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15話 異世界のお約束(モンスター暴走)  後編

「うわあ・・・・・・・・・」


私は何回かスタンピードに遭遇したことがある。だが、この光景を言葉にするなら、上記の一言しか浮かばなかったのだ(とある、配送ギルドの一員の日記より抜粋)




さて、問題である。以前、突進してきたイノシシが停止した物体であるシェルターに突撃したのに吹っ飛んでいました。それが勢いよく突進してくる相手、更にこっちもスピード上げてぶつかればどうなるでしょう?

ちなみに手のひらサイズのシェルターの当たり判定はバスケットボール大とする。


『ギャアアアアアア?!』


答え、吹っ飛んで後列を巻き込むである。そして、吹っ飛んで倒れたモンスター達の上を止まれないモンスターが倒れ、ドミノ状に倒れていく。それを繰り返していく。

すると、その影響で、小さい、あるいは軽いモンスターは圧し潰されていく。それでも進むの止めないから、倒れた魔物でこけて、押し合い圧し合いになり、被害はどんどん増えていくのが見える。


「全隊、突撃!」


そこをオランジェさんが率いるギルドチームが強引に前を出ようとする魔物を潰していく。勿論、モンスター達も構わず突撃しようとするが、ボーリングのピンのように倒れてくる前列が邪魔になり、動けず、そのまま蹂躙される。

意外と思われるが、この前から倒れてくる状態と言うのは突進している、つまり前に行こうとするほど難しい。まして体格が違う、大きさが違う()()()()()()()()()()()()くるのだ。

どれだけ野生の本能や勘があろうとも避けるのは難しい所にその倒れ込んでる魔物の後ろからは武器を持った兵が居るのだ。


「よし、全隊後退!」


ある程度倒し、モンスターが持ち直しそうなところで、全員が後ろに下がる。倒されたモンスター達、潰されたモンスター達を踏みつぶし、やってくるモンスターを・・・


「どーん」


勿論、また勢いをつけて迫るモンスターの先頭に突撃を繰り返すだけの簡単なお仕事です。いや、マジで。他の部隊の方々、こっちポカーンと見てるもん。うん、こんな雑な倒し方ですいません。でも、最適解なんです、許して。


「ガァアア!」


「おっと」


それでも、時には捕まる、まあ、捕まえた腕が突撃でえらい事になってるが指が折れても、腕が曲がってでも捕まえる奴は居る。痛みはあまり感じていないからこそ出来る芸当だ。だからこそ、モンスターと言う存在を人の常識では勿論、自分は見ていない。


「そいや!」


「ガブルゥルルルルルルルル?!」


獣人系モンスターの中庭から見える口の中めがけて作っておいたハバネロ水風船をぶん投げる。喉の奥で割れた、とてつもなく辛い水が相手の喉を焼く。そいつはシェルターを手放し後ろに卒倒する。ゴーレムみたいなモンスターが居ないのは幸いである。というか、オランジェさんにお願いして、見つけた場合は真っ先に潰してもらっている。ゴーレム系だけにはコレ効かないからなあ。

ハバネロ水風船により、手から放されたらバックして、安全を確保した所で再び、突進。命が軽いなど言ってる場合ではない。負ければ、住む所も無くなるのだ。まずは生き残らないとね。


「全隊、再突撃!」


再度オランジェさんや他の部隊の隊長が率いる部隊が突撃し、こちら方面の敵部隊の第一波はほぼ全滅に近い状態となった。残っている敵も死骸に足を取られたり、空に居る敵も、後衛部隊が無傷な為、雨あられと飛んでくる魔法や矢を避けれずに倒れていく。

