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25話 料理は愛情

「はい?」


あの事件から数日、自分はレインさんに呼び出され、内密にとの事なので、シェルター内で聞かされた話の第一声がコレである。どういう事かというと・・・


「冒険者ギルドの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を引き取ってほしいですか?」


「ええ、紹介者である私の従姉妹が相当焦っているので、せめて話を聞いてあげてくれないでしょうか?」


いや、しかし、なぜ自分?確かに少し噂になってきてはいるが、冒険者ギルドが保護すればいい問題なのではないだろうか?疑問は尽きないが、身内からの願いとは言え、ギルドマスター自らが頭を下げてくる案件だ。きっと、彼女の従姉妹も何か訳があっての事に違いない。


「分かりました。今日にでもお会いしましょう」


この判断がこの件の料理人にとっても、自分にとっても幸運だったのは後々知る事になる。



1時間後、レインさんが部屋に連れてきた二人をレインさんと共に入れる。驚いてはいたが、レインさんの説明で落ち着いた所で席に座るように促す。

片方は分かり易い黒髪ロングのいかにも日本人な女の子、スタイルもかなり良い。もう片方はレインさんと同じ種族で彼女に迫るスタイルの女性。従姉妹さんの方は聞いた所、ソロ専の冒険者らしい。


「初めまして、カミヤ殿。私はリィル・フラン。こちらは貴方と同じ転生者の・・・」


「あ、雨宮 凛です。リンと呼んでください」


「用件としては、彼女を保護して欲しいとの事ですが、冒険者ギルドや貴方の庇護下では駄目なのですか?」


「うむ。説明しよう、駄目とは言えないが彼女の凄さを考えると、あの追放した節穴共が取り返しに来る恐れがあるからだ」


むむ?どういうことだ?転生者集団が追放した程だ。よほど酷いのでは?と思ったが、節穴という部分が引っかかった。


「仔細をお聞きしましょう」


聞いていくと、自分と隣に座ったレインさんも絶句した。信じられん。そりゃ、節穴どころか、目がついてるのか?レベルの酷さだ。

どういう事かというと、まず、リンさんの話だ。彼女は転生時に、料理に関係した器用スキルと各料理スキルに全振りした料理人らしい。料理人として有名になった頃、転生者チームに雇われ、バフが付く料理を作っていたらしい。

実際、簡単な物を作ってもらったが、信じられなかった。こちらの世界の素材で作った料理の結果がコレである。



味噌汁:シンプルな調理で作った味噌汁。食べてから2時間の間、STRに+2%バフが付く。等級:C



異世界の素材に迫るどころか、超えてくる上に美味い。しかも、自分では成し得なかったこの世界の素材で作ってこの等級の高さ。その上で良く見て欲しい、2%のSTRバフが2時間も付くという所だ。

要するに2時間の間、支援魔法並みのバフが付いてくるという事である。やべえの一言に尽きる。


「こ、これで追放されたんですか?!」


「し、信じられません・・・・・・リィル、確かなのですか?」


自分もレインさんも思わず唸る程で、更に効果を鑑みれば、追放なんてとんでもない!と言うモノだ。


「追放された理由は単純なんです。今以上にスキルが上がらないのです。しかし、私はどうしても彼女がそこが限界とは思えないのです」


「リィルさん・・・」


なんでも、リィルさんは一度彼女のチームと組んでの合同クエストを受けた時以来、感銘を受けたらしく、彼女を見守っていたらしい。そして、追放を告知された時、彼女が自分を頼ってきてくれて、この王都でのシェルター持ちの自分の評判を聞いたという次第だ。


「あの、保護を盾にするようで申し訳ないんですが、スキル構成を教えていただけますか?」


「あ、いえ、大丈夫です」


「レインさん、お願いします」


レインさんは頷くと、オーブを使い、スキル構成を紙に次々書いてくれる。ふむふむ、各料理スキルがレベル3、器用な手先MAX、器用スキルMAX、大体の追放の大元になる料理関係はこの辺りだろうか?


「ん?料理スキルが3?」


「あ、はい。流石に取りすぎましたので、全部1からで」


うん。料理関係スキルがマイナーなものまであってずらりと並んでいる。むしろ1から3まで上げたのは凄い・・・・・・ん?


「え?2しか上がってない?もしかして?」


「ええ、それが原因です。会ってから半年以上、どれだけ料理を作っても2しか上がらない、つまり、今の3でこの料理の効果が続き・・・」


「上がらないから、つまりは今以上に効果が上がらないから、追放ですか」


リィルさんの言葉に頭を抱える。自分の想像が確かなら、追放していい人材ではない。それどころか大化けするし、気づいたら、確かに取り返しに来るだろう。丁度、シェルターも後少しでレベルアップであるし、丁度良いとも言える。


「ええと、リンさん、リィルさん、貴女達の身柄は自分が王剣証の名の元にお預かりします」


「ありがとうございます‥‥‥って、私もですか?!」


両手に花!という考えでは勿論、無い。自分の考えが正しければ、彼女にも危害が行く恐れがある。そこら辺もレインさんも交えて説明する。


「なるほど、確かにそうなりそうですね」


リィルさんも納得してくれた。もし、だ。リンさんのとんでもない才覚が判明して、リンさんだけを保護すると、今度は節穴転生者共はリィルさんを人質に何かを要求してくる可能性が高い。

