33話 レベル5とちょっとした事件
「うし、レベル5」
安全シェルター Lv 5:手のひら大のシェルターを作る。中はレベルが上がる毎に広くなっていく。このシェルターはあらゆる理であっても壊されない
このスキルは内部に使用者が居る時間及び期間でレベルアップし、内部が充実していく。現在コスト8/10(居間、台所、トイレ、風呂、家庭菜園、応接間、客室1)
あれからさらに2週間。旅路としてはあと数日で商業都市まで辿り着くという所で、シェルターのレベルが5に上がった。はいはい、期待した目で見なくても温泉取りますよって。
温泉のコストは流石に2であった。まあ、広いだろうしね。でも、損は無いので、押したら、暖簾がかかった障子型の扉が現れる。なるほど、露天風呂。
「キャー!突撃―!」
『おーっ!!!』
女性陣は突撃していった。まあ、待ちに待っただろうしね。こちらも特典を選ぶ所だったので丁度良いかな?
『自動販売機機能を開放します Y/N?』
「よし!」
通販機能に似てはいるが、コレの良い所は、自動的に選んだ物が補充されるという所だ。ジュースに限らず、お菓子も選べるし、賞味期限が切れたら自動的に廃棄され、新しいのが補充される。ビバ、神様パワー。
更に、販売する物は自分で決めれて、品目の変更も出来るという物だ。まあ、ただし、お金入れなきゃダメなのは通販と同じである。
「ん~、これとこれとこれ、あ、ポテチも入れておこう。塩と青のり・・・あ、チョコも入れておこう」
ポテチがある以上は、スポドリにコーラは定番。後、懐かしい麦茶にウーロン茶も入れておく。で大体入れ終えたら、残り1枠だが、ちょっと入れておきたい物があるんだよね。
「え~と、これじゃない、もう少し下かな?」
あるとは思うんだけど、え~と・・・あ、あったあった。
「炭酸水、ぽちっとな」
以前ポーションを作ったのを覚えているだろうか?その中で、炭酸水で作ったポーションは通常のポーションの倍以上の賞味期限というか、品質を維持できる時間が長かったのだ。
つまりだ、今後もポーションを揃えていくなら、通販でまとめ買いより、量を調整出来るこちらで維持していくのが良いと思ったのだ。
後、もしかしたら、毒消し草から作れる、毒消しポーションの改善とかにも役に立つかな?という下心もある。うん、アレも旧ポーション程じゃないがアレだ、ドクダミみたいな味がきつい。
「上がりました。わっ、コレ懐かしいですね」
「うわ、ホントだ、赤い自動販売機が懐かしいな」
リンさん達が上がってきた。そのホカホカ姿にグッとくるが今は堪えるのだ、マイサン。
「レベル5のご褒美ですね、お金は机の上に置いてあるので、それで購入してください」
さて、自分も露天風呂。それも久々の扇風機や、お茶を味わってくるか~。
「あ、カミヤさん、上がってからで良いので、また依頼があるのですが」
おや?レインさんからとなるとまたギルドや国からの依頼かな?何だろう?
「はい?」
風呂から上がり、居間でレインさん以外の誰が言葉を発したか、いや、もしかしたら全員同時に発したかもしれない。それ程、驚きを感じたかもしれない。
「様々な都市でクランが乱立、ですか?」
確かに、ある意味大事ではあるが国にとっては嬉しい悲鳴ではなかろうか?
「ええ、普通なら歓迎すべき事なのですが、実は・・・」
まず、ギルドにおけるクランを作る条件とは一定の人数、クランリーダーと副リーダーの功績が十分である事、そして、ギルドが年に何回か発行するクラン証を手に入れる事。言葉にすれば、これだけである。
人数やリーダー、功績などは割と人数が居れば達成可能なのだ。ところが、問題となったのが申請時に出すクラン証である。
「大量の偽造の疑いありですか。しかも、複数ギルドで」
つまり、地球で言うとこ信用の元となる証券が大量コピーされたようなもんである。
クラン証自体はギルドがクランへの試験として色々な所に流すそうである。提携してるのが秘密の店や、青空市などに販売をお願いするそうだ。勿論だが、一定の店という事は無い。ほぼランダムだそうだ。
「ところが、出した覚えの無い店などからもクラン証が発売されていた」
「ええ。配送ギルドの受付が調べた所、発行したクラン証に似てはいますが、使われているはずのインクが使われていないため発覚したそうです」
「当然、発売店に出向いたが、店員はギルドからだと言われ、今回は送料がいるといわれ、お金を支払った・・・か」
胡散臭くはあるがクラン証を販売出来るというのは大きな儲けが出るのであろう。犯人はそこを突いたってとこかな?
