外伝7 とある高ランククランウィザード マナン
「本当に上手く行くのか?」
「今までよりは上手く行く可能性が高い。それより、ケン、配置は?」
「おう、済ませてるぜ。本当にあの厄介な奴を簡単に倒せるのか?」
「うん、間違いなく上手く行くと思う。あのカミヤ氏からもお墨付き」
私はマナン。とある不名誉な称号を受けたが、転生者であるカミヤ氏から魔法に関しては一番最初に教えを受け、様々な使い方の模索をする事にしたウィザードだ。今、私のパーティはリーダーであるケンと共に相談しつつ、とある魔物を討伐準備中だ。その魔物の名はバンデッドモール、所謂モグラの魔物。
「それなら安心か、配置は事前の通りで良いな?」
「うん、5分後、同時に実行する、良い?」
この魔物の厄介な所は自分が潜った穴に逃げる事。また、その穴のせいで作物などが穴の底に落ちてしまったりする事。人間は小さな穴にまでやって来ない。それが分かっての狡賢い魔物だ。穴からの奇襲と言うのは馬鹿に出来ない。こちらが何も出来ないのに対し、向こうは奇襲が失敗しても、逃げる事も簡単に可能だ。それ故に、この魔物の依頼は農民の敵であるし、食糧の自給にも直結するから報酬は良いが、忌み嫌われている。理由は時間がかかりすぎるからだ。しかし、それは今日までになる、多分。
ケン達が配置に着くと、皆が頷き、自分も頷く。では、始めよう。
「行くぞ、挑発!」
タンカー数人が穴に対し、挑発を使う。モールは穴の奥に常に居る訳ではない。わざとらしく靴音を鳴らし、挑発スキルを使えば顔を出す。この辺り、獣系の特色だ。しかし、この小狡い魔物は相手が強者と見ると引っ込む。だが、一瞬でも顔を出した。これが重要なのだ。よし、配置を覚えた。
「ケン、皆に抜刀命令!飛び出すようにするから、一斉に排除!」
『おう!』
「クリエイトウォーター!」
唱えた呪文は本来は体を洗うお湯や食器を洗う為の水を作り出す魔法。飲み水にはならないが、野営には必須の魔法だ。ただし、戦闘には使えない。そう認識されている魔法である。だが、コレを教えてくれたカミヤ氏、彼の発想には驚嘆に値した。
『クリエイトウォーターって必要なだけ、魔力続く限り、指定した場所に水出せますよね?』
まさに目から鱗の言葉だった。そう、野営に必要な水の量は飲み水以外では意外と消費が少ない。それ故に、クリエイトウォーターがどれぐらい出て、どれぐらい続くのか?それを戦略に使うなど考えもしなかった。これは、革命の第一歩だ。さて、問題、とめどなく流れ続ける水を穴に流し込まれ続けたら、モグラはどうする?
『ギィイイイイイイ?!』
奥に逃げるなど出来る訳がない、彼らの目線で水の奔流が襲い掛かるのだ。パニックになり外に出てくる。そこを・・・
「突撃!」
『おぉおおおおおお!』
結果はバンデッドモールの討伐時間は軽く更新したと言っておく。嬉々としてそれをギルドに報告し、酒場で話すリーダー達を尻目に、私は決意した。
「既存の魔法を再度学び直そう。そして、使い方を考えよう」
後に私はとある事に気づきそうになるが、その後の忙しさにそれを忘れてしまった。それは世界の謎を解く重要な事だったはずだけど、思い出せない。う~ん、ま、良いか。次はストーンバレットの有効活用方法を・・・ケン、なぜ逃げる???
マナンさんのその後です。うん、まあ、この娘、あれっきりと言うのも勿体なかったので再登場してもらいましたと言うお話。おそらく、あの後、ケン君とお付き合いしてる・・・と思われる、うん、まあ、色々実験もしてるって事で、ハイ




