120話 真実の解明と芸術大陸について
「お騒がせして申し訳ない」
『いえいえ、この街ではかなり日常茶飯事ですから』
笑顔で仰るのは図書館の受付嬢である亜人女性のミリィさん。図書館内でも割とギラついた視線を感じるが、この人に一睨みされると霧散する。職務に全うする感じなのかな?女性陣から、交渉役の補佐として一人ぐらい付けとけばよかったかなあ?
『それで、本日の御用件は?』
「はい、ある本を閲覧したいのですが・・・あ、こちら紹介状です」
こういう時にコネは大事と思う。紹介状の主はライさん。自分が転生者である事も書いてある。察してもらうのはそれが早いからね。予想通り、何を求めに来たか得心いったようで、自分の言葉を待っている。まあ、多分、その予想とは違うもの頼むけどね。
「神々の記録が載った本を探してるんですけど・・・」
『え?転移魔法・・・・・・いえ、失礼しました』
思った通りだ。まあ、転生者と聞くとまずこれ、つまり転移魔法関連借りるだろうしね。まあ、確かにその辺も興味あるが、自分達が調べたい事はちょっと違うのだ。神々について、もう少し正確に言うならば、自分達が調べたい全てである。そして、それは・・・・・・
「よし、じゃあ、調査開始」
念の為、ミリィさんにこのシェルターの特性を話して、内部で読むことを許可してもらう。神々に関しての本はメジャーからマイナーまで揃うと結構な数だが、流し読み程度で良いのでサクサク読んでいく。で、結果・・・・・・
「思った通り過ぎる・・・・・・いや、だからか?」
開けてみたら大正解と言った所だろうか、寸分の狂いもなく自分の考え通りの答えに達した。これは、次のレベルアップに合わせて、アレ取らなきゃだなあ。おそらく、そこが旅の1つの終着点になるだろうと予感していた。
で、予感していたのとは違うが、それから数時間後、自分達はとある事件に巻き込まれていた。いや、正確にはイベントに巻き込まれていた。
「人間って逞しいと思う」
『 せ や な 』
外で行われてる光景を見た自分達は一様に呆然としていた。なんでってさあ?
「開拓大陸じゃないんだからさ、普通、こう、ドラゴンの襲撃って一大イベントだと思うんだ」
用事を終えて、外に出たら、また追いかけっこと思うじゃん?なんと、ちゃんと空を飛ぶ緑色のドラゴンが襲撃してきて、うぉ!避難や迎撃急げって思うじゃん?
「まず、閃光と爆音の玉が大量発射」
リィルさんが中庭で気づいて遮音、外の風景を咄嗟に遮断しなかったらヤバかったわ。爆音と閃光でドラゴンが郊外に墜落。そして、群がる芸術家共。え?変なルビが付いたって?間違いないもん。だってさあ・・・
「ドラゴンが奇麗に切り裂かれて、解体ナイフを使うこともなく、素材になっていく光景・・・・・・」
何が怖いって、内臓も奇麗に等分に切り裂いていく自称芸術家の群れ。そして始まる部位取得のじゃんけん大会。最強のモンスターとは一体?うごごごごごごご・・・いや、ホント、この世界の芸術家、下手すると冒険者より強くない?なんでこんなのが芸術一辺倒なの?あ、自分達はある意味の安全を守る為に騒動中に紛れて配送ギルドに避難しました。
「芸術家ならドラゴンをぶった斬れる武器を持つのも当たり前なのか?」
「旦那様、帰って来てください。少なくとも一般的な芸術家は違いますから!」
よし、レインさんの言葉で何とか戻って来たぞい。いや、ホント、常軌を逸した世界だったわ。リンさんが持ってきてくれたほうじ茶で落ち着こう、うん。
「アレ、実際のとこどうなんです?」
とりあえず、メンバーの中では一番冒険者歴が長いレインさんとリィルさんに聞いてみる事にする。
「アーティファクト且つレガシークラスの武器・・・ではあると思う」
リィルさんがただ・・・と言い、続きの言葉を紡ぐ。
「レガシークラスの武器は一子相伝。つまり・・・」
「ん?一子相伝って事は?」
「続きは私が、旦那様。一子相伝の武器、すなわちレガシー装備を継承する家の多くは渡り人、すなわち、転移者を祖とする家が多いそうです」
レインさんの言う事はまあ、お約束と言えばお約束の話ではある。が、そうなると、この光景は彼女達からすれば驚きとも言える。
「つまり、これだけ大量のレガシー武器が集中してるのは?」
「非常に珍しい。いえ、私の一族の手記などを加味しても見れていない光景だと思います、リィル、貴女は?」
「私も冒険者だ。レガシー武器持ちと依頼をした事もあるが、それでも邂逅は数年に一度と言った所だな」
2人の話を総合すると、レガシー武器持ちは基本、あまり使わないと言うか、見せる事はされないと言った所かね。となると・・・・・・
「やはり、ここは・・・」
「はい、カミヤさんの考えがまさに正鵠を射ていたという事ですね。ここは、転移者達の始まりの地。そして・・・」
自分の言葉にメイさんがこくりと頷き、そして・・・・・・
『ここは日本を手本にした大陸』
モンスターこそ居るがそれは空を飛んで来る者のみ、そう言えばゴブリンとかは勿論、地上にホーンラビットを見かけた事すら・・・・・・あれ?そういえば、ギルドマスター部屋の窓から遠くに牧場見えたよな?まさか・・・いや、よそう。想像に過ぎないからね!
「んで、ここから分かる事実。まず、地球はマジで無い」
「事前覚悟してましたけど、こうして結果を見ると複雑ですね」
リンさんの言葉に頷く。つまりだ、大規模転移魔法はそういう仕様と確定してしまった訳だ。はぁ・・・
「次にあのレガシー武器持ちヒャッハーさん達は・・・」
「今現在、ドラゴン素材でハァハァしてる皆さんは全員地球からの転生者の子孫ですね」
アマネさんのお言葉に自分以外の地球組も過呼吸になりそうになるが、事実であると受け止める。いやあ、あの、前衛芸術狂いだけは日本人の最後の一線として認めたくないかなあ?ってなる。がまあ、歴史上の男とか無機物を萌えキャラ化したのも日本人だから・・・・・・なんか複雑だが認めねばならない面もある。
「ますます、次のレベルアップでアレ取らなきゃだなあ、はぁ・・・」
次のレベルアップがこれほど近く遠く感じるのは初めてだなあ、うん。でも、真実は知らなきゃダメなんだろうなあ・・・・・・
いよいよ、物語が終盤に向かっている!はずのお話(自信無し)
後、ちと早いですが、メリークリスマス!
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 10
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV 4