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110話 久々の外出は歓楽大陸で 後編

「裏組織ですか?」


「ああ」


国家が絡む諜報員なら問題無いかと思い、応接間に通す。人間の女性でヘレナさんと言うらしい。見た目はなんて言う女性陸上選手な感じだな。鍛えてる筋肉に無駄が無いという感じだ。で、彼女の部下に報告と例の二人の護送を任せ、口を開いた彼女から聞いた一端がコレと言う訳だ。


「裏とは言っても、あの様の通り()()()()()()()()()()()()()()()()()


だよねえ。確かに行動はテキパキしてたけど、あんな風に声出して苛立ちを言葉にするより無言で行動するわな。そういう組織のアサシン的な奴等は。そうなると、つまり国家的に問題は・・・


「こちらの恥を晒す有様だが、かなり()()()()()()()()している」


すっげえ長い溜息と共に出た言葉がコレである。その言葉にこちらは全員あ~と納得である。要するにだ、ああいう自称工作員を捕らえるのは簡単だ。が、トカゲのしっぽ切りになる訳だ。


「要は貴族の道楽であり、それが上手く行ってしまっている、いや、()()()()()()()と?」


「そういう事だ。有望なスキルを持つものを貴族たちが囲う、いや、もっと酷いな、奴隷のように金や地位で縛ろうとする組織だ。流石に歓楽都市でも()()になっている」


なるほどねえ。そうして、王や直属が派手に動くと、しばらくは大人しくなり、また、緩み始めたら動き始める、まさしく、果てがない鬼ごっこである。上位の貴族なら王族の情報とかも取れるだろうしなあ。ついでに言うと、どいつが中心か分からないのがデカい。で・・・


「今回、狙われたのは自分のこのシェルターである・・・と?」


「割と有名になってしまったのもあるだろう。例の船のな」


「あ~」


アレを切欠に貴族達が自分の情報を集め、これは使えると思い、ここに来ると分かった時から組織、ただし括弧笑いが付くのを動かし始めたってとこかな?となると・・・


「あの二人からも大して情報は得れそうないと?」


「そうなのだよ」


は~っとヘレナさんが溜息をつく。おそらく、分かっても、多分あいつだ!的な名前ぐらいだろう。そんなの証拠にならんし、お金受け取っている時点でどこか別の貴族に雇われたのだろうと言われたらそれまでである。根本的な解決には至らない。


「厄介なのは組織の人数が分からない事、どれだけの貴族が協力しているか・・・ですね」


レインさんの言葉にヘレナさんが頷く。そうか、貴族がどれだけ協力しているかもあるが、貴族の勢力下、指揮下にある人間がどれだけ居るかもわからんって事か。その気になれば、国と事を構える事も出来るって事か、そうなると国も易々とこの件に関して、手を突っ込む事が出来ないってとこかね。


「そうなると、今回の捕り物で一時は大人しくなるけど・・・」


「一時的だろう。いや、君達の滞在期間が分からないからにはそう見せかけて、また動くかもしれない」


リィルさんの言葉に対するヘレナさんの返答がコレだ。権力持った奴等って、これだから面倒くさいな。しかし、そうなると・・・


「今回のやり方も、限界があるでしょうね」


「残念ながらな」


自分の言葉に対する、ヘレナさんの言葉が全てである。動く者達に対して、資金が足りなければ金を出し、人数が足りなければ人数を、アイテムが必要ならアイテムをと言う事だ。う~ん?いや、しかし、こういうのも慣れなのかね。考える余裕も出てくる。下手に権力持ってるから、そうなる訳で・・・


「判明した貴族の私財・権力没収とかは?」


「判明した瞬間、子飼いに擦り付ける」


修羅の国かな?とは思うが、子飼いの勢力がやりました!と言えばそうなるだろうしなあ。自分達の世界で言うなら、ブラック企業と言う奴である。う~ん、色んな意味で前世の世界を思い出す所だな、歓楽大陸。そして、聞くまでもないが、聞いておく。


「首謀者と言うか、首謀貴族は?」


「特定出来ない」


ヘレナさんが頭を抱える。もう少し詳細を言うと、特定()出来ない・・・であろう。それぐらい大きくなってしまったとも言える。国ですらも中心にどの貴族が居るか把握出来ていないと言えばいいのか、おお、もう・・・


「そうなると、かなりアレですね。中心が手を出せないようにならんといかんと?」


「そうなる」


う~ん、微妙に難しい問題である。仮に問題が解決したとしても、自分がターゲットから外れるだけである。かと言って、ターゲットに進んでなっておくというのもいささか精神状態的に悪い。ん~、どうしたもんかね?いや、待てよ?


