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36話 冬の到来とちょっとした稼ぎ

「う~ん?」


ランベルに来て、1カ月ほどが経過した。で、ここで、問題が発生した。


「すっかり忘れてたわ。冬」


これである。王都を出たのが大体秋の中頃ぐらいと思われる。更に温泉関連の足止めがあって、そこから1カ月以上も経てば、冬の様相も見えるというものだ。


「ですね、私達も安全なシェルターの中ですっかり忘れてましたね」


リンさんの言葉に頷く。安全シェルター内でも季節感とか感じはするが、それでも希薄だ。理由は安全だからだろう。本当に危険が無い安全だから、いつものように生活するという事で季節の移り変わりが中々感じられないのだろう。意外な欠点とも言える。


「町の中なら大丈夫だろうけど、街の外は無理そうだなあ」


雪こそ降ってはいないが寒々しい外を見る。が、ここから次の都市に行くとなると確実に雪が降るだろう。道程の天気を予想しようにも、衛星も天気予報無いしなあ。


「仕方ない。春先までこの都市でお世話になろうか」


『賛成!』


お金は問題無い。新ポーションにフライパンを今ならギルドに委託販売で稼げるし、食料に至っては農地に通販機能がある。娯楽に関してもゲーム機もあるし、庭で訓練も出来る。夜は、まあ、うん。


「そう言えば、こっちだと冬の間ってどうするんです?」


こちらの住人であるレインさんとリィルさんに聞く。こういうのはその世界に住む住人に聞くのが一番だ。


「私はマスターの仕事がありましたから、依頼が減る冬の間は書類を処理でしたね、リィル、貴女は?」


「余程雪が酷くならない限りは街の近くで採集依頼。酷い場合は、地下道の掃除や害獣退治だったね」


「あ、それ、私も手伝いましたね」


僅かに自分より早く転生して、冬を経験していたリンさんが言うにはたまにコンビを組んで、お金の貯金をしてたという事らしい。冬は天候が不順なので、基本街の中で過ごすという感じなのだろうか?


「私は青空市場で売り物を天気が良い日の午前だけして、撤収していましたね」


同じくオウカさんも過ごし方を教えてくれる。基本、お金を稼ぐ姿勢だ。そりゃそうだ。宿代や武器や防具のメンテナンス代。女性なら生理が重い日に備えてもあるだろう。そうなると・・・


「ちょっとやってみたかった事、冬に実行しようか、実は・・・」




「魔獣肉のすき焼き1入ります!」


「野菜のかき揚げ2、鳥の唐揚げ2入ります!」


おう、配送ギルド食堂大盛況。う~ん、凄いな。やってみたい事とはリンさんが居る事で以前は諦めた日本的料理の再現である。

こちらの素材で高い料理レベルでもしかしたら、再現出来るのでは?と、リンさんと皆と共同で作ったのがすき焼き、唐揚げ、かき揚げである。


「は~、私も王都の配送ギルドの繁忙期をよく知っていますが、御飯目当てでここまで人が入ったのを見るのは初めてかもしれません」


シェルター内で注文の一部を引き受け、作るのは手先が器用なリンさんとオウカさん、リィルさんを横目に、自分とレインさんは完成した料理を窓の外にある調理場の机に置いていく。

レシピは配送ギルドの調理場のシェフに渡してあるが、美味さが話題を呼び、所謂会社の社員食堂に一般市民が押し寄せてくるという事態になったという訳である。


「元来、一般人も来てましたけど、配送の間に食べるような簡易的な食事でしたから、食べるなら専門の店でというのが多かったですからね」


「お昼限定にしたのも功を奏した感じですかね。この都市のギルドマスター達も来てるらしいですが」


「来てますね、何人か」


今回のレシピの内、かき揚げと唐揚げは簡単に出来たのだが、驚いたのはすき焼きだ。魔獣肉は兎っぽいのや熊っぽいのが主流なのだが、あまり人気がない。肉食であり、草食でもある為、両方の特性を持っているからだと思われる。硬い、臭い、噛みきれないの変わった3Kである。そら人気ないわ。

と言うか、むしろ、草食が多い鳥型の魔獣肉の方が人気があるらしい。そら、お金ある無し関係なく、処理しやすくて美味しい方を食べたいよねってなる。更に言えば、上の方になるとドラゴン肉が人気らしい。で・・・・・・


『ちゃんと調理すれば美味しいはずなんですが・・・』


と、リンさんが逆に燃えた末に完成したのが日本でも人気のお鍋、すき焼きという訳だ。こちらの世界の醤油で割り下、野菜を合う物を探して作るリンさんの気迫は近寄りがたかったな、うん。

