114話 お嬢様を拉致れ! 後編
『それでは、よろしくお願いする』
「はい、それでは」
さて、当日、自分はオートマタをステータス画面で操りつつ、御両親の方を見て頷くと、向こうも頷き返したのを確認すると、手に幼女形態にしたシェルターを持つ。そして・・・
「参りましょうか、外へ」
『え?』
そして、彼女の手を応接間の窓から引いて入室させる。
「それでは、確かにお預かりした手紙とお嬢様をお届けいたしますので」
『うむ、よろしく頼む』
まあ、こう言う訳である。お嬢様は戸惑ってはいるが、与えられた役目を果たしている。それでも、唐突に現れた応接間に戸惑っている内にオートマタを回収。開けてもらった扉から外に出る。そこまでやってようやく現実に帰ってきたようである。
「えええええええええええ?!」
そして、響き渡る驚嘆の叫び声を背景に、応接間の扉を閉めて、自分は操縦室に戻る、女性陣も各々の行動をするのだった。ちなみに、世話役のメイドさんも一緒に入ってもらっているので安心だろう。しかし、まあ、なんだ、どいつもこいつも役者だねと思ったのは後の話である。
「納得いきませんわ あ、美味しい」
『知らんがな』
現在地、食堂でお嬢様を接待なうです。まあ、車形態あるとはいえ、1日半の道を不自然に一気に走破したらまずいって事でのんびり運転で行こうと言う事になったのである。んで、今、朝は街で食べて出たので、昼ご飯である。ハムと卵のサンドイッチ、それとミルクである。流石にカレーとか日本産の魔改造メニューは確認したい事があるから、早いって事で。
「それで、ちょっといいかい?お嬢様とメイドさん?」
「はい?」
「なんでしょう?」
自分はこのわずかな時間で確信した事がある。そして、この依頼の真の意味も。
「これは確信を持って言うけど、2人は転生者でしょ?」
『はい?』
両名はなんで気づいたの?って顔をしてるが、だってさあ?
「応接間に入った後、準備すんだら、コレを押してくださいって、躊躇なく呼び出しボタンを押しましたよね。なんで分かったの、押し方?」
「「あっ!!!」」
そう、渡したボタンはファミレスとかにあるアレである。この世界、こういう系統のボタンは普及していない。何故か?そら、軍事技術に転用したらやべえ!どころではないぞ、コレ。なにせ、一定距離で合図が送れるのだ。ファンタジー世界の戦術よ、さらば!である。戦車がある?まあ、ねえ?貴族も扱いがないと思われるが、王族はどうなんだろう?とは思うが、とにかく、コレを初見で机の上に置いて扱うと言う事が出来るのは心当たりしかない。んで・・・・・・
「で、まあ、婚約者云々のアレは名目って訳ですかね?」
「実際、私達の事に気づかなければ、そういう事になってたと思いますよ?」
つまり、自分は気付く確率が高いと予想してたんだろう、あの親父さん、中々の狸だな。
「改めて、事情をお聞きしても?」
「ええ、リセ。改めて、私の後に貴女も紹介なさい」
ふむ、カリーナお嬢様はともかく、リセさんって言うのか、このメイドさん。いや、もしや・・・・・・
「まずは自己紹介からね。私はカリーナお嬢様と呼ばれてるけど、本名は苅野 奈央よ。ナオと呼んで、よろしくお願いするわ」
なるほど、元の名前の当て字って訳か。周りがカリーナお嬢様と呼び続ければ、本名は分かり難くなるって事か。まして、その隣にいるリセさんまで転生者とは思わないだろう。って、待てよ?定着するほどの長い期間経ってるって事は・・・
「お2人はもしかして…?」
「お気づきになられましたか、流石です。私とリセは転生を選択しました」
あの時、自分達には2つの選択肢があった。今のまま、つまり、あの世界に居た時の姿で転移と、ランダムに魂だけ飛ばす転生である。この2人は後者を取ったって事だ。
「苅野 理世です。よろしくお願いします」
つまり前世は姉妹関係にあったって事か、なるほどって・・・・・・ん?
「あれ?じゃあ、なんで姉妹じゃないんです?」
「聞いちゃいます、聞いちゃいます?私もあの世界で、ランダム転生を選択したからには、妹のリセとは今生の別れと思ってたんです」
あっ・・・・・・って顔になる自分と地球組。そして、なんとなく察したであろう現地組。
「3歳になった時、貴女の御付きのメイドですよと、今のお母様に紹介された時の時間が停止したような空間、今も思い出せるわ・・・・・・」
今生の別れやって、普通に意識が明確になるであろう3歳ぐらいの頃、再会したら、運命の悪戯疑うわな、うん・・・・・・よし、この話題ここまでにして話題を変えるとしよう!
