17話 旅の道程とお約束のトラブル
さて、旅となると流石に隠せないが、もう隠す必要もないので、まあ、当然ではあるが、小さな車が視線浴びまくりな訳である。スタンピード戦で知ってる人いるかもしれない冒険者はともかく、一般市民や商人、果ては貴族っぽい人まで走ってるシェルターをチラチラ見てくる。
「最終的には、あっ、魔法の道具か?的な目で済むファンタジー世界すげえ」
シェルターを操作する部屋。全面モニターにゲームで使うゲームパッドと車のシートっぽいのがある部屋で呟く。操縦席に関してはサービスという事で、シェルター形態を取ったときに自動的につく部屋となっている。まんま車の操縦席でも良かったのだが、意外と面倒だからね、ハンドル操作。
まあ、操縦席でなくてもステ画面でも操作(スタンピードの時がそうである)出来るが、こういう部屋があるから、ゴーレムというか、メカっぽいと言えばそうなるのだろうか?
脇には通販で買った小さなテーブルにメモ帳とボールペン、スマホと飲み物を置いてある。メモ帳には出発した時間を書き、気になった物も時間と一緒に書いていく。
「とりあえず、出発してから4日目。地図見る感じはまだ先かな?」
スマホで取っておいた地図を見つつ、呟く。普通の馬車なら大体、1週間前後らしい。街道から外れず走っているがこの車、小さいから、もう少しかかるだろうか?どこかに通じてるであろう小道も気になるが、まずは真っ直ぐ王都に向かっている。いや、実際に小道の方も行ってみたいけどぐっとこらえる。
無論、エンジン全開にすれば短縮は出来るが事故が怖い。流石に人を某無双ゲームみたいに飛ばすのは御免だ。万が一という事もあるしね。まあ、慌てる事もないし、ゆっくり行こう。
とは言え、流石に日が傾き始めると、周りもだんだん野営の準備が多くなってくる。早い所だと昼が少し経過ですでに用意入ってる所もある。
「んし、今日はあそこら辺が良いかな?」
シェルターを止めたのは商人が複数で野営地としている所の近く。聞いた話、街道近くでは結界石がある。その近くなら割と安全らしい。アレだ。デーン!って感じで光ってふよふよ浮いてる石。う~ん、ファンタジー。
大体50~100メートル前後が範囲らしい。範囲が広いと言うより、水源の確保が目的らしい。結界の範囲内には川から水道を通した溜め池が必ずあるそうだ。そりゃ、野営で水無いと困るよな。
結界も万能ではない為、何回か兵士の巡回はあるが、それ以外の時は野営している者達の警備が重要となるそうだ。そら、兵士も無限じゃないから仕方ない。だからこそのこの集まりっぷりとも言える。
「まあ、あんま必要ない訳だが、自分は」
ステータスウィンドウを操作して、車から家。完全に見た目ドールハウスサイズのカマクラかな?まあ、その形態に戻す。驚きの視線を感じるが無視。メモに到達時間を書いたら、居間に戻る。
朝の内に収穫したジャガイモ、通販で買った米等を用意し、肉じゃがと白飯を作り、お盆に乗せて中庭でもぐもぐ食べる。う~ん、風流。
「うん、まあ、なんかじろじろ見に来てる人居るけど、まあ、いいか」
中庭の空と言うか、外を見ると覗き込んでる人の顔が見える。まあ、向こうからは見えないが、小人になった気分だな、コレ。匂いとかも外に出はしないから、多分、好奇心の方だろうな。
「お?」
なんか、貴族様の護衛っぽいのがシェルターを持ち上げようとしている。う~ん、お約束。まあ・・・
「そう簡単にはいかん訳だがね」
マッチョっぽい奴がこんなの簡単だぜ!とばかりに持ち上げようとしたが持ち上がらない。顔を真っ赤にするが持ち上がらない。魔法使いがバフを掛けたても、持ち上がらない。
まあ、中に影響は無いが、景色が震えるのは勘弁してほしい。後、マッチョの顔と筋肉のドアップも。
「う~ん、トラブルにならないと良いんだが」
まあ、とは言え、現状ではこの手の奴を何とかする手段はない。なので、何もしないのがお約束だわな、無視するに限る。ん?自分とは関係ないとこでなんかざわついてないか?
『ゴブリンロードが出たぞー!』
『マジか、こんなとこに?!』
うわ、お約束中のお約束過ぎる。結界で安心してたら、でかい魔物の襲撃とか。誰や、フラグ建てたの?