大軍は戦略なりを具現化しているとも言えるモンスタースタンピードは確かに強力だ。だが、同時にこの暴力は最大の欠点を常に持つ。


「止まらない、いや、止まれないんだよな」


この世界のスタンピードは説明によると、モンスターは一切の理性、知性を放棄し、その分のリソースを攻撃、あるいは突撃に特化させ発生しているらしい。

その根拠の話として、とある時のスタンピート時に異様に強い下位ランクモンスターが居たらしい。だが、所詮は下位ランク。そう考えた兵士は普段はそのモンスターの攻撃では傷がつかない鎧、盾を新調し迎撃した。傷つかずに迎撃できる・・・筈だった。

結果は、まあここまでの話を総合すれば言うまでない。無惨にも鎧は切り裂かれ、盾は潰され、本人は、ってやつだ。


「故に、部隊単位による迎撃という形が取られるようになった」


だが、それは同時に敵の大きな欠点を発見するに至った。敵には大幅な攻撃力アップがあるが、その分理性が無い。故にわずかでも攻撃により突撃が止まったり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()してしまうのだ。

故に定石はバフを山盛りにしたタンカーで止める。あるいは、魔法バフを山盛りにした魔法職による火力での先頭蹂躙による戦線の押し上げ戦術だ。


「けれど、それも徐々に押される」


まあ、当然の帰結として、戦術は初期の頃は有効だったものの、数を増やしたスタンピードにより、押されていく。オランジェさんによると、前のスタンピードはそこら辺がかなり酷かったらしい。

何せ、人が多く居る場所にめがけて突進してくる。人が多く居る場所、つまり、目の前の兵に興味を持たず、街に突進してくるのも居るのだ。本人達もかなり奮戦したそうだが戦術の欠点、すなわち、指揮系統の乱れる恐れの事も忘れ、目の前の相手以外の街に向かうモンスターにも攻撃してしまった為、ヘイトが中途半端に増えた結果、兵も街も被害が大きくなったそうだ。

だからこそ、前の教訓として、街の防衛にまず回るという事が第一とされたのが今回の戦い方、街を背にした戦い方らしい。


「が、まあ、これで見直しもされるよな、多分」


そう言いつつ、次は中庭に出て、買っておいたロケット花火を点火し、外へ飛ばす。何回も検証した上での効果ありだから1回だったな。花火は中庭から外を出て、飛んで行くと空でパァン!と鳴る。


「来ました!効果ありです!魔法隊、詠唱開始!」


オランジェさんが言うと、話が通っている各ギルドの魔法隊が前に出る。一見は無謀だ。しかし、自分の勘が当たれば、これからはスタンピードは脅威にならないはず。さて、行けるか?

念の為、魔法隊の後ろにはすぐスイッチ出来るようにタンカー部隊が待機しているが、果たして?


『ストーンバレット!』


前に出た魔法隊がストーンバレットを撃つ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。よし、いける。狙い通りだ!


『ストーンバレット!』『ストーンバレット!』『ストーンバレット!』


スタンピード中のモンスターは基本、物理が伴うストーンバレットは意に介さない。何故か?それは、魔法が単品であり、痛みを理解する事をしないからだ。

相手からすれば、大人が子供から一握りの砂を食らっているだけだ。ダメージになるはずもない。


「だが、それが連打されたらどうかな?」


そう、誰しもファンタジー小説を読んで思った事だろう。()()()()()()()()()()()()()などおかしいと。

やる事は簡単だ、ストーンバレットが飛んだ瞬間、次のストーンバレットを飛ばす。更に敵の足が止まるまで次のストーンバレットを撃つ。

まあ、例えるなら、無限に弾が出るバルカン砲で相手が死ぬまで当て続けるようなものだ。更に、何故ストーンバレットなのか?それはこの魔法の良い所があるからだ。


「ストーンバレットの基礎を考えれば、一番良いんだよなあ」


まず、ストーンバレットは 石つぶて を前方に複数撃つ魔法だ。石とは言っても野球ボールよりでかく、中には先が尖り槍状になった物も飛ぶ。

でかい石つぶては頭に当たれば脳震盪を起こすし、体に当たればわずかなりとも後ろに下がらせることができる。槍状の石が当たれば、出血ダメージも期待できる。


「では、何故、それが今まで駄目だったか」


単純だ、バルカン砲と例えたが、バルカン砲の弾丸1発だけでは致命傷にならない生物がスタンピードの一匹とする。それを集団に対し、均等にしかバルカン砲が撃たなければどうなる?止まる訳がない。

