあります」
そこをサポートするのがタンカーと魔法職なわけだが、やはり武器の選択というのは命に直結する。というか、市井の噂でも武器無双と言うのは聞いたことがない。
伝説でも、その一撃が~ぐらいで、単身もしくは近接職が敵陣に突っ込んで無双する伝説もない。ああ、なるほど。
「でも、これなら」
「ええ。まずピッケルであるという事。柄の部分まで金属であるという事を考えると、どこに当ててもダメージは行きます」
「ついでに言うと、スライム系の核を攻撃するのにも向いていますね、コレ」
リィルさん曰く、スライムは不定形モンスターであり、核は見えているがギョロギョロ動く上に、意外と素早いので、ラノベとかで良く聞く斧やハンマー等も当たれば良いが、中々当たらないそうだ。
だがこれなら刃部分は勿論、棒の部分に核が当たれば割れるし、意外と取り回しも良いので向いているらしい。
「となると、いつもの問題ですね」
「ですね」
自分が言うと、レインさんがうんうんと頷く。それは・・・・・・
『価格』
まあ、当たり前だよなあ?等級がA付いてしまったからには流石に鉄は無いし、一桁価格も無いだろう。
かと言って、武器と言うより見た目はピッケルである。そうなると、あまりお高い設定は出来そうにない。
「ですが、ゴブリンの棍棒が初心者から中級者用の優秀なサブ武器ならば、こちらは上級者用の優秀なサブ武器ですね」
「なるほど、そうなると、う~ん?」
リィルさんの言う通り、上位冒険者の腕力やスキルでは流石にあの棍棒と言えども保たないだろう。そうなると、これは売れそうだよなあ。
「う~ん?」
そうなると価格は?に戻る。金は最低ラインとして2桁が良いとこだろうか?
「旦那様、悩むならいっそですね」
レインさんがしてくれる提案に皆がおお!となり、採用することになった。
「お高かったが買えたぜ、これがオールミスリルピッケルだ!」
商業都市の冒険者ギルドで、自分が作ったのより凄そうなミスリル製のピッケルを自慢している冒険者が居る。ギルドの裏玄関からシェルター内で生暖かい目でそれを見つつ、対応してくれる受付さんの前に薬草を中から置いていく。
そうして、お金を受け取り遠ざかったところで・・・
「予想以上に売れてますね。売ったのレシピだけど」
「売れると踏んだのは私とリィルだけど、本当に売れ行き凄いわね」
レシピの売り先は鍛冶ギルド。通信魔法でロンさんにお願いし、まあ、最初は一部のクランに売れるだろうと思っていたのだが・・・
「まさかの採掘クランからの情報の広がり・・・」
うん、オウカさんの言う通り、鍛冶ギルドが販売し始めた時、まず真っ先に購入したのが採掘ギルドのクランだった。宣伝効果もそれほど期待は出来ないと思っていたのだが・・・
「売るのはじっくりと思っていたのに、まさかの好評」
曰く、採掘しながらモンスターが撃退出来る!スライムが出てきた時、スライムを咄嗟にコレで撃退出来ました!当たればダメージになる!等、評判が評判を呼び・・・
「う~ん、シュール・・・・・・」
勿論、そんな評判を逃す冒険者は居ないと言ってもいい。何せ、不定形のスライムの核を攻撃するのに便利なサブ武器で、取り回しが楽な武器に飛びつかない訳がない。
が、しかしである。その所為で、商業都市に居る冒険者の前線系の大半のメイン武器、もしくはサブ武器に金属で出来たピッケルがあるのだ。これはシュールだ、うん。
「まあ、外見的に討伐じゃなく採掘ギルドの一員にも見えますよねえ・・・・・・」
あはははと苦笑するレインさん。まあ、そうなるよね。鍛冶ギルドではついにはグレートピッケルとか言うキワモノまで出来たっていうし。見せて貰ったがピッケルの巨大版だった。それならもうグレートアックスで殴れよってなった、うん。
重いならマジックバッグに入れればいい。ようやく、そこに思い至ったカミヤさん!遅くね???
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 5
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5