外伝6 冒険者支援協会 会長 ライ
私は長らく冒険者を支援する協会の会長をやっていた。前世は様々な街や秘境を巡り、勿論だが、異世界転生のライトノベルや漫画なども読んでいた。そして、何より、異世界で生き残るために重要なコミュニケーションを重要視した。足で稼ぐ信頼関係も重要視した。だからこそ、今の地位を築けたと言っても過言ではない。
「う~む、降参だな」
だからこそ、彼、カミヤさんの発想の凄さが分かる。分かってしまう。
「ケーラ君」
「はい、なんでしょうか、会長?」
自分の秘書でハーフエルフ女性のケーラ君を呼び、書類を渡す。見ても?という顔をされたので頷くと、彼女は紙の資料をあっという間に目を通す。そして、ああ・・・という顔をする。
「資料化出来そうかね?」
「直ぐにでも。本当に彼がもっと早くこちらの世界に来られなかったのが悔まれる程ですね」
同意しかない言葉を発して、バタバタと出ていった彼女を尻目に、今読んだ資料内容を思い出す。彼のもたらす知恵は私は勿論、この世界のあらゆる者を驚かせる。浮遊大陸の一角の買取はまさにソレにあるだろう。そして、今回は・・・
「土木魔法のまさかな使い方だからのう」
資料に書かれていた所によるときっかけはストーンウォールの、まあ、うん、そういう使い方もあるよねと言う内容だった。まあ、そういう事をきっかけに様々な魔法を調べ直した末に行き着いたのが土木魔法の活用方法だったと。
「盲点と言う訳ではなかったが、完全に建築に寄っていたのう、自分も周りも」
土木魔法と言うのは柱を設置するための穴を小さく開けるドリル、壁を作り出すストーンウォール、土や壁を削りだす掘削。いずれも消費は低く、特にストーンウォールは冒険者チームに一人は必須の魔法となっている。まあ、うん、攻撃魔法になってしまったのは、まあ、うん、忘れよう。忘れたいんだ、アソコがキュッ!ってなるから・・・
「ドリルか・・・確かにこの発想はなかったわい」
ドリルは本来は小さな穴を開けるのみであった。これを使い、柱の組み合わせや固定を行うだけの魔法。それが世間での評価であり、冒険者が持つような魔法ではなかった。ところが、これを取得したカミヤさんは気付いたのだ。
「なんで気づかなかったんじゃろうなあ、コレ・・・」
ドリルが開ける穴は設定出来る。設定出来るが、精々、それで考えつくのは前述の通りである。誰もが考えなかったのだ。そう、誰もが考えなかったのだ。穴の大きさを広げれると言う事を。
「本当に彼はそういう視点の使い方が上手いねえ」
そして消費が軽いと言う事はあらかじめ、大きさを考えておけば、見える範囲の指定した場所に唐突に落とし穴が出来上がると言う訳である。たった数センチの穴でも足が引っ掛かるのが足を持つ生物の宿命である。それだけ?と言われるかもしれない。だが、それがシンプルに冒険者を救う手立てとなるのだ。
「一瞬の隙は逃亡する、攻撃する為の手段となる。後は各自が考えるじゃろう」
そう言って、儂は他のメンバーと合流する為に立ち上がる。一瞬だけ考えついた事はきっと気のせいだ。だって、そうじゃろう?
(まるで、地球でかってあった最初の狩猟のようだなんてのう・・・)
少しづつ、少しづつ、現地の人間・転生者達が気付き始めていくというお話。そろそろ、女神の狙いも分かってきた転生者いるかな?