28話 ダンジョン異変
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「ダンジョンに潜るですか?」
あれから数日、かのクランについては完全消滅。周りも落ち着きはした。神殿にて神に宣言、罪ありとされれば、神から加護を受けた転生者といえども裁けるらしい。
勿論だが、件の転生者クランは罪ありとされた。いや、それどころか全員が何らかの犯罪に手を染めていたのだ、アカン。
もう色々忘れるという意味で、ちと考えてた事を提案したわけだ。
「そそ、リィルさんが雇ったパーティメンバーとしてね」
冒険者カードに付いては、自分は完全証明として王剣証が、登録していたリィルさんとリンさんは持ってるし、レインさんが持ってないはずないからねえ、オランジェさんの知り合いだし。
「何か調べたいので?」
「というより、ダンジョンへの興味と今後何かあった時にギルド以外に駆け込めば相手が躊躇する場所の事を知っておきたい」
「ああ、なるほど」
あの時は近郊の森以外にさり気なく誘い込める場所なかったし、ギルドを頼りにしても襲撃されて無茶苦茶になる可能性あったしね。ダンジョンなら、襲撃もどうにかなるかな?と調査したいという訳だ。
いや、半分ぐらいは、ダンジョンってどんなのだろ?という感じなのだが。
「ふむ、確かに必要かもしれませんね。矢がどんな感じで飛んで行くかも試さないとですし」
リィルさんの魔法やレインさんの魔法は近郊の森や草原で試したのだが、矢については未知数というか、外でも誤射が怖かったので試さなかったのだ。いきなり人が目の前に来るとかありそうだったしね。
その点ダンジョンなら住み分けあるし、人が居るなら深い階層に行けばいい。シェルター内から試すだけだから安全だしね。
「それなら、少し変な噂があるダンジョンがあるんだ」
リィルさんから聞いた所によると、そこは王都が管理する初心者用ダンジョンだったのだが、最近になって、中級レベルの人間もケガをして、撤退しているらしい。
「罠に引っかかったとかでなく?」
「ギルドも懸念して、上級冒険者を派遣したら、問題は無かったが、一つだけ気になる点を話したんだ。それが、モンスター達がまるで組織のように行動していた・・・らしい」
ふむ。それは確かに気になるな。
「リィルさん、質問。そのダンジョンが見つかったのは?」
「おおよそだが、200年近く前に見つかったとされている。最近まではそんな異変は無かった」
「組織立って行動してるのは知能ある生物だけ?それとも、獣系も?」
「主にゴブリン、オークです。狼など獣系はいつも通り数に任せてきますし」
じゃあ、地下に魔王降臨!とかではない。そうなった場合、獣系も組織立った行動についてくる筈だから。となると?
「何かを守っている?」
「言われてみれば、確かにそのようにも見えますね」
「レインさん、自分達とダンジョンに潜ってくれそうな高ランク冒険者クランって有りますかね?」
「いやですわ、旦那様。もっと頼りになる伝手ありますでしょう?」
「え?」
え?
「わ~お」
ヘイ!皆!初心者ダンジョン攻略とは思えない、過激なメンバーを紹介するぜ!
「いやはや、こういう演習は久しぶりですねえ」
王都ではもう馴染みの顔になってる近衛騎士団率いるグリムさんの騎士団部隊!
「はっはっはっ!確かにのう!」
更に、馴染みになってるロンさん率いる鍛冶ギルドの臨時採掘・修理部隊!
「はい、ダンジョン調査依頼を受けた方の証明書発行とマップ受け取りはこちらで~す、並んでくださ~い!」
冒険者ギルドが誇る臨時クエスト受付所!アンド、高ランク冒険者クランの皆様ァ!
「ポーション他物資運び込みに来ましたぁ!え~と、これはこちら、これはこちらで決済印ください!」
現在の新たなマスターの下で営業が始まった配送ギルドによる補給部隊の皆様ァ!以上!初心者ダンジョンなのに立ち入り禁止されて、これを見て納得した初心者冒険者の皆様の驚きの視線を背景にお送りします!