その甲斐もあって、魔獣肉を美味しく食べれるレシピとして完成したわけである。しばらく後に、配送ギルドでレシピの販売の予定も告知してある。


「意外なギルドと繋がり持てたのも僥倖でしたね」


意外なギルドとは狩猟ギルドである。彼等は魔物と言うか、害獣扱いの兎と熊を減らすために駆逐していたのだが、熊は皮はともかく肉はあまり買われない、流通されないで処分にかなり困っていたそうだ。

干し肉を大量に作らなくて済む!と言われた時は、その、うん。血抜きはしても美味くもないのを自分達で消費してたんだろうなってなる、うん・・・


「お陰で助かる物も手に入りましたしね」


そう、念願とも言えるアレが手に入ったのである!それが、こちら!



解体ナイフ:解体対象に突き刺す事で素材を瞬時に分ける魔法のナイフ。等級:B



ライトノベルやゲームによくあるアレである。リンさんは所謂料理用の素材、つまり鳥や牛のブロックの解体は得意なのだが、魔獣1匹の解体などは不可能に近い。リィルさんは持ってそうだったが、魔人族は狩猟が得意なので自前で解体していたらしい。ああ、そら、村なら襲ってくる魔獣も要るし、解体出来ないとおかしいよなとなった。

オウカさんは言うまでなく、必要はなかったのだろう。身体能力に優れているからイコール戦えるとは限らないからね、正解とも言える。


「都市を出立した後、魔獣に遭遇しないとも限りませんし、放置はまずいですからね」


ちなみにこれまで倒した魔物やゴブリン等は血抜きを行った後、丸ごとシェルター内に保管し、解体屋に頼んでたんだな、コレが。と言うより、餅は餅屋状態だったという訳である。

一応、レインさんとリィルさんから解体ナイフの事は聞いてはいたが、その頃はまだ狩猟ギルドとは何の接点も無かったという欠点があったからね。


「確か、保管してた兎あったな」


薬草とフライパンで儲けるとは言ったが、現役冒険者のリィルさんの依頼もやっている。とは言っても魔獣退治とかでなく害獣退治みたいな軽い依頼のみである。

なお、一方的に狩っているが、仕方ないね。安全第一!と心の中で言い訳しつつ、解体ナイフを兎に突き刺す。


「おぉ~」


光ったと思うと、兎肉、毛皮、牙、爪が1匹分、綺麗に揃っていた。ビバ、ファンタジー。


「こりゃ、なるほど、便利だわ」


頭部分とかグロい所は消えており、綺麗な状態で毛皮、牙、爪が並んでるのが凄い。人の手でやったら、傷が入りやすい所も綺麗だ。そりゃ、解体ナイフは狩猟ギルド員限定に近い状態になったのも納得である。


「とりあえず、これはレインさん管理のリンさん用かな?」


「あれ?良いんですか?」


一通り調理を終えたリンさん、リィルさん、オウカさんが近づいてくる。


「まあ、自分が持っても仕方ないしな。ナイフの管理についてはレインさんが出来るって言ってたし、獲物を保管するのに必要な冷蔵ボックスも買っておこう」


「やった♪」


抱きついてくるリンさんの柔らかさを堪能しつつ、解体ナイフはレインさんに渡す。そして、リィルさんに頼み、購入した冷蔵ボックスをマジックバックに入れて貰い、リンさんとオウカさんに設置場所を決めて貰う。

そうして、今更ながら気づいた、うん。なんで気づかんの、自分・・・・・・


「カミヤさん、どうしたんですか?」


一早く戻ってきたレインさんが見たのは、打ちひしがれてる状態の自分だからね、是非も無いわ。


「アレ、設置するのにバッグ使えば良かったじゃんと今更気づきました。ハハハハハ」


いや、ホント、リィルさんがシェルターに入ってから今まで気づかないまま、提案もしなかった自分がお間抜けすぎるわ。さっそく、買いに行こうっと・・・


肉食のお肉すらも美味しく食べようとするのはまさに日本人だと思います。手間暇かけて、臭さも克服する日本人に隙は無し!そら、配送ギルド内にあっても美味しい肉喰えるなら人来ますよね。肉は強い


現ステータス


NAME


シロウ・カミヤ



SKILL


安全シェルター LV 5


健康的な体 LV MAX


投石 LV 1


鑑定 LV MAX


鍛冶 LV 5

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