ステータスウィンドウを操作して、車に戻し、操縦室に移動。まずは机にご飯とおかずを置く。操縦室の全面モニターを見ると、ゴブリンをそのままでかくして鎧と剣を持った奴が結界に攻撃しつつ、ゴブリン達に指示を与えている。
よく見ると、ゴブリン以外にも猪や狼、犬なども居る。調教された魔物かな?あ、鑑定しとこ。この時、ある物を鑑定しなかったのを後悔するのだが、ま、それは後々に。
「ロードを筆頭に結界をまず殴ってるな。て事は狙いは・・・」
間違いなく物資やまあ、女、だろうな。しかも、兵士が居ない時、つまり巡回時間を熟知した上での襲撃か。こりゃ、撃退しないと寝れんな。仕方ない、行こう。
リモコンを握りエンジンを始動。狙うのは一番目立つがその腕力による大剣の暴風故に、一番殴らねばならない結界を破壊しようとしてるが誰も近づけないロードの右足を正面から!
「よっと」
『ゴァアアアアア?!』
その威力はスタンピードで折り紙付きだ。思わぬ攻撃を受けたロードが後ろに倒れ込むと魔物の一部を押しつぶす。
そして、その音や光景は魔物達は勿論、護衛達も呆然とさせる。まあ、まさか、参戦するとは思わんわな、玩具みたいな魔道具(外見)が。
「敵の動き止まったんだから、攻撃!」
操縦席を離れ、シェルターの操作はステ画面に戻し、居間に戻り、中庭に移動して言う。はっとなる護衛達、一部がシェルター見て呆然としてるが、後は知らん。
冷蔵庫から追加の飲み物を取り出しつつ、ステ画面の映像を見守る。ロードが起き上がった時に追加で体当たりするつもりだったのだが、あれ?
「ロード、起き上がってなくない?」
護衛達もこちらを気にするのは一時止めにして、生き残っている他を倒しつつ、ロードを掠り傷程度だが斬ったりしているし、矢も刺さったりしているが、起き上がる様子が無い。
流石に痛みは感じるだろうし、斬られた回数は1~2回ではないから、騙して悪いがって事はないはず。なんだ?
「まさか・・・?」
ダッと、中庭に向かって駆け出し、外に向かって、自分の予想を言い放つ。
「ロードは完全に気絶してます!今の内に大剣使いの方、全員で首を!」
どういう事か?は簡単だ。ゴブリンロードは兜を被っていた。おそらくこれが原因だろう。兜とは頭を守る物、だが、ヘルメットではない。
ぶっちゃけ、刃物などの頭部への攻撃、不意打ちから頭を守るための物である。衝撃に関してはあまり考慮されていない事が多い。つまりだ・・・
「完全に気絶状態だって事だ」
後ろに倒れて後頭部打つだけならまだしも、物凄い勢いで後頭部をぶつけた上に、兜のお陰で脳みそもさぞ揺らされただろう。
しかも、倒れた先は整備されている草などのクッションが無い土や石の上だ。更に倍率ドン!である。体にモンスタークッションがあった分、頭は何度もバウンドしただろうしなあ・・・
「むしろ、首が折れてないと言う頑丈さに驚きまである」
とりあえず、ロードが首を斬られて絶命した事で、大勢は決しただろうし、後方に下がる。司令塔であるロードを失ったゴブリン達は獣達に何か言い放ち、森へ逃げていった。
足止めを任せたのか、獣達が向かってくる。やはり、頭良いな。しかし、ロード、すなわち司令塔を失ったにしては判断も速いし、引き際が鮮やかすぎる。う~ん?もしかしてだけど、もしかするか?
「よし」
まずは操縦席に移動。ステ画面を出し、タイヤの仕様をオフロード仕様に変更する。そして、まだ戦ってる護衛達を尻目にゴブリンを追跡する。
まあ、予感があるのだ。と言うより、コレはもう確信に近いのだが、まあ、まずは追跡だ。予想外れていれば良い事だしね。
「うん、知ってた」
異世界のお約束ですよ、お約束。逃げた先にはゴブリンの集落があった。結構広いがまだ村程度なのが幸いか?茂みからスマホの拡大機能を使い偵察する。
家っぽいのが6つぐらいと洞窟。いざという時の逃げ場かもしれない。コレは流石に護衛達に討伐は無理臭いな。撤収して、近隣の村か宿場街から伝言を出して討伐部隊を組まないとダメだろう。うん、無理は良くない。
「撤収と」
様子見た感じ、最近出来た物で、人が連れ込まれた様子なども無いので撤収する。おそらくは準備を綿密に進めて、今日が初めての狩りだったんだろうな。
なお、事を聞いた商人や貴族達が慌てて、先にある街か村へ向かおうとしたが、流石に護衛達が止めた。結界があるとはいえ、夜だ。危険すぎるからな。で、まあ・・・
「うん、知ってた」
翌日から、しばらく、兵士達が来るまでの監視役と案内役として、自分が残る事になったのも必然だろう。まあ、巣の方は準備万全且つ、大物であるロードがおらずと言うか、多分キング候補だったロードが死んだ事でスムーズに殲滅できたから良いけどね。
異世界と言えば、旅のトラブル、貴族、モンスターの襲撃はお約束!本当はオーガ辺りにしようとしたんですが、そうなると、レベル高い道になっちゃいますからね、王都への道が、うん。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 3
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV 4
鍛冶 LV 3