「さて、そろそろ最初に入った先行組の報告が来ると思いますが・・・来たようですね」
「失礼いたします!グリム団長!団長の言う通り、ゴブリンやオーク、果てはコボルトまでが陣形を敷いていたのを確認しました。現在先行部隊が魔術、弓兵隊と合流し、敵陣形の確認をしております!」
「あ~、兵士君、よろしいかな?」
「は、いかがしましたか、カミヤ殿?」
一応、作戦前に各部隊にこういう状態で話しかけるという事、王剣証を持っている自分について通達してある。まあ、王剣証がでかいんだろうなあ。シェルターはあまり驚かれなくなった。
「魔法、あるいは弓、盾持ちなどは確認された?」
「はっ!後衛に弓を持ったコボルトが確認されております。先遣隊によると、負傷した冒険者が落としていった弓である可能性が高いとの事です」
むぅ、ますますおかしい。何があった?いや、正確には何が起きている?いや、待てよ?ダンジョンには集落は作れないと聞いた事がある。だが・・・これではまるで・・・
「統率者が居るな、こりゃあ」
「ええ、ですが、ダンジョンの特性上、集落は作れません。その為、キング、ロードもボス部屋以外は滅多に現れないのがダンジョンです」
グリムさんもロンさんも困惑気味だ。何か見逃してる気がする・・・・・・あっ!
「兵士さん、冒険者ギルド方面に通達をお願いします!異変が始まった辺りに転生者関連の人間が潜って戻ってこなかった事例があるかを確認をすぐに人員を増員してでもお願いします!見つかった場合は特に装備品とスキル周りは入念に!」
「は、はい!」
出来れば、外れて欲しいが現状を考えるとこれしかない。
「何か分かったのですか?」
「おそらくですが、このダンジョンで不慮の事故が起きた可能性があります」
「事故?それと、この異変が関係するのか?」
「あぁ、なるほど」
困惑するグリムさんとロンさんだが、冒険者を長い事していたであろうレインさんはそこが分かったらしい。
「グリム様、ロンさん、簡単ですよ。装備品です」
「「あ」」
転生者のチート野郎と言えども、怪我もするし、罠により命も落とす。例えば、その中にモンスターを統率するアイテム・装備を持ってる奴が居たとしたら?
それを拾ったモンスターがまだ生存しているとしたら?つまり、そいつを倒さない限り、問題の解決は見ないという事である。
「一先ず、戦闘している部隊を後退させましょう」
「ですね。このまま戦うのは時間の無駄になります」
グリムさんは別の兵士に伝言を向かわせる。後退命令。ただし、敵を弓や魔法で少しづつ減らしつつだ。
「伝令!冒険者ギルドより、確認が取れました!異変が起きた日に転生者のテイマーが一人行方不明になっております!こちら、冒険者カードのデータです」
レベル、ステータス、スキル構成はどうでもいい。読み進めていくと・・・・・・
『見つけた』
多分、データ見た者が全員呟いた。そこにはこう書かれている。
統率者の指輪:テイムモンスターを限界所持枠を超えて、本人、もしくはテイムしたモンスターが倒したモンスターを統率する事が出来る。等級:A
「ビンゴ、ステータスもそれほど高くなく、ソロ冒険者と」
詳細を調べていくと、テイムしたモンスターでダンジョンをクリアしていくタイプだったようだ。強いモンスターが居るからと油断したんだろうな。そして、初心者ダンジョンだが、ダンジョンという物その物に対して、慢心したと
当時はテイムしたモンスター無しの腕試しとして行った為、モンスターも専門の施設に預けたままで、行方不明になった日に同時にモンスターも消えたらしい。
「有効範囲も結構広いですね。後退した遭遇チームの一人を急ぎ、ここに。おそらく、ダンジョンのモンスターならば途中で引き返すはずです」
「はっ!」
グリムさんが言うと兵士が急ぎ伝達に向かう。いやあ、頭良い人が複数人居るって助かるわ、ホント。ダンジョンモンスターは基本、外には出れない。例外は無いらしい。スタンピードの時ですらダンジョン内の方が安全と言われるほどである。
つまり、このアイテムの所持者、いや、所持モンスターも同様という事である。事実、異変があった日から外で統率されたモンスターを見なかったのはそういう事であろう。
「さて、こうなると、やはりこのダンジョンのボスモンスターでしょうか?確か、オークジェネラルだったはずですが・・・」
「いえ、多分、ゴブリンだと思います」
