30話 新たなヒロイン参戦
「あら?本当にコレはアレですね」
ロンさんが出したアレは複数買っていたらしく、1つ預かって、それを机の上に置くと、リンさんも驚きの顔をする。
「ええ。実際触るとより分かりますね」
置かれたアレとは、漆塗りの茶碗である。こう、熟練の技術で作りました!ではなく、良くある量産品とも言えるモノである。
「「100円ショップによくある漆塗りの味噌汁に使いそうな碗」」
コレがどうかしたのか?と言うなら、そいつは転生者である事は間違いないだろう。それも日本人は割と確定だろう。
「安いけど、使い道が多いアレですね。この作り、間違いなし」
「なるほど、これは謎ですね」
リンさんが言うと、レインさんとリィルさんがどうして?と言う顔をしてきたので説明する。
「こういうのは多数の流通前提なんです。後、これを量産前提で作ったとなると、大型の工房、いえ、工場がある筈なんです」
リンさんの言う通り、こういうのは様々な店で置いてもらうために普通は店に置いてもらうと言う感じで流通させるはずなのだ。ロンさんによると、それほど数は無いと言われたらしいが、自由市に数を置かずに置いてるというのはおかしい。
「なるほど、そのような工房が建ったという事は聞いた事がありません、つまり?」
「ええ、おそらく、これを生産した人は、同じ転生者に助けを求めている。ただし、コレがどういう事か分かる人に限るって感じですかね」
という訳で、レインさんに通信用の魔道具で実際に会ったロンさんに自由市でその人を探してもらい、鍛冶ギルドの防音部屋で落ち合う事にした。
「どうも、初めまして、須藤 桜花と申します、オウカと呼んでください」
シェルターの入室と応接間にびっくりしつつも紹介してくれる桜花さんは女性でスレンダー系の獣人だった。と言っても、この世界で亜人は差別される事はない。むしろ、重用されている方だ。
「初めまして、カミヤと申します。それで、コレの事ですが・・・」
「はい。きっと誰かがそれに込められたメッセージを読んでくれると思いまして、実は・・・」
アカン。この一言に尽きる説明だった。ロンさんも含め、全員が天を仰いでいる。むしろ、よく無事だったまである説明だった。
「良くご無事でしたね?」
「スキルのお陰で、ホント、ここに来るまでロン殿がギルドマスターでなければ襲われてたかと」
「おい、レイン殿よ、お前さんも上に報告してくれ、俺もここを出て、連絡を取る」
「了解。少し離れますね」
どんぐらいヤバいかと言うと、ギルマスと元ギルマスが王城の方に連絡を取る必要があるぐらいヤバい。何があったかと言うと・・・
まず、オウカさんは得意で趣味にもなる茶器、陶器作成と亜空間工房スキル、それと隠密スキルに長けさせて、尚且つ、憧れである獣人の姿で転生した。コレがまず、幸いした。
(転生したての頃には茶器を作って、金策していた)
無論、レベルを上げてあるスキルの為、Bランクから始まり、極まり始めるとAランクの茶器が出来るようになった。それを、転生先の地方都市で細々と売っていたが・・・
どんな世界にも転生者に限らず、悪い奴は居るもんである。話しかけてきたのは商人ギルドに入会しているAランククラン。
(うちで仕事してみないか?と誘い、作り方を盗み見を魔道具使ってまで行い、自分達のとこのメンバーに出来るようにする。そして、茶器は簡単に表に出さずに、自分とこの専売にする為に申請を出す)
そうして、次に来るのは脅しである。茶器を作れるオウカさんをクビにし、うちが専売権あるからには作ったら逮捕だと脅してきた。そうなると、オウカさんは稼ぎのアテが無くなり、クランは大金儲けという訳だ。しかも、オウカさんが茶器を作らない様に監視する為に盗賊ギルドの人間まで雇う始末である。
(ここで、追跡や監視を避けれたのは亜空間工房スキルだ)
このスキルはシェルターに似ているスキルで、彼女の近くの空間に工房を作るスキルだ。つまり、コレが自分達が謎と思っていた部分である。ただし、出るのは入室した場所、そこを抑えられていたら、出た時に逃げれない。
そこで役に立ったのが隠密スキル。これを合わせて、前の稼ぎを倹約しつつ、何とか王都という大きな都市に出てきた。そして、工房に籠りつつ、自由市の日にあの茶碗を売って稼ぎつつ、接触してくれる人を待ったという訳である。
「はい、どうぞ」
リンさんが持ってきたパンとスープを感激しつつ食べてる辺り、本当に気を張ってたんだなと思うと同時に、彼女を騙したクランに呆れと怒りが湧き出る。
「ただいま戻りました、例のクランについては随時調査入る予定であり、盗賊ギルドは調査終了次第撤収するそうです。久々にギルドマスター自らが滅ッ!するようなので、もう監視は心配いりませんよ」
なんだろう?レインさんのセリフは間違ってないはずなのに、めっ!ではない言葉に聞こえたような気がするが、気のせいだよね?はい、気のせいでしたわ。
「代わりに、彼女を保護する事を提案いたします。というか、こちらにて保護しないとやばいです」
「はい?」
説明を聞いていくと、当の本人も自分達も頭を抱える羽目になった、何があったかと言うとだ・・・
「王都に本店出店・・・」
盗賊ギルドも金を貰った以上は調査報告はしていたらしく、オウカさんが王都に来たという所までは報告していたらしい。それも、数ヶ月前の事だから、責めれんわな。
で、オウカさんを捕まえる意味でも、件のクランが王都に出店しに来たという訳である。う~ん、本当にオウカさんについてはギリギリだったという訳である。加えて・・・
「各国も狙う可能性あり。リンさんと同じですか。それも、金策としてですから・・・」
「事が終わった後も、保護ですね」
デスヨネー。というか、料理はレシピが回ればいいが、おそらく、茶器についてはどうにもならない可能性が高い・・・・・・あ。
「保護する代わりと言っては何ですが、オウカさん、ちと聞きたい事あるんですが・・・」
はい、新しいヒロインはスレンダー獣人娘です。そして、悪い奴は転生者だけとは限らない。スキルが無ければ本当に危ない一例でした。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 4
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5