「まるで、日本で起きた詐欺事件みたいですね」
リンさんが言った例えが一番上手いだろう。ファンタジー世界に日本の詐欺の手法を持ち込めば確かにそうなる。うん?
「レインさん。少しお願いしたい事あるんですが・・・」
それから更に数日、商業都市が見えた所で、レインさんが再び通信を受けた後、今度は満面の笑顔だった。
「大成功です!流石です、旦那様!」
むぎゅっとお胸が顔に当てられる。うむ、程よい感触じゃ。
「しかし、本当に詐欺集団だったんだな、転生者の」
まあ、出来るとすればその辺りだからね。自分としては予想だったが、レインさんによると大当たりの能力はコピー機能力だった。うん、つまりそういう事である。
レインさんから聞いた逮捕された転生者によると、最初こそは絵のコピー等で儲けていたが、規制が厳しくなった。まあ、当たり前である。
「そこで、クラン証の話を聞いて、コピーして小銭儲け、とは言えないほど儲けてしまって、止まらなくなったと」
まあ、そこで役に立つのが・・・
「まずは判子。これで最初の勢いは止まる」
「ええ。各支部や本部で押した物が出回り、偽造されたクラン証は廃されましたね、一時的だけ」
そう、一時的、つまりは組織的な転移者による犯行だったので、判子まで偽造し始めたのだ。だが、ここまでは目論見通りである。敢えて、判子をまず大きく対策として推したのはそういう訳だ。
コピー能力者だけか確かめる布石でもあったのだ。判子は精巧な物で、ここからクリエイト能力を持っている事が分かった。コピー能力者だけではなくクリエイト能力持ちも居る。つまり見事噛み合った者同士がいる集団の犯行。
「そうして、次は透かしを入れる。ただし、2種類。片方は秘密の透かしだ」
発行するギルドマスター以外は知らない透かしを入れたのだ。さて、そうなると・・・
「分かる透かしは入れ始めますね」
そうして、勝った!と件の組織の人間は誰もがそう思う。だが、実態は違う。
「金を受け取る、搬入は奴等の側の人間だ。そうして、偽造を買ってしまったクラン設立希望の人間にどこで買ったか聞いていく。透かしが無い店だからどこかは簡単に絞れるはずだ」
「その店は厳重に監視され、次から次へと儲け先が潰される。すると・・・」
レインさんがこつんとグラスを指で弾く。
「焦る。当然だ。人間ですもん」
オウカさんがうんうんと頷く。そう、焦り始める。すると、だんだん隠蔽が雑になってくる。何せ、なぜ、偽物と断じられるのかさっぱり分からないのだから。だからと言って、正規のクラン証を手に入れようとすれば御用の可能性は高い。
しかも、元の世界とは違い、テレビの取材等が無い。得る為のネットもない。結局、庶民が情報を知るのはそれなりしかないという上に、ギルドの件なので盗賊ギルドも当然使えない。
「焦った結果、まだ行った事のない店に行ってしまう。当然の心理ですわね」
「そうなれば簡単だ。盗賊ギルドの人間を使って、尾行させればいい」
そうして、見つけた拠点に対し、スキル無効の魔法を使い、包囲して、御用!という訳である。が・・・
「しかし、ここで焦らず、拠点に人が居ない間に色々調べる。魔法があるからね、色々捗るだろう」
そう、地球とは違い、魔法があるのだ。裏付けも様々な方法で取り、一斉に御用という訳である。組織とはいえ、その集まりの特性を考えると転生者とばれない人数となる、つまり件の組織は少人数が好ましい。
それらを一気に捕まえ、組織は壊滅となったわけである。
「で・・・」
「はい。多分ですけど、商業都市であらゆる意味で大歓迎されると思います」
まあ、うん。コピー余罪がゴロゴロ出てたのに、これまで逮捕出来なかったらしいからね、うん。聞けば、確実に死罪は決定らしい。そら、贋作を大々的に売ってて、証券偽造したらそうなるわな。んで、逮捕した自分はある意味英雄で有名になって、そういう意味で悪い虫が付きそうと、平穏はどこ?
日本と同じノリで犯罪を犯していた転生者達ですが、日本とは違い新聞やテレビ有りませんからね。騎士団やギルドの意向は足で集めるしかないんですが、そうすると今度はプロの盗賊ギルドやその手のギルドに見つかる訳ですね、カミヤさんの知識の勝利ですね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 5
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5




