外伝 女神???
初の外伝です。今回は転生者達を送り込んだ後の女神のお話
『行ったのう』
『ええ、行きましたね』
私達は最後の一人であるカミヤさんを見送った後、大きく息を吐いた。
『よもや、10回も満たない3回目で現れるとはの』
見送りの中の神の一人、農業神が言う。ええ、私も同感です。
『本人は自覚ないだろうが、本当に最適解だけ聞いてきたからな。運命神の操作も疑ったが』
同じく、商業神が、隣にいる運命神を見る。
『まさか、まさかだ。私も聞いて連れてこられた時は、冤罪について語ろうとしたが、なるほどなるほど、私も見ていく内に何かしらのスキルをここで使っているのか?と私も疑った程だよ』
ですね。私も思わず、権限使って確認した程ですから。
『何より、ステータスと職業ではない方のレベルを全く重視してないのが良い!』
闘神が言う、おや、珍しい。
『貴方にしては珍しい意見ですね?』
『女神の、勘違いするな。俺はステータスに無限に振る事も戦いのスキルを無限に取る事も、スキルを全て取る事も認めているし、戦いから逃げぬならば祝福する』
でしょうね。ですが、私達も感じた事を彼は代弁してくれそうだ。
『だが、奴は引き籠る為と言った。本来ならば、軟弱と切り捨てよう!しかし!』
そう、しかしです。
『奴はステータスに見向きもしない!レベルにも見向きもしない!本来ならば垂涎の不老不死や無敵の体すらも奴にとってはゴミスキルにしか見えんのだろう!何故か!己を一番解っているからだ!人間、だとな!!!素晴らしい!故に、我々は祝福した!』
そう、多くの人間はステータスに大きく値を振り、スキルも様々な身体スキルを持って行った。彼と同じラノベだったでしょうか?それを同じく熟読した者ですらだ。分かっているからこそのステータス振りなのだろうが、それは間違いでもある。
『ステータスは飾り、無敵スキルも飾り、今頃何人がトラウマになったでしょうね』
商業神は溜息を吐く。他の神々も同じだ。どういう事であろうか?簡単な事だ。
確かに無敵のスキル、ステータスを持つのは最強の人間かもしれない。だが、転生先もまた人間なのだ。彼等が転生したばかりの頃の脳内に浮かんだのは無敵の強さで無双する自分の姿だろう。だが・・・・・・
『現実は甘くない』
狩猟神がバッサリ言う。まあ、実際にその通りだ。我々も転生者ばかり依怙贔屓しない。現地の人間にも対策を持たせている。勿論、両方の陣営が悪い事をすれば神罰も与えるがこうする事で公平にしているのだ。
そして、何より、戦闘が始まれば思い知るだろう。相手が人であれ、モンスターであれ。己は人間であるという事を。
『地上で流行っているラノベとやらのせいもあるのだろう。ダメージが1がチクリとした痛み・・・本当にそうであれば良いがな』
知識神が言う。そう、ダメージ1の攻撃も斬られる、魔法で攻撃される、殴られる等に痛みを感じない訳がない。そして、それをもって知るのだ。人間の体というその物を。そうして知るのだ、真の現実とは何か?を。
『故に、彼に希望を託しましょう。ええ。彼はきっと、かの世界を変えてくれる存在であると』
女神様の名前はまだ秘密です。カミヤ君が転生時に何故、神様【達】に見送られていたかはこういう事だったんです。会話にも伏線を滲ませつつ、次回はカミヤ君に視点が戻ります。