ついでに、シェルターで内ではリンさんの数少ない親友とも言える人が居る方が良いだろうし、冒険者ギルドの依頼に同行で自分もマップが作れるので一石三鳥だ。


「で、自分の考えを実証しましょう。リンさん」


「はい」


「こちらに」


自分の考えの実証を行うために彼女を台所に案内し、買っておいたものを次々出すと、彼女の目が輝きだす。


「コレで、まずは日本料理、味噌汁以外を作ってみてください。おそらく、レベルアップするはずです。材料が足りなければ言ってください」


「は、はい」


戸惑いつつも作り始めた彼女を尻目に、レインさんとリィンさんを居間に連れてくる。まあ、悪いようにはされないだろう。

普通にこちらの世界には無い物だらけで驚きはされているが、異世界の技術ですと納得してもらったというか、して貰えた。凄いね、異世界というワード。


「しかし、彼女は同じ事を考えて、色々料理を作ってましたよ?」


「ええ。その考えは間違いないです。無いですが、そこが落とし穴です」


リィルさんの疑問は当然だ。リンさんも感じて色々作ったのだろう。だが、それでは大きくレベルアップは出来ない。何故か、単純だ。


「彼女が想像している、いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()からですよ。むしろ、量を作って3まで上げたのが凄い!まであります」


「と言いますと?」


対面に座る二人の大迫力乳を拝みつつ、続ける。


「例えば、レインさん。故郷や懐かしい味でもいいです。それを再現しようとしたとします。形や味も違うけど完成すれば同じ味の素材の材料でそれを作って、同じ!と断言できますか?」


「無理ですね。同じとは思えな・・・・・・あっ!」


「そう、そういう事ね!」


つまりだ、前に作ったこの結果を覚えているだろうか?



味噌汁:シンプルな調理で作った味噌汁。等級:D


異世界の味噌汁:異世界の材料で作った味噌汁。食べてから1時間中STRを上げる。累積は不可 等級:D



同じ等級でありながら、バフが付いたのは勿論だが、ここに大きな違いがこの世界の味噌と、通販で買った地球の味噌という点である。小さな違いであり、大きな違い、彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事である。

だが、料理したという結果で経験値が溜まり、レベルアップはするが、品を変えていっても段々、料理をした!という経験ではなくなり、経験値が無くなっていってしまったのではないだろうか?

逆に言えば、異世界というか彼女が想像する材料でちゃんと過程を経て作ったとしたら?鑑定と同じく、レベルがグンと上がるに違いない。


「多分、異世界の物を取り寄せるという考えがそのクランにあれば良かったんでしょうけど」


「というか、完成した味噌汁見れば、下手な支援魔法より優秀なのは見て取れるはずなのだがな」


うん、リィルさんの言う通りだが・・・


「多分、転生者の集まりだったのが駄目だったのではないかと。より高い成果を得るために料理スキルも上がらなければ役立たず!という考えであったのではないかと」


「そういう事ですか・・・・・・ここだけの話ですが、彼女は追放前に肉体関係に迫られかけたと聞いています」


おいおい、マジか。それも断ったのも追放に一助したのだろう。そのクラン、自分的にブラックリスト入りだな。


「そう考えると、決断早く、リィルさんを頼ったのは幸いだったかもしれません」


調理に集中している彼女を見つつ言う。彼女的には頼れる最後のコネに頼ったつもりなのだろうが、まさに危機一髪だったし、自分が王都に居なければ、やばい事になっていたのは間違いない。 


「出来ました!レベルが1上がりましたぁ!」


「おぉ!やったな、リン殿!」


あ、やっぱりか、量は作ってたので塵も積もればで、今正式な素材で作った日本料理で丁度上がった感じかな、どれどれ?



鯛のアラ汁:しっかりと出汁から取ったアラ汁。食べてから3時間の間、STRに+5%バフが付く。 等級:B



「ワオ」


クランの奴等が切り捨てる理由になったパーセント表示。これを馬鹿にして追放理由にしたのだろうが、自分はそうは思わない。おそらくだが、このアラ汁の場合、該当するSTRの値の5%をプラスにすると考えて貰いたい。

そうなると、パーセント表示が低いバフとは思えないし、3時間も保つと考えれば規格外である。しかも、このアラ汁美味いのに、高い効果のみに着目してたのだろう。しみじみと、アホな奴等だなあ。


「レインさん」


「はい、従姉妹殿共によろしくお願いします」


「よろしくお願いする、カミヤ殿」


「え?え?」


リンさんが混乱しているが、うん、自分は美味しい物と華を、2人は安全が手に入るから良い取引だよね、うん。そして、アレだ・・・・・・


(無自覚チートって怖ぇ・・・・・・)


自分もお前が言うなと言われるだろうが、彼女のこれから先の成長に畏怖も覚えるのだった。うん、後は後世の評価に任せよう、そうしよう。

ヒロイン枠がついに2枠参戦です。お待たせしました!ちなみにヒロインはまだ増える予定です。バフが少ないからって、チートスキルが多数居るクランから追放されるのはお約束ですよね。



現ステータス


NAME


シロウ・カミヤ



SKILL


安全シェルター LV 3


健康的な体 LV MAX


投石 LV 1


鑑定 LV MAX


鍛冶 LV 5

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