だから、集団で交代で撃つ。1発ではカスダメージだが通るならば、相手が倒れるまで均等なバルカンの弾を当て続ければいいのだ。

魔法自体は初級魔法であるがゆえに熟練の魔法使いなら連打が可能だ。集団戦において魔法使いは1人ではない、そこからさらに発展したのが今回のやり方である。


「いや、しかし、なんだね、ここまで嵌まるかね」


単純だ。人が居る、軍が居る、要は魔法使いは通常時より大勢居る。更に背後に街があり、敵はそっちに目掛けて分かりやすく突っ込んできてくれる。ならば、ストーンバレットが有効であるか分かれば、もう後は外から撃ち続ければいい。

塵も積もれば山になると言う。撃ち続けた石の中で外れた石や当たって倒れた魔物の死体は足枷のような形になり、魔物の移動を阻害し、更に魔物は数を減らしていく。


「更にもう一つの利点。これは他の属性には無い。絶対にだ」


『魔法部隊、石の山にめがけて、ストーンウォール!』


外れたストーンバレット、命中後に細かく砕かれ地に落ちた石粒、その山は敵が来ていた事への目印にもなる。そこに何人もの魔法使いが壁を形成したら?そう、石の山は遠くから見た時の目印にもなるのだ。同じ初級魔法のファイアーボールやウィンドカッター、アクアボールには同じ事は出来ないだろう。


『攻撃部隊、突貫!!!』


理性が無い魔物達はこれまで行けた所が容易に行けなくなると空いてる所から行く。寿司詰めの様になってでも行く。そこを攻撃部隊が攻撃し、魔物達の屍が壁になり、更に足が鈍る。そこへ・・・


『魔法使い部隊及び弓隊、総攻撃!』


遠距離部隊が後方の数を減らす。壁にヒビが入りそうなら一度退き、また、ストーンバレットから再開する。これで戦線は上がっていく。後は全滅か終息まで待てばいい。

終わった・・・・・・と思いきや、凄い咆哮が地を揺るがした。あ、これ、お約束のやつかな?


『ゴァアアアアアアアア!』


巨大なドラゴンが地に降り立った。普通ならスタンピート後に出てくるなよと、普通ならば思う、そう、状況が普通ならね?


『ゴア?』


ドラゴン、多分、俺達の世界で言うところ、レッドドラゴンは困惑していた。まあ、そりゃそうだ。本来ならば、炎を吐けば人が焼け、尻尾を振れば吹き飛ぶはずの人の視線が自分を巨大な素材としか見ていないとなればなあ、うん。まあ、運が悪かったって事で。


『全隊、突撃ィイイイイイイ!』


『ギャァアアアアアアアアアアア?!』


うん、まあ、そらね、序盤こそ敵を街門から離すのに派手な魔法使っていたが、威力も高いので人的被害無し、中盤~終盤までは上の戦術で被害疲労とかも無し。そこへのこのこやってくる()()()()()()()()()()()。そりゃ、皆、本気でどつきに行くわって話です、うん。ま、これでスタンピードも一件落着で、旅に行けるかな?

まあ、楽にとは言えないけど、被害が無い状態で、屋内ならともかく、屋外に出てきたドラゴンって、格好の餌食ですよねというお話。いよいよ本番の旅の工程に入ります、あるか、安住の地?!でも、次回は外伝です。視点はあの人しかいないでしょう。



現ステータス


NAME


シロウ・カミヤ



SKILL


安全シェルター LV 3


健康的な体 LV MAX


投石 LV 1


鑑定 LV 4


鍛冶 LV 3

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[気になる点] うーん、主人公がどこからどういう視点で見てるのかちょっとわかりづらい・・・オレだけかな
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