32話 湯ぅは何をしに旅立つの?
「決定だな」
『決定ですね』
翌日、朝ご飯を食べて、女性陣と話し合った結果、商業都市→散策→学術都市→散策→貿易都市と回る事にした。
学術都市は行かずとも良いんじゃないかという意見も出たが、なんだかんだで歴史を学ぶ場と言うのは貴重だ。仕方ないので行くしかない。王剣証もあるし、変なトラブルは無いと思いたい。または商業都市でその辺のコネを見つけようと思う、うん。
「王城にも連絡しておきました」
こういう時、レインさんが持つ魔道具が役に立つなあ。さて、出発するかね。
「では、出発!」
王都から商業都市までは通常1カ月。馬車に乗っても良かったけど、色々見て回りたいしね。ちなみに方角は東。学術都市は北、貿易都市は西となっている。
偶然とはいえ、丁度ザナがある南も含めると一回りするって事になるかな?
「まあ、流石に、この人数が居れば、トラブルは無いでしょう」
そうだね。まあ、警備兵も多い道だって聞くし、無いだろう、うん。
「と思っていた時期が我々にありました」
『はい』
何があったかと言うと、あれから10日目の結界石がある近くで野営したときの事だ。
「何か、騒がしいですね?」
「聞いてみますか」
カットしてた集音機能をオンにする。そうすると、騒ぎの原因が聞こえてきた。
『あつ!アチィ!なんだ、この飲み水!ここじゃあ、野営できねえぞ!』
『しかも、コレすっげえしょっぱいぞ!』
『くそ、まだ、夕暮れだ。野営準備は馬車の中でしながら違う方に向かうぞ!』
と、あっという間に集団が移動してしまい、現在、ここに居るのは自分達だけという訳である。しかし、飲めないほど熱い上にしょっぱいお湯?まさか・・・・・・
「オウカさん、リンさん、まさか、これって・・・」
溜め池に近づき、取っ手付きのコップで件の熱いお湯を窓から手を出して汲む。なるほど、塩分濃度が高い白いお湯、そして、この独特の匂い。
「ええ、この世界の方はまだ馴染みが浅いか、彼等、もしくは前の誰かが無断で溜め池拡張の際にどこかで泉脈が当たったのかは分からないけど」
「温泉、いえ、源泉・・・ですね。いくらなんでも、川に泉脈があるとは思えませんし。おそらくですけど強塩泉系ではないでしょうか?」
で、うん、まあ、コレ・・・レインさんをちらりと見る。
「え~、レインさん。王に連絡を」
「えっと、事情は勿論教えてもらえるんですね?」
事情を知る自分を含めた2人と共にうんうんと頷く。なお、この後、レインさんとリィルさん、さらに通信の先の国王含むお偉いさんが頭を抱えたのは言うまでない。
どういう事かと言うと、兵士や冒険者にぴったりな温泉だから、多分、ここに宿場街を作るしかない、のだ。
「切り傷、打ち身、捻挫などに効く天然のお風呂ですかあ・・・」
「自分達の知識なら……ですけどね」
ちなみに、温泉の湯を鑑定したら以下の通りである。なお、この結果にオウカさん、リンさん、自分も頭を抱える羽目になっている。
異世界の温泉の湯:少しピリピリする塩泉系。効能は切り傷、打ち身、捻挫を浸かった時間により徐々に治す。等級:A
ポーション風呂じゃねえか!と大声で突っ込みたい。流石、異世界!とも突っ込みたい。そして、なんでやねん!と更に大声を上げて突っ込みたい。何じゃ、こりゃあ?!
「いやあ、早いなあ」
「旦那様、現実逃避は良くないですよ」
「まあ、無理もないですが」
レインさんとリィルさんの言葉に現実に戻る。そして、リンさんが作ったご飯を食べつつ、中庭からの光景を見る。
中庭から見える光景はこう、城壁に囲まれた大衆浴場?一応、浴場を作る文化はあるのだが、この源泉は無申請であった為、急遽、魔法使いチームが派遣され、1週間程でこのような形になったのだ。そして、付いた名が・・・
「カミノ湯、ですか」
「ごふっ!」
オウカさんが呟いた通り、見つけたのが自分であってしまった&申請したが故にそういう名がついたのだ。いやああああ!堪忍してぇええええ!