「で、この依頼の真の裏は?」
そう、これだ。あの親父さんは転生体ではおそらくない。しかし、こうまでしてでも娘さんを街から遠ざける、もしくは街でも安全な場所に置きたいと言う事だ。ここが気になる。
「そうですね、先ず妹であったリセのチートは料理と掃除、つまり、家事全般。そして、私は箱庭です」
箱庭?そんな能力は多分無かったはず。そして、それを持ってると言う事は・・・
「それって・・・」
「はい、カミヤ様の想像通りです。おそらく貴方のこの能力と同じ、向こうで作ったチートになります」
自分以外にもやってたと言う事に驚きもあったが、まあ、考える人居るよねとも同時になる。そして、箱庭と言う能力についての説明と同時に、なるほど、あの親父さんが結婚と言う遠くに行かせる手段か、同じチート持ちを探す訳だと納得がいった。
「私の能力、箱庭をお見せします」
そう言うと、彼女の手に現れたのはルービックキューブサイズの箱庭。テーブルの真ん中に置いてくれたのでじっと見て見ると、何も居ない事はなく、小さなフィギュアが動いて畑仕事をしたり、牧場で世話をしたり、鉱石を掘ったりしている。
「このように箱庭を出すと、中で人形が動き出します。そして・・・」
待て、とんでもない能力の予感がしてきた。なんとなく察したのか、女性陣の顔も驚愕に染まっていく。おいおいおいおい、そういう事かよ!
「この中で生産出来るのは私の知識の限りのモノ。そう、日本にあった農作物や生産物が作れます」
そう来たかあ・・・・・・!いや、まあ、それぐらいやばくないと、あの親父さんがこの娘の事全ての情報を悟らせまいと権力と金でビンタするよなあ。何がやばいって、縛りがおそらく無い事である。現代日本の産物も量産して時が来るまで隠せるかもしれないと言う事である。もっと恐ろしいのは、オーバーテクノロジーによる経済破壊である。
「なるほど、国内は勿論、国外にバレるとやばいって訳ですか」
「それもあるのですが幸いにして親と兄妹に恵まれまして、今まで自分の身内だけで消費していたのですが・・・あ、ちなみに私は三女です」
それがバレたという感じではなさそうだ。そうなると、うちや国外で保護する理由・・・・・・
「もしかしてですが・・・あの御両親が選ぶ相手もそんな気はないかもしれませんが、まずいのは結婚ですか?」
レインさんの言葉にナオさんは頷く。ああ~、なるほどと言う言葉しかない。それなりに大きい貴族だ、三女と言えどいつまでも独身は無理である。下手に隠そうとすると、調べようとする輩が必ず出る。そして、結婚の場合、スキルの開示を要求する所もあるかもしれないし、ひょんな所からスキルがバレて・・・が、一番最悪である。何が?って、利用される未来しか見えないだろう。下手すれば死ぬまで監禁して強制的に子作りして、親子共々利用し続けられるという女性の尊厳破壊なんかも十分にあり得る。
「もしかして、件の自称婚約者さんは存在しない?いや、するけど、婚約は無かった事にする手筈だったり?」
「カミヤ様の考え通りです」
リセさんがシレッという。うわあ、めっちゃ娘に過保護じゃん?じゃん?コレ、能力知ってコレなら、もはや娘好き通り越して、娘に害するなら殺すマシーンじゃん?じゃん?どういう事って、自分が今回の事見抜けなかった場合は次善策として、表向き婚約使者と言う名の裏から手を回しまくったのと会わせて、すいません、婚約に関しては合いませんでしたけど、こっちの修道院辺りにお預かりしましょうか?と提案させるつもりだったんだろう。う~ん、過保護!!
「で?」
「はい」
「はい、お察しの通りですね」
自分の言葉に順に、目を逸らしたナオさん、リセさんと続く。うん、つまり、そういう事よね?
「降嫁ですか」
「なるほど、旦那様の功績は充分。いえ、充分以上、並大抵の家では文句は言えないでしょう」
強引な手段ではあるが、それを知る手段がおそらく、お届けを依頼された手紙だ。スッと取り出して、机の上に置く。
「つまり、あの親父さんは全てを見越しての指名依頼だった訳だ」
いや、下手すれば、お嬢様の親族全員が動いていたかもしれない。防諜も完璧、発表時期も向こうが調整その他をやってくれるだろう。そうなると・・・
「部屋は・・・」
「応接間に布団を置かせてもらえれば充分レベルなんだけど」
「いやいや、そう言う訳にもいかんでしょ・・・・・・って、え?充分?あの家より確実に狭いですよ?」
その言葉に2人からお前は何を言ってるんだ?って目をされた。解せぬ・・・
「まあ、流石に降嫁してくる方を部屋ですら無い所で寝てもらうのはダメだろ。私がレイン姉と同室になれば一部屋空くから、そこを使ってくれ」
そういう事になった。まあ、流石にすぐにそういう関係にはならないよな!うん!まして、前世姉妹で現在お嬢様とそのメイドだからね!あれ?フラグ立った?
まだだ!1日半の距離なら大丈夫だよな、カミヤ君!!!
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 10
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV 4