90話 お久しぶりの配送ギルド依頼 後編
「で、これが問題の鱗か」
早速、依頼された場所に行き、地図の通りに行くと鱗を数枚発見した。横幅は大人二人分ぐらい、縦幅は大人3人分ぐらいだろうか?
「なるほど、こりゃ、アイテムボックス持ちじゃないと無理だわな。鱗のお陰で襲われないとはいえ、うん、コレ持って火山地帯うろつくなんて無理」
『ですねえ』
でかくて大人一人では持ち上げる事すら無理があるコレをアイテムボックス持ち以外が回収は無理だわ。アイテムボックス無しで回収を行ったパーティに敬礼したいレベルである。しかも、コレ、溶岩ほどではないとは言え、熱を持ってるから、火山地帯では倒れるのが危険と分かっていても脱水症状で倒れてしまうのは間違いない。しかも、複数枚ある庭の一角がアレだ、サウナみたいな蜃気楼を出している。鱗自体が発火しないだけでも温情あるんだろうか?
「専用装備が用意出来なければ潜らないと言われる訳だ」
「女性にも人気が無い訳ですよね、コレ。汗だく確定ですもん」
ユウナさんとアマネさんがうんうんと頷き合う。まあ、そうだねえ。火山地帯に流れているマグマの熱に鱗の熱。しかも、それぞれが温度は違えど、共通して熱い。暑いではなく、熱い。更にここに出るモンスターは炎属性であるから更に気温がドン!である。近づいて来なくてもモンスター達は確かに居るのだ。そのお陰でこの火山地帯と言うのは、何の対策もしていない人間は一歩踏み入れるだけで一生分の汗を流すと言われている地帯らしい。
「まあ、お陰で念動スキルのレベルが一気に上がったんだけどね」
うん、念動スキル、なんで不遇なの?ってなるな、コレ?パーティ全員が取っていれば、レベル1でも遠くの物を協力して持ち上げれるのだ。もしかして、使い方自体が間違ってたと言うか、レベリングの方法自体が間違ってたんじゃないか、コレ?
「この情報は相当な価格で売れそうですね」
レインさんも真剣な顔である。元ギルドマスターが言うんだから相当不遇だったんだろうな、念動。いや、案外、スキル取った奴がこんな情報が金になる訳ないだろと思ってたかもしれない。うん、まあ、せいぜい部屋の模様替えとかだろうしね、役に立ちそうなの。
「念動レベルが上がる程、重い物を掴んで持てる。だが、その集中力に持続力を保たせるのは難しい。これがレベリングが難しい理由だ。だが、それが覆った」
前も言った通り、拳大の石ですら、念動で空中に維持を持続させるのが難しく、また空気や炎のように軽い物は経験値少ないのか、レベリングにはならないと来ていた。が、では、発想の逆転で複数人が持つと言う事をすれば、本人は勿論、他の人間も重い物を持ったと言う事実となりレベルが上がると言う事である。
「事実、この短時間で鱗自体の重さもあるけど、全員4まで上がりましたからね」
メイさんの言う通りである。グイーンと上がったんだから、魔法がいかに軽いかという証拠でもある。同時にレベリング方法が確立した瞬間でもあり・・・
「ただ、この場合、普通に売ってしまうと・・・おそらく弊害があるだろうな」
リィルさんの言う通りである。何が?って。複数人により持ち上げれる、レベリングが出来るようになってしまった。と言う事である。ここまで言えば、察してもらえるだろう。
「お金にはなりますが、犯罪に使われる恐れがありますね・・・」
自分の言葉にレインさんもハッとなる。遠くの物を動かせる、持ち運べるは確かに便利ではある。あるが、様々な犯罪に可能性も開いてしまうと言う事である。例で言うと、遠く離れた距離からの暗殺とかも出来てしまう現実味が帯びてきたわけだ。う~ん?
「念動と対になるスキルって無いんです?」
「あ!だからあのスキルなのか、レイン姉!」
どうやら心当たりあるらしく、詳しく説明してくれた。その名を【律動】。念動に限らず、不可視の力をかき消すスキルであるらしい。ただ、このスキルも不遇スキルの一つで欠点があった。
「なるほど、不遇な訳だ。敵味方問わず、バフ・デバフも関係なく剝がす・・・と」
これは非常に旨味がまずいスキルである。念動と対を成す、すなわち念動の様なスキルの力をかき消してしまうスキル。故にモンスターと戦う事に関しては不用のスキルとも言える。だが、問題はそこではない。
「これは念動と対を成すスキルと認識されていると言う事」
ハッとなる女性陣。そりゃそうである。確かに、このスキルは説明を聞くと、念動とは対を成すスキルである。そこは間違いない。そして、間違いでもある。現地の人間が疑いもなくこれは対になるスキルだと認識してしまっているのだから。つまり・・・
「つまり、これは神により作られたスキル」
要するにスキル封印のアレと同じである。すでに対策が練られた故に取る事が容易になっているのが念動。詰まる所、念動がどう使われても多数の対策があると言う事である。う~ん、神様の御力!
「とはいえ、今回は問題が問題だからなあ・・・・・・」
対策は瞬時だが、今回のはその対策が無ければ防ぎようがないのだ。う~ん、しかしなあ・・・・・・
「問題はどこに話すか?だよな」
『 そ れ 』
コレである。勿論、各ギルドや国を信用していない訳ではない。しかし、今回のは軍事的にも犯罪的にも使えてしまえるので、そこが非常に難しいのである。
「王家関係は難しい。ギルドになると何処へ回すか・・・」
勿論だが、様々な国の王家を信用していない訳ではない。情報が情報だけに隠匿されるだろうが、その方が良いように見える。だが、国が隠すと言うのは他国にとってはスパイしに来いと言うようなもんである。律動も含めて、悪用は出来ないよ!と広めたいので、隠匿の可能性が高い王族関連は除外。となると、ギルドなのだが・・・
「配送ギルド・・・・・・いや、アリか?」
冒険者ギルドも考えたが、よく考えると、普通に配送ギルドで良いのでは?となる。レインさんも、あっ!ってなってた。そら、重い物とか持つのに腰の心配その他しなくていいのって大きすぎるよねってなる。何より、自分の登録先は配送ギルドであるし、この方法を提供しても何もおかしい所はない。と言うか、腰の心配しなくていいのは配送業務にとっては救世主である。うん、分かりすぎる。
「まあ、そこからどう漏れるか次第だけど、広まりはするだろう」
女性陣が頷いたところで、自分達は鱗を持って、街に凱旋?するのだった。
念動スキルの成長編でした。うん、まあ、配送ギルドから伝わったのをどう使うかは人間次第ですからね、うん。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 9
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV 4