「と言いますと?」
グリムさんとロンさんがこちらに顔を向ける。まあ、向こうからは見えないんだけどね。
「まず、ボスならば、浅い階層に布陣なんかしないでしょう。むしろ、ボスだからボス部屋から出れない特性あるのに、その扉の前、あるいはボス部屋で布陣しないのはおかしい」
そも、ボス部屋から出れない奴がダンジョン内で落ちたアイテムを取れる訳がない。となると、ダンジョン内のモンスターが候補になる訳だ。
「冒険者を罠に嵌めるなら、道具に恩恵があっても、オーク、コボルトはちと道具を使うという知恵が足りません。となると、ゴブリンでしょう。そして、獣系を操る際のリスク、つまり支配が弱まれば襲われる事も考えている。その為、獣系は無視された」
「なるほど。む、来たようですね」
肩で息をしている兵士が駆け込んでくると、グリムさんは落ち着かせ、事を詳しく聞いていく。自分もレインさんも聞き耳を立てる。やがて、地図を広げ、ロンさんがコンパスっぽい物で円を描いていく。
「ふむ、以前の報告も当てていきましょう、ロン殿、器具をお貸し願えますか?」
「おう」
地図に丸が次々書かれていくと、1箇所、本当に1箇所だけ、この襲撃範囲の為に、今は入れない部屋が存在した。
「ここか。1階層の奥。階段近くに見せかけ、階段の逆側の部屋だな、こりゃあ、気づかんはずだ。2階層から来てると思われやすい」
「厄介ですね、かなり奥ですし、物量取られると押し返しやすい位置ですよ、コレ」
「おそらく、2階層以降に潜れないんでしょうね。おそらく行けても階段付近でしょう。2階層以降からの被害は聞いてない事も含めて考えると、カミヤさんの言う通り、ゴブリン系の可能性があります」
「いえ、場所さえわかれば、後は簡単です」
自分がそう言うとグリムさんにロンさん、後ろに居るレインさんまで自分を見てくる。
「で、策をより確実にする為にレインさんとグリムさんにお聞きしたい事と調べて欲しい事があるんですが・・・」
「全軍突撃!敵は2階層に居る!」
グリムさんの号令で騎士団と冒険者の集団が突貫していく。統率された陣形と言えども、所詮はゴブリンやオーク、コボルトのみの編成だ。要は初級ダンジョンの1層の敵だけだ。こちらの指揮系統がしっかりしていれば蹂躙は出来る。
見る者見れば、敵の位置にたどり着いた先が2階層に向かってるようにしか見えないだろう。自分も、シェルターを車形態にして、グリムさんに運んでもらう。
「念入りに部屋の所には範囲攻撃魔法をかけていけ!伏兵がどこにおるか分からんぞ!」
ロンさんが更に指示する。初級ダンジョンなだけに地図は出来ているので部屋に到達したパーティが魔法をかけて念入りに潰していく。今頃、奴は冷や汗モノだろう。でも、助かるとも思っても居るだろう。
だからこそ、こちらの考えに嵌まる。後はどんどん進むだけだ。
「よし、この部屋で最後です!魔法隊!」
「はっ!ファイアーストーム!」
派手な炎の竜巻が渦巻いてる間にグリムさんはシェルターをそっと岩陰に隠す。派手に燃え盛る炎をスマホで拡大縮小を繰り返し見る。うん。
(見つけた!)
リィルさんが中庭から外に向けて矢を放ち、炎がまだ渦巻く部屋に向けて射る。
「よし、ここは確認した!全軍、2階層に向かえ!」
そう言うと、グリムさん達は2階層の階段に突撃し、しばらくすると、喧騒が止む。すると・・・・・・
「ゲゲゲゲゲゲ!」
魔法で焼き尽くされたはずの黒い部屋の一角から、指輪やマントをしたゴブリンがスゥッと現れる。
「まあ、そうなるよな」
「ギッ?!」
どこからともなく聞こえた声にゴブリンが周りを見る。だが、まあ、手乗りサイズの車とは思わん為か、どこかに人が居ると思い、手に持つ武器をぶんぶん振り回すだけだ。
「その隙貰った!リンさん、レインさん、リィルさん!」
操縦席から開け放している窓際に居る彼女達にお願いしていた事を指示する。
『はい!』
操縦席でアクセルをフルスロットルし、ゴブリンにすれ違うように近づき・・・
『拾いました!』
3人の声が聞こえると、ゴブリンが身につけていた装飾品は全て彼女達の手にあった。
統率者の指輪:テイムモンスターを限界所持枠を超えて、本人、もしくはテイムしたモンスターが倒したモンスターを統率する事が出来る。 等級:A
姿消しのマント:気配・姿を完全に消す事が出来る。ただし、マントの所有者のみ、内側に何か物を入れても消せない。 等級:A