「少し確認構いませんか、お時間頂きますが・・・」


「ああ、構わない。貴殿と接触している時間も勤務の内でもあるからな」


自分が話した内容は王以外には漏らさないと約束してもらい、話し始める。なお、今までの事もあり、お分かり頂けると思うが、話し終えた後でこいつ、正気か?という顔をされたのは言うまで無い事である。なんでや、解決するなら奇策もええやろ。




「お~、お~、見てる見てるwww」


マイクを切ってる状態で見ているのは、あの日から数日、港町から舞台は中央都の城の中の謁見室で驚きの顔でオートマタを見ている貴族や家臣や騎士団の顔ぶれ。そして、玉座の共犯者である王様。


『王!』


近衛兵士っぽい人が玉座の近くに寄り、王様に耳打ちする。


『うむ、確かなのだな?』


『はっ!全て、確認致しました。魔法での偽造も確認されずです』


ざわりと場がざわめく。そりゃそうさね。次の兵士の言葉が全てだ。


()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()、大きさは1本が成木サイズを確認致しました!』


さて、現代に慣れた人なら、たかが木と思うかもしれない。しかし、ファンタジー世界での木はただの木ではない。この世界は魔法もある、ある程度の化学もある。しかし、燃料の基本は木なのである。例で言えば、暖房を行うには魔石を使った魔道具などもあるが基本的にめっちゃ高価である。なので、庶民や収入が低い者は薪ストーブを使う。鍛冶も火を点ける燃料に木を使うし、調理に関しても酒場など大きい所でもなければ木を使って火を点けた竈である。


(まあ、とにかく多岐に渡る訳だが、ここで問題が出る)


需要に対する供給が中々追い付かないのが現状である。勿論、全く足りないと言う訳ではない。樹木系のモンスターを倒せばドロップするし、騎士団や有志による見回りで近辺の森などから市民も伐採で集めれば、冬を越す分などを用意する事は出来る。これは各国では常識である。しかし、植林するなどを行っても火を起こすというのは人間の営みでは重要だし、冒険者ならば野営でも火は必須である。これだけの需要があるのだから・・・


(ぶっちゃけ、丸太状態とは言え、100本も用意してくれる人が居るとしたら、そいつは英雄だわな。賓客扱いレベルにしないとおかしくない)


さてさて、参列中のお貴族様が何人か顔が青いようですな。そら、この先の展開、地頭が良いなら読めるよね。だからと言って、王の招集に来ないなら、私が犯人ですと言うようなもんだもんね。


「では、よろしいでしょうか?それらを収める代わりに願いがあります」


外部マイクをオンにして言う。すると、王もこちらを見て頷く。


『申してみよ』


「すでに自分の情報は王の元に行っているというのは確認しても?」


『うむ。貴殿の情報はここでも有名であるからな』


自分で言うのもアレだが、ですよねとしか言いようがない。あの船の事や浮遊大陸でのやらかしもあるしな。そんな人間が大陸にやってくるなら、そら、国としては情報集めるよなってなる。あ、やばい、リアルで泣きそう。おかしい、スローライフが我が人生の筈なのに、畜生。


「ところが、この大陸に来た時から、何故か、金で雇われたと思わしき者に追跡されておりまして」


『聞いておる。我の () から・・・な』


圧が自分以外に増したな。指、すなわち、諜報員、いや、指と呼ばれた部隊のメンバーから、すでに事は聞いているぞと周りに流してるってとこかね。そろそろ、かな?


「先に捕らえた事情をよく知る2人からによると、この国の上位の貴族に雇われた、と。これに関しては巻き込まれた者として、ヘレナ殿からお聞きしました」


『当然の権利であるな』


お~お~、分かりやすくなってきたな。顔が真っ青通り越しているのが何人か見える。うん、トドメと行くかな。


「その貴族の名は・・・」


『お待ちください、王よ!如何にその人物が高名なれど、その者は低ランクにして庶民でございまする!』


うむ、フィッシュオン!だ、駄目だ、まだ笑うな、笑いは堪えるんだ!!!いや、もう、なんて言うか、一番真っ先に会話に入り込んだ貴族を皮切りに爆釣である。君達、分かってる?今、この会話に入るって事はさあ?


