3話 1週間目の出来事
さて、初日から1週間経過した。その間、色々と判明した事がある。正確に言えば、いくつかは質問で知ってはいたが、実地で確認したとも言える。
「強度に関しては心配してた所もあったけど、問題無しっと」
魔物避けの加護の効果が切れた2日目から、何回かモンスターの襲撃があった。正確に言えば、見つけて襲ってきたけどシェルターを壊せずに諦めていったのだ。
最初は狼系。食べようとしたが歯が立たず、逆に牙と歯が折れた。一緒に居た群れの仲間が、飲み込もうとしたがこのシェルター、自分以外には持てないほどの重さになるらしく諦めた。
3匹目が爪で切り裂こうとした。結果、爪が折れて、逆にダメージを受けていた。どうも、前足があまりの衝撃に折れたらしい。
「で、4匹目の時に窓を開けてみたんだよな」
結果、向こうの攻撃は通らないが、こちらから投擲する物は窓から外に飛ばせば飛ぶらしく、七味唐辛子をかけて擦り込んだ石を投げたら、思わぬ物を飲み込んだように暴れた。
実際、コレがやれるかどうか次第でこれからの方針も変わりそうだったので、方針は変えずを確認出来ただけでも良しとする。
「そして、これも」
自分の手にあるのは件の狼の爪。これは外に出た訳ではなく、開けた窓から、見える牙に向けて手を出しただけである。実際はシェルターが吸い込んだようにしか見えないらしい。
確認はしたいが、外を考えると確認は出来ないので、向こうの世界で試した時の体験にもなるのだが、モンスターが居る中で手が引っかかれたり噛まれたりしなかったのが確認できたので良しとする。
「大体1メートル範囲ってとこかな?」
本当に手が届く範囲+少しといったところだろう。これで、素材回収ぐらいは出来ると確認も取れた。実地で試す事が出来た成果。これは大きい。
試しにそこいらにある草を引っこ抜くようにしてみた。やはり取れた。つまり、受け取りなども出来るという事だ。これも知れたのも大きい。
「家庭菜園は便利だな。収穫は手作業だけど、小麦の製粉は菜園にある機械に入れれば出来るのは感謝だ」
1日目に小麦があっても製粉どうするんだ?と思ったが、御丁寧にマニュアルがあり、そこに機械の使い方が載っていた。と言ってもほぼ自動で行われるから収穫して入れるだけという簡単なものだった。ついでに、実際の製粉の仕方まで載っているので読んでみたら、うん、こりゃ、自分一人では無理だわ。神様、ありがとう!
「で、ジャガイモは3日に1回、小麦は5日に1回収穫出来ると」
ぶっちゃけ、コレだけでもとんでもないのだが、引き籠ろうと思うなら、コレが一番最適解の食料チートっていうね。
何より、近くの町に行ってもまず身分証明が無い、金が無いの無い無い尽くしだ。食は確保できるというのは大きい。ちなみに、種芋と稲1本残せば再収穫出来るというのも実証済みだ。
「で、こっちはと……」
1日前に収穫した芋がもう目に見えて増えてることから目を逸らしつつ、芋とも小麦とも違う一角に行く。
投石検証の時引き抜いた雑草の一部に薬草があったので、根元にある種子から種を取り出し(何回か失敗した)、蒔いてみたら、こちらは根元ごと抜かない限り何度でも再生した。
つまり、全部根っこごと抜いてしまわない限りはほぼ無限に取れるという事だ。
「生える間隔は1日ごとで確定と…他の薬草系も同じか検証したいとこだな」
街に行くなら、コレが資金源になるだろう。後は肥料等を使ったら品質上がるかも確認しないとな。
鑑定 LV 2:様々な物のあらゆる事を鑑定する。レベルが上がる毎に得られる情報が増えていく。現在の確定情報:名前、効果(一部)
次に、鑑定のレベルが上がった。と言ってもそこら辺にある石、薬草、木々を鑑定しただけなので1しか上がっていない。どうも、シェルター内にある物、神様から貰った物やアイテム。家庭菜園に元からある物などではレベルが上がらないようだ。まあ、そりゃ、この世界の物じゃないからそうなるよね。試しに今収穫した薬草を鑑定してみる。
薬草:ポーションの材料になる。このまま使用する場合は傷口に張り付け、固定する。回復量は微々たるもの
こんな感じである。品質まではまだ調べられないけど。これ以上レベル上げるなら、一度この場を離れる必要ありだ。とは言え、コレだけ分かれば現状では十分とも言える。毒のあるなしぐらいは分かりそうなので助かる。
「よし、朝飯にするか」
収穫した薬草を雑草で作った紐で束ねて、居間に戻る。トースターで焼いてあったパンに、インスタントのスープ、牛乳、そして、ヨーグルトを食べる。
パンに関しては文明にして人類の利器、食パンメーカーがあるので何とかなりそうだ。ただ、ドライイーストが貴重なので入手手段が手に入るまでの繋ぎは考えておかないとな。
朝食をとりつつ、スマホを見る。こちらの世界は日本に似た世界なので大体の時間は同じらしい。時間は合わせてあったので、分かりやすかったのも助かっている要因だ。
「さて、と・・・」
ご飯を食べ終え、窓の近くに行き、スマホの動画機能をオンにする。流れるのは近くの町の様子。ここ1週間の物。一番街が見える窓の近くにスタンドと共に置いて撮っておいたものだ。
「お金は硬貨しかないようだな、確認する限りはだけど」
スマホの拡大機能を利用して、財布というか、袋を確認する商人や傭兵などが出している硬貨がこの世界のお金だろう。向こうで聞いた所によると、銅、鉄、金、プラチナだったかな?