ダメージ無効のネックレス:戦闘によるダメージを無効化する事が出来る。 等級:A
想像以上に、こう、持ち主は戦闘外での死は考えてなかったんだろうなあってなる。うん、この構成、罠の事を完全に考えてない。むしろ、自分のレベルの高さで慢心したな、こりゃ。
ダメージ無効が戦闘に入った時だけって、駄目じゃん・・・・・・ソロで行くべきじゃなかったけど、余程レベルが上がってたんだろうなあ。
「ギィッ?!」
奪われた事に驚きつつも、怒りの顔でこちらを追いかけるゴブリン。だが、甘い。リンさんが外に向けてロケット花火を飛ばし鳴らす。勿論、威嚇ではない。
「ふっ!!!」
「ギッ?!?!?!?!?」
階段側に逃げた自分達の前から跳躍してきたグリムさんが槍を持って突貫一閃!無論、ゴブリンはそれをかわす手段もないまま、ダンジョン内で絶命した。
どういう事か?単純である。まず一つ目は例の部屋に炎の魔法で満たす事。これは攻撃の意味ではない。隠れているゴブリンを見つける為である。
(確実に姿隠してると思ったから揺らぎが分かり易い炎魔法が一番なんだよね。案の定、隠れる手段持ってたし)
そして、ゴブリンはアイテムを装備してるのではない。ゴブリンもダンジョンの一部。すなわち、これらのアクセサリーは拾っただけなのである。つまり、ゴブリンが身に着けていようと、落ちているのと同義ならば、シェルターの特性で拾えるという訳である。いくつ身に付けてるかは事前の情報で分かっていたので3人に拾ってもらったのだ。
(で、とどめに階段下で一気に飛び出せる技量持ちのグリムさんが息を潜めて、合図でゴブリン討伐と)
他のメンバーは階段近くに魔物が近づかないようにしつつも、階段近くの安全確保の為の戦闘でそれっぽい剣戟を出していたと言う訳である。
「まさか、本当にここまで知能を持つとは」
「多分、指輪の効果じゃないですかね?」
「ん?どういう事だ、カミヤ殿?指輪の説明にゃあそんな事書かれてなかったぜ?」
「統率ってのがミソですね、グリムさんなら分かりますよね、統率する為には?」
「ああ、なるほど知力が低いとお話になりませんね」
その為、おそらく、知力が低い場合は、知力をある程度まではサポートする性能があった・・・と思われる。コボルトやオークだと焼け石に水っぽい気もするけど、ゴブリンを倒した今となっては分からんけど、試したいとは思わんなあ、今は。
「で、このアイテムどうします?」
転生者特典とも言えるアイテムだ。しかも、本人は行方不明というより、文字通り、食われたのだろう。いかに転生者が蘇る可能性があるとしても食われてはどうにもならんだろう。ついでに言うと、多分、食った奴はあのゴブリンだろうしなあ。倒したから光にされちゃったし。
「難しい所ですね。王城にて封印が良いかもしれませんが・・・」
「制限が戦闘時のみとは言え、ダメージ無効なんざあ、どこもかしこも手が伸びるほど欲しがるし、姿隠しは暗殺に最適、指輪に至ってはテイマー垂涎の品と来た」
「多分ですけど、コレ持ってた転生者、死体が見つからんって事は完全死亡してますよね?」
一人は元だが3人のお偉いさんが頭を抱える。うん、まあ、入手してアレだが、ヤバい。ヤバいというのはいずれも悪用出来てしまうという点だ。情報が出回れば各国も動き、最悪街が火の海ってのもあり得る。
う~ん、まあ、大丈夫だろ、うん、提案してしまおう。
「この3つですけど、今回の自分の報酬代わりになりませんかね?」
とりあえず、3つは居間の方の押し入れに封印で良いだろう。なんか、勘だが役に立つ気がするんだよねえ。ちなみに、満場一致で承認された。まあ、下手な封印を行うよりは良いよね。
ところで、うち、なんか厄介になりそうなもの集積場所になってない?次のレベルアップでそういう保管する部屋作った方が良いんだろうか?
ちょっと長くなりましたが、ダンジョンでは起こりえる事故ですね。特に転生者はチートを持ってますが、まさかの事故や罠には勝てませんよね。神殿で蘇生は出来ても、肉体が食われてしまっては蘇生は無理ですからね、ダンジョン怖い。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 4
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 5