『一番最初に言葉を発したのは確かオズワルド・・・だったな?』


『はっ!』


いや、こっち見てドヤ顔するの止めた方が良いと思うよ?それ、この後、絶望顔になるんだからさ。うん、間違いない。君が会話してるの王なんだから、そっちの顔を先ず見たまえよって言いたくなる。


『オズワルドも含む、声を上げし者達よ、貴公等、誰との会話を遮っておる?』


デスヨネ~としか言いようがない。ファンタジー小説とかに良くあるシーンだが、ああいうシーンの王様や領主様って、絶対近くに剣あったら、会話遮った奴を斬ってるよなとのんびり考える。そして、ようやく自分達が今どういう状況か分かったのだろう。貴族達は静まり返る。


『さて、静かになった所で、我が指よ、どうであった?』


『はっ、こちらに』


ヘレナさんが柱の陰から出てくる。どうやら、成功したようだ。自分とヘレナさんが何を行ったかで言えば簡単である。まずは自分が登城した事を各方面に通知、貴族や王族の関係者を招集する。さて、当然だが、召集された貴族達は腕利きの護衛なども連れてくる。と言うより、連れて来ざるを得ない。すると、貴族の家は警戒面ではかなり緩くなる。魔法的な仕掛けなどがあったとしても、王の招集時に戻るとか疑ってくださいと言うようなものである。で、その空になったも当然とも言える各家にヘレナさん他、指の構成員が侵入、捜索したって訳である。


『オズワルド伯爵以下、声を上げた貴族達の屋敷から、例の問題提起に上がっていた組織運営及び計画書が発見されました。組織を使っての取引もあったようです』


『我が指に衛兵、捕らえよ』


王様の声と同時に捕らえられた伯爵達はそのまま連れていかれた。まあ、当たり前であるが、声を上げる間もなく捕らえられ、転生者にも使われるスキル封印の魔道具を付けられた。更に別室からも叫び声が聞こえてくる。国王の指、怖っ!


「ここまで上手く行くとは思いませんでしたね」


『それな』


嵐が去った後、全員が退出した所で先程までの威厳はどこへやら。国王様はすっごい砕けた感じで玉座に改めて座る。


『彼の策のお陰でしたね』


『全くである。ここまで噛み合うとはな』


ここまで言えばピンと来る人も居るだろう。そう、この都市の国王は転生者である。まあ、ヘレナさんに頼んで密かに通信の魔道具で謁見した時に判明というか、同じ転生者として教えてもらったんだけどね。


「まずは、自分が謁見を申し出る。これには組織に属する貴族達は()()、当たり前だね」


自分の言葉に2人とも頷く。そら、接触・拉致に失敗した人物が城にやってくるのだ、いつものように冷静ではいられない。そこに・・・


『吾輩が王命の名の下に貴族の参列を許可する』


「当然、何を言われるか分からない組織所属の貴族達は参列する、当たり前だね」


『組織壊滅も時間の問題でしょう。間抜けにも、監視中に何の細工も無く組織の拠点に連絡しておりましたので、特定は簡単でした』


そう、まあ、ここまで間抜けとは思わなかったので、ヘレナさんの言葉は割と予想外でもあったりするけどね。大慌ての人間って、そういう事忘れるからある意味人間らしいとも言えるけど。


「そうして、冷静でない、心が動揺している所に・・・」


『吾輩のチートの一つ、心理誘導の出番と言う訳だな』


と言っても、神から与えられた以上酷い性能ではない。このスキルはほんの少しでも自分がやりたい事を近道出来るならリスク関係なくやらせるというものである。今回の例で言うなら、裏組織に関係している事をバレたくないから、自分の発言を地位を利用して阻止しようとして発言するように誘導したと言う訳だ。コレ、ある意味、最強の外交スキルでもある。金はそうして集めてきたのだろうね。なるほどなってなる。悪用してないから良いけど。


「難点である視認しないといけない問題は謁見の間で事足りる」


勿論、チートである以上ある制約があり、視認しないといけない事だ。それも謁見の間なら解決すると言う訳である。王様、一番高い所で見晴らし良い所に居るからね。


「そして、首魁に当たるかもしれない人間が大慌てで発言した事に慌てた他の関係者は必ず、心理が剥き出しになる。そこを一斉摘発」


あのオズワルドと呼ばれた貴族が声を大にしたのも良かった。声の大きさに釣られて、関係者となった貴族がスキル効果も相まって爆釣と言う訳である。実際、ここまで上手く行ったのは散々心を揺らしてやったからだろうけどね。


『見事であった。褒美は本当にあの情報で良いのか?』


「いやあ、地位も名誉も邪魔ですし。あの情報と比べればお金とかもどうでも良いんですよねえ。そう思いません?」


『まあの。では、望み通り、()()()()()()()()()()()()の情報集めて、提供しようぞ』


うん、ぶっちゃけ、一番欲しい情報ってこれだよねってなる。とりあえず、後は情報の受け渡し先を伝え、王城を後にするのだった。

お久しぶりの転移者案件。この大陸では、転移者案件が多くなりますよと言うお話。そら、転移者が作り上げて、カジノやらなんやらあれば多くなりますよねと言う。



現ステータス


NAME


シロウ・カミヤ



SKILL


安全シェルター LV 10


健康的な体 LV MAX


投石 LV 1


鑑定 LV MAX


鍛冶 LV 7


念動 LV 4

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