91話 鱗の思わぬ利用方法
「うん、まあ、配送ギルドが幸せだからヨシッ!」
「カリンさん、魂抜けてましたね」
「鱗天国からのあの話だからねえ」
自分の言葉に対するレインさんとリィルさんのお言葉が痛いが、うん、まあ、申し訳ないが、これに関してはギルドに丸投げするしかない。むしろ、丸投げ以外は出来ない。配送ギルド内で大会議してでも解決して頂きたい。
「まあ、さておき、報酬もあるけど、今回はコレ」
ドンと庭にあるのは報酬と共に貰った鱗1枚である。落ちてたけど、欠けが多いのを1枚の報酬分を抜いて頂いたのだ。カリンさん自身に聞こえてたかは知らんけど。
「いやね、ちょっと気になってたんだよね」
まずは欠けが激しい所にミスリル製のハンマーで少し割る。ちなみに自作である。そして、割れた欠片を持ってみる。なるほど、懐炉替わり納得である。ジンワリとした温かさはまさしく、使い捨てのアレと同じである。
「ふむふむ。これならイケるかもだ」
ここで取り出したのが、通販で買ったのを参考にし作り上げた、ミスリル製のおろし金。念の為にハンマーで割って、更に小さくした鱗をこれで削る。ミスリルの無駄遣いとか言うでない、イイネ?
「んで、これを・・・・・・」
円形の背が小さな器に入れていく。うん、大体こんなもんかなと言う所でその円形にぴったりな水筒をセット、とここまで言えば分かる人は案外居るかもしれない。一昔前・・・・・・一昔前と言う事にしたい時代にあった生石灰を使ったワンカップ酒のアレである。ホントは魔法瓶にしようと思ったんだが・・・
『多分、高熱を発するでしょうし、人間の手では持てないアチチな瓶になるのがオチだと思いますよ』
はい、鱗回収時に分析をお願いしてたメイさんの言葉でこういう形になりました。いや、まあ、確かになってなるからね。2重構造にしようとしても、そもそも断熱の特性を持つ鉱石がない。ミスリルを外側に内側に鉄鉱石に鱗の粉末を混ぜた筒を入れればワンチャンあるかもだが、そうしても鱗の魔力自体が消える訳ではないし、ミスリルがどんな反応するか分からない為に却下。
「よし、水を注ぐよ」
通販で購入したペットボトルのお水を特製の水筒に入れる。ふむ、すぐに湯気が出るって訳でもないか。
「オッケーだ。リィルさん」
「うむ」
リィルさんが底の方を持つ。火傷の様子も無いので、自分が頷くと、リィルさんは魔力を込める。
『おぉ~』
ボコボコって感じではなくゆっくり熱された感じでお湯になっていく。粉末の量は調整していくつもりだったが、これで良い感じらしい。
「よし、次のテスト」
次は温度計を取り出し、まずは、現在の温度を測る。そうして、温度を記録した後、しばらく放置し、また温度を測る。うん・・・
「成功だ」
ワッ!と場が沸く。そう、温度が無限に上がり続けるかと思っていたが、成功した。そう、日本の変態技術の集大成とも言える、保温に!まあ、ぶっちゃけ、自分達は通販で魔法瓶買えばいいじゃんと言うツッコミはしないでね。
「これ、ホントに現役の時欲しかったわ」
レインさんがしみじみと言う。地球に合った生石灰と水のアレは一度使用してしまうと、再利用はほぼ不可能だが、こちらは鱗の粉末に魔力が通れば再利用出来るようである。つまり底を持って魔力を通せば、保温再びと言う訳である。普通に便利すぎない????
「で。価格」
『デスヨネ』
いつものである。う~ん、こういう使い方ありますよと教えるつもりであったのだが、結果的にはなるがお金払ってもらわないと教えてもらう方が委縮すると言う事らしい。そんぐらい革命的なのだそうだ。ただ、心配なのが・・・
「価格も心配だが、ドラゴンも心配になるなあ、コレ・・・」
『ですねえ』
自分の言葉に女性陣も頷く。まず、いつも通り安く提供はNGだ。ドラゴンの鱗の争奪戦に加え、討伐まで考える馬鹿が出るかもしれない。
「だからと言って、高く売ると・・・」
「ただのボッタクリだよねえ」
リンさんの言葉に対するオウカさんの言う通りである。専用装備を持つ冒険者を雇わないといけないが戦いはほぼ無い為、実質、かかる費用は雇用費のみである。もしかすると、冒険者自身が駄々こねたりするかもしれないが・・・・・・
(雇う側が国もしくはギルドなんだよなあ・・・いや、ギルドも、実質は国か)
「あれ?もしかして・・・」
『浮遊大陸の国に丸投げで良くない?』
自分の言葉の後に続く言葉を全員で同時に言って、全員が頭を抱えるのだった。発見したからって、複雑に考えすぎたのである、チキショウ!!
ワンカップ酒って、今の若者は分からないかもしれないな・・・・・・ゴフッ(年齢思い出し吐血
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 9
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV 4