外伝12 十数年後の未来の話
僕の名はフェリオ、父であるカミヤ・シロウの子供の中で長男だ。職業は、その、ギルドマスターをやっているのだが、そのギルドの名が【ギルド・シェルター】である。知る人は知る移動式ギルドであるのだが、これが結構変わっている。いや、もう少し言えば、周りからの評価は変わりすぎているシェルター・・・らしい。
「おはようございます、お兄様」
「おはようアーラ。今日の書類は?」
サブマスターであり、妹のアーラがマスターの執務室、元応接間らしい所で迎えてくれる。
「こちらです。今日の移動はラーンとリィンがやってくれるようです」
「そうか。では、仕事に掛かろう」
「はい!」
そうそう、どう変わってるのかだったね。それはギルドと住居が一体化した超小型シェルター。父であるカミヤ・シロウの自慢のスキルの内部にあるギルドだからである。操縦は父と母親達、そして、その子供のみが出来る。最近、両親は全員隠居宣言したので、シェルターを出してるのは父だが、運営は自分達に託されている。そんなギルドである。まず、ギルドは移動しねえよ!と言われても、そのなんだ、困る。
昼、一旦業務が片付き、午後に備える為にシェルター内の食堂で昼食を取りに行く。
「お?いらっしゃい、兄さん」
「やあ、リュウ。皆は?」
「少し遅かったね、皆食べ終えて行動中だよ」
「それは残念。じゃあ、ぼくもアーラも日替わりで頼むよ」
「あいよ!」
先程まで誰か居たであろう席をドローンが片付けている。その皿を妹のコロンとリンネが受け取って、洗浄している。
「お待たせ。今日は唐揚げ定食だから、兄さんも姉さんもウーロン茶で良いよね?」
「ああ、問題ない」
「ありがとう」
食堂は父の子供達数人が運営している。少し前まで母の一人であるリン母さんがやってたんだけどね。お陰で自分も含めて、料理スキルMaxである、なお、父は、その、うん・・・・・・まあ、シェルターの管理者だからね、だからね!並よりは出来るのだが、僕等が追い抜いたら打ちひしがれてたなあ・・・・・・まずくはないんだよね。
夕方、ギルドルームに行くとロン、ナツ、ギルトの近代兵器男3人衆が依頼完了手続きをしていた。受付にはキョウとヒメが座っている。ギルドマスターとしての確認ついでなので、声をかける。
「やあ、仕事は終わったのか。今回はどんな依頼だっけ?」
「増えすぎた猪狩りの支援。シェルター内部からだけど」
ロンがそう言うと、ここに居る全員が苦笑する。まあ、基本怪我しない様にと外に出ることは無いから、両親の過保護は普通のレベル超えてるけど、内部から撃った方が殺気を感知されず仕留めれるから、合理的なんだよね。
「報酬は今日確保出来た猪肉の一部と鉄10ですね」
「ん~、他だと文句言われるからうちに来たってとこかな?」
今日の話を聞くと、ほぼ半日拘束でコレだから、相場では安めである。ん~、後で依頼内容の精査とギルド通信室で色々報告しとかなきゃだな。3人はこの後、この猪肉を調理して貰うつもりらしく、早足で出ていった。味噌だ!醤油だ!と聞こえてくるが、なんか、自分達は産まれは異世界なのに父さんから聞いた日本人みたいになってないか?いや、自分もそうなんだろうけど。
「あ、兄さん、珍しいね。おっと、ナオト、リュート、帰還した。こちらがなめした兎の毛皮だ、確認してくれ」
「ダンジョン部屋依頼か、何処から?」
「鍛冶ギルドからです、兄さん」
「あ~、そろそろ、初心者用の毛皮の盾用の毛皮が無くなる頃なのか」
納得する。父さんが作った毛皮の盾がアレから更に改造され、うちの売り物のメインの1つである毛皮のスモールシールドがシェルター内のダンジョンや普通の街の外の草原などで獲れる兎の毛皮で作られるようになったのだ、価格も安くなり、初心者冒険者に需要が上がったのだが、街の方では毛皮の大量確保は難しい。何故か?他のモンスターも出るのでてんやわんやになるからである。どこかで兎しか出ないダンジョンが出れば別であるが、その気配無いんだよね。だから、うちに依頼が少なくなる度に来るのである。まあ、お陰で儲かってるし、お小遣い稼ぎにもなるけどね。