銅10枚で鉄1枚、鉄100枚で金が1枚、金1000枚でプラチナ1枚。普通に考えると、基本は銅貨を持ち歩くのがいいだろう。幸い最強の保管場所があるしね。
「門は基本門番はいるけど、対モンスター対策っぽいか?他の国だと分からんけど、ひとまずは入れそうではあるな」
通行料などは関所からってスタイルなのか、それともこの街が独特なのかは分からないけど、入れるというのはメリットだ。
とは言え、このままというか、地球の恰好では入れそうにないので、神様からの贈り物の服とマントを用意し、動画の庶民の格好と見比べる。うん、少し上等だけど商人っぽいかな?
これなら特に隠す必要もないだろう。ただし、今の所はという言葉が付くが。
「で、次は看板の拡大と音声っと」
集音マイクで少し声が小さいが日本語である事を確認し、書き物も日本語っぽいことを確認する。ただ、聞きなれない物の言葉など聞ける辺り、ここは異世界なんだと思う。
そして、1週間ともなると噂話も出てくる。どうやら、自分と同じ転生者は国お抱えになったり、貴族になったりしているようだ。一部、犯罪者も出てしまったようだが。
「スキル封じ・・・か」
犯罪者は共通してスキル封じ・無効の結界などでスキルを封じた後、衛兵で捕り物をするのが常らしい。犯罪を集団で行うにせよ、単独で行うにせよ、対策は出来ているという事だ。
更に、捕縛された犯罪者はスキル封じの腕輪がつけられ、あらゆるスキルの行使権を無くすらしい。なるほど、チートスキルの隙を縫うやり方だ。
例えば、状態異常無効やスキル封じ無効のスキルを持っていたとしても、空間にスキル無効効果を持たせる。これは身体に起きた状態異常ではない、よって状態異常無効は効かないし、場その物がスキル無効ならばスキル封じ無効なども有効である訳がない。
腕輪にしても、発動する本人が発動がそもそも出来ないなら、スキル封じ無効が効くわけがない。魔法なりで寝かせれば後は腕輪はめるだけでアウトという訳だ。
端的に言えば、チート持ちを絶対支配者にしないための措置ともいえる。神様達が話さなかったのもその辺りがあるのだろう。
「なるほどね、上手く出来ている」
勿論だが、情報を集めれば手に入る情報であるし、犯罪を起こさなければ気にする必要はない。
そして、貴族や国のお抱えになった者達はその辺りを上手く利用した者もいるだろう。中には聞かされて仕方なくというのもいるかもしれないが。
「で、肝心のはと」
少し掠れて見えにくいが、ギルドがあるのも確認する。ホントにギルドと読めるだけしかないが、いくつかあるのも確認できている。
神様に聞いた所、職の数だけあり、お約束の冒険者ギルドは何でも屋という感じらしい。他は専門の職のサポートや支援、関連する依頼受付所のようなものであるらしいが。
「う~ん?」
まず、冒険者ギルドは無い。転生者に会ってしまう可能性は高いし、トラブルの可能性は大だし、自分のスタンスには特にメリットがあるわけじゃないだろう。薬草の売却先に身分証明にも良いかもしれないが、デメリットの方がでかすぎる。却下。
「商人ギルド辺りが適当かもしれないが・・・」
下手をすれば、交渉においては海千山千の猛者だらけだろう。将来的に店を持つ事も無いし、身分証明と商売が少し有利になるかも?ぐらいだ。いや、もしかすると、ブラック企業の一社員の如く働かされる可能性も出てくる。やはり、却下だ。
「同じ理由で漁業ギルドとかの産業ギルドも却下だよな」
スタンスに対し、メリットが少なすぎる。しかも、商売などを落ち着いて始める前提だ。旅をしたいなら、全くのメリットが無い。却下。
「とすると、当初の予定通り、配送ギルド一択かな?」
神様達から世界について聞いたときに唯一魅力を感じたギルドだ。もちろん、配送というからには信用が一番の所だ。
まずは地味に街での配送下っ端する必要があるだろう。それでも、元居た世界の引っ越し業務などの新人研修と変わらんらしいのでなんとかなるだろう。
むしろ、他のギルドの研修内容より一番マシまであると言うのだから皮肉なもんである。ちなみに、冒険者ギルドは規定数のモンスター討伐だそうだ。うん、無理。
「後はモンスターに関して」
先の狼系の他に周辺に住むのは牙がやけに凶暴なウサギ、武装したゴブリン、やけに牙と体格がでかいイノシシと言った所だ。
ただ、ゴブリンだけは滅多に出てこない。その上、壊せない、持ち出せないと分かると素早く撤収した。雑魚ではない、知能ある侮ってはいけない存在として改めて、認識しておく。
「とりあえず、現状倒す必要ないものばかりだからなあ」
とは言え、折れた爪や牙は多分収入源になると思うので回収しておく。なお、イノシシが突進してきた際、シェルターに当たった足が凄い音して折れて、そのまま動けなくなり、他の魔物に食われたのも少し前の話である。合掌。
ここから魔物同士が共闘する時は何かあるかもしれないと分かったのも大きい。必ずしもモンスター同士が仲が良い訳では無いという事が分かったからな。
さて、まだまだ引き籠るぞ!
一週間目。まずはシェルターの性能確認ですね。少しづつ、町に行く準備が整ってきました。さて、いつ行けるかな?
投石のレベルが上がってないのは投石でモンスターを倒していない為です。文字通り、 撃退しかしていないからですね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 1
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV 2