こういう温泉は天然物だと、所有権という訳ではないが発見者の名前が一部使われて付けられるらしい。誰だ、そんな伝統作ったの・・・いや、まさか、無申請だったのはこういう事か、こういう事かあ!
「ま、まあ、名前はさておき、結構人来ますね」
話題を逸らす意味で言ったが、本当に結構来ている。中には、こう覇気っていうか、気迫が凄い人も来ている。
「ああ、おそらくは高ランクの人でしょう」
レインさんがそう言うと、リィルさんが何人かの現役高ランクを指差しで紹介してくれる。ああ、つまりは・・・
「怪我・・・ですか」
「ですね。それが浸かれば治るかもしれないという噂によってどんどん来てるのでしょうね」
要するに罠や思わぬ攻撃で重傷を負った冒険者や貴族、騎士団等の間でどんどん噂になり、開業と同時にってわけか。
「更に言えば、貴族のご令嬢も来ているようですね」
ああ~、塩泉系は肌に良いからな。一応、男女に分けたのも噂になったのかな?覗きなどの対策もばっちりしてあるのも一因かもしれない。
と言うのも、浴場は2種類ある。1つの浴場に男女で分けるではなく、文字通り2つの浴場を作ったのだ。片方が男性、片方が女性用である。特に女性用はしっかりと結界や護衛が駐在している仕様である。
「覗きってそんなに多いんです?」
「ええ。王都はしっかりした施設なのですが、それ以外は結構多いですよ。特に人気ある冒険者や上位貴族を映した宝珠は裏で高額で取引されてるほどです。なので、秘境の温泉でしたっけ?未開の温泉にはあまり人が来ませんね」
宝珠というのは要するにビデオカメラみたいなもんである。日本的と言えばそれまでであるが、うん、まあ、想定外の使い方って多いんだなと納得しておく。
「覗きの対策をするだけでも変わりますし、人が多いのは場所も良いんだと思います。ここは商業都市の通り道ですから」
「ああ、汗を落としたい人とか多そうですね。特に帰り道」
リィルさんの言葉にオウカさんがうんうんと頷く。帰り道・・・?ああ、そういう事ね。
要は、汗と共に嫌な汗搔いた跡を流したいと。ああ、そりゃ、一般の客も多いわけだ。商人も多めなのはそういう事か。
「あれ?」
「どうしましたか?」
そろそろ、旅の続きでもするかと思い、ステータス画面を出したら、スキルのところが光ってる。なんぞ?
「いや、なんか、スキルの部分が光ってるんで、何かな?と」
「あら、コレ、スキル取得の光に似てますけど、赤いですね?」
あ、そういえば、スキルを学べば、取得出来るんだっけか。神様に質問した事忘れてどうする。でも、変だな?スクロールは勿論、取得するような事は学んだ覚えはないぞ?
更にレインさんに聞いてみると、取得した場合は黄色い光が付くらしい。でも、コレ、赤いよな、何だろ?
「まあ、悪い事はないはず」
とりあえず、調べてみる、すると・・・
「あ、ああ~、なるほど」
「どうしたんですか?」
「これこれ」
ステータス画面を皆に見せる。彼女たちなら隠すことは無いからな。その画面とは・・・
シェルターの部屋選択に【温泉】が追加されました。
要するにアレだ、スキル取得の亜種版である。多分、温泉郷とまで行かずとも、スパ施設の建設に関わったからではないかな?と思う。
見ていくと、温泉というか、所謂、露天風呂を追加するというものだった。スパ施設のように飲み物が飲める部屋や更衣室も用意されるらしい。
「えっと・・・・・・」
まあ、勿論、こんなもん見たら、皆さん、目が爛々と輝きますよねえ、うん。
『取ってくれたら、色々してあげるんだけどなあ♪』
あっあっあっあっ・・・・・・4人の色気が、あっあっあっ・・・・・・
タイトルは少しパロってみました。まだ地味に続いてる長寿番組なんですよね、アレ。温泉はやはり日本人には外せず、女性には人気高い施設という事で。まあ、普通カミヤさんの部屋に客室にもお風呂ありますけど、温泉は特別感ありますよね?
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 4
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5




