89話 お久しぶりの配送ギルド依頼 前編
「ドラゴンって言いました???」
『『はい』』
「はいじゃないが????」
現在、浮遊大陸の配送ギルドの応接間で漫才が始まっている。そら、聞かされた内容を知れば誰もが漫才したくなるってもんだ。
「自分、永久Dランクなんですけど???」
『そちらにおられるリィル殿は冒険者ランクA、レイン殿も元Aと聞いております』
ガッデム、情報と言う武器で逃げ道塞がれてるし。ちなみに、目の前に居る人物は二人、配送ギルドのマスターである人間女性のカリンさん、そして、冒険者ギルドマスターである人間男のゴルさんである。ちなみにどういう内容かと言うと・・・
「火山ドラゴンの落ちた鱗の回収。クランでもない個人に頼むのはどうかと?」
コレである。退治と思った?んな訳ない。流石にそんな依頼を依頼主である冒険者ギルドがするはずもない・・・・・・しないよね?いかんな、疑り深くなっている。自重せねば・・・勿論、こういう依頼には専門の冒険者なりギルド員なりが居る訳なのだが・・・
『いや、ホントに申し訳ない。こんなトラブルは初めてでして・・・』
名前の割に低姿勢なゴルさんが言うには、専門のチームに専用の火山用装備があるのだが、その装備がよりによって、予備も含めて揃いも揃って整備見直しに遭ったらしい。そして・・・
「こんな時に限って、鱗が必要な依頼が殺到するっていう・・・・・・」
うん、勿論だが、冒険者ギルドや国も流石に出来すぎだろと、事件性を疑ったのだが、マジで事件性の欠片すらなく、本当に偶然であると言うから質が悪い。更に、そんな中で鱗が必要な依頼が殺到したのも偶然と言うか、必要になったのが重なったと言うから、配送ギルドも冒険者ギルドも頭を抱える事態になってしまった所に自分の情報が飛び込んできたと言う訳である。
『配送ギルドとしても困るのよね』
そう、配送ギルドも儲かると同時に困るのだ。なにせ、本来は納品されるものが納品キャンセルの報告を受ける為の人出に加え、それを届け先に報告する為の人出が必要になる。勿論、鱗製品以外にも配送するものがあるので、このままだと現場も大混乱と言う訳だ。
「報酬は?」
『『鱗1枚につき、金貨10』』
大判振る舞い?!・・・・・・って程でもないか。それぐらい切羽詰まってると言う事の証でもあるだろうしね。う~ん、後は聞いておくべき事聞いておくかね。
「討伐ダメなので?そっちだと鱗大量に取れそうですけど?」
『あ~。それが出来ないのですよ』
カリンさんが苦笑しながら話す所によるとこうだ。火山ドラゴンはこの浮遊大陸が飛ぶ前から火山に居た、所謂空を飛べる翼竜ではないドラゴンで、現在、浮遊大陸に現存するのはこの1匹且つ、火山が居心地が良いのか動かない所為で繁殖している様子も無しと言う事で絶滅危惧種になっているようだ。更に、他の所に居るレッドドラゴンとは違い、長らくこの大陸に居た所為で変異と言うか、この大陸の名物になってたらしい・・・・・・なんで?
「大変分かりやすく言うと、なんで保護してないの???」
『『ぐふっ!!!』』
自分の言葉に、2人のマスターはダメージを受けたように仰け反り、女性陣もうんうんと頷いている。まあ、確かにドラゴンの保護自体は難しくはあるが、なんでやってないんだろうね?
『それがですね・・・』
ゴルさんの説明に全員が目が点になったのは無理もない。いやもうね、思わず聞き返したいぐらいである。なんでって・・・
「火山に限り、歴戦の冒険者がゲロ吐くほど強い・・・ですか」
一見、かっての溶岩龍に似ているが、その脅威度は火山で戦うと言う状況に限り、あの溶岩龍の倍以上あるらしい。溶岩龍はフィールドの溶岩自体を操る事は出来ない。ところが・・・
「フィールドの溶岩の操作は勿論、ブレスに溶岩を纏わせる事が出来る・・・ですか」
これが脅威である。溶岩は当たれば人間ではもちろん即死。どれだけ対策しても大怪我する要因である。ついでに言うと、フィールドが火山であり、そこの溶岩を操れる。それだけ・・・いや、それこそが脅威である。地球的に言うなら絶滅危惧種であるが、その素材は欲しい。そこで危害を加えないと言うアピールである落ちた鱗を拾う事で今までやって来た・・・・・・と。んで・・・
「その鱗は芸術品であり、高い温暖性を持つから結構な所から納品依頼が来ていると・・・」
要