「あ、兄さん、こんばんわ・・・かな?」
「やあ、ヤマトにミコト。依頼帰りかい?」
「ええ。今回は毒消し草の採集でしたから、内部で済ませた所です」
挨拶してきたヤマトに聞くと、ミコトから依頼内容が話される。あ~、毒消し団子か。減ったとはいえ、まだまだ毒殺の他に毒を持ったモンスター対策などがある為、安定して取れるシェルターの毒消し草は需要があるのだ。
「一応、多くのギルドで栽培はしてるはずなんですけどね」
「農地を抑えるのが難しいと言ってましたが」
「農地も限りあるからね、毒消し草だけで埋めるのは流石にね」
ファナ、ヒサメ、アミの3人の現代武器科学者女チームがやってきた。普段はご飯の時以外は籠ってるのに珍しいな。
「なんだ、珍しいな、今日は夕食は早めだったか?」
「いやいや、納品です、兄さん。戦車のエンジンパーツ」
「ああ~」
自分の言葉にファナが代表で言う。中ぐらいの木箱が複数。となると、戦車愛の街の依頼かあ。と言うか・・・
「多くない?」
「これでも大部分、母の方に依頼が行ってるんですよね」
マジか。やはり、まだまだ自分達は親の領域まで至ってないなと改めて思う。勝ってるの、父が出来ない料理だけじゃね?あっれ―?
夜、晩御飯の時間は親も含めて、どれだけ忙しくても全員で取る。取るはずなのだが・・・
「アストレア様、親父達は?」
アストレア様はこの世界では最高位の女神らしい。いや、らしいと言うのも、自分達にとっては成長を見守ってくれてる御婆ちゃんみたいな人なんだが・・・後、親父達については大体察しが付いてるので、まあ、確認と言うやつだ。
「貴方達の新しい弟妹を作ってるんじゃないですかね?」
『ブーーーーーッ!!!』
いや、もう予想通りだけどさあ。何してんの、何してんの、親父ィ!!!
「す、すみません、私が新しい弟欲しいなあって言ったから」
リィンがぽつりと呟く。
「すまん、俺もうっかり新しい妹が欲しいと言ったから」
ギルトがあちゃーと言う顔をする。2人とも、ふと呟いたか、冗談のつもりで言ったんだろう。しかし、自分達を生んで早十数年。また燃え上がったって所だろうか?
「フェリオちゃんの考えてる通りだと思うよ」
アストレア様がにっこり笑う。考え読まれまくってるな、そら、ちゃん付けがいまだに取れない筈だ。あっ、そういえば・・・
「アストレア様、父との御成婚確定、おめでとうございます!」
『おめでとうございます!!』
「ブーッ!!!」
何で知ってるの?な顔されるけど、舐めないで頂きたい。そこは我々、父の子供。子供の頃は神殿に居る事が多かった彼女が、ここ数年、父の部屋に行くことが多かったのを見れば、ねえ?そろそろかな?と思ってたのもあるし・・・
「我々、鑑定が神眼レベルになるほど鍛えられましたから」
で、全員から見える女神様の鑑定結果がアストレア・カミヤと書かれたのがちょいちょい見えていたので、確定するまで待とうという事になり、今日の母達の燃え上がりで、あっ、なるほどねと確定したって訳だ。
「ぐぬぬ。ま、いいわ。貴方達の新しい弟妹、私からも産まれるかもだから、よろしくね!」
「はい!」
そうして、夕食は賑やかになり、自分の一日はギルド通信室での報告後、「また、あいつか―!」という父への評価を聞いた後に終えるのだった。うん、まあ、普通に過ごしてる一日だったな!そうだと言ってくれ・・・・・・
まあ、長らく住んでればそういう事もあるよね!と言うお話。
後、次の外伝で、このお話は〆ます。次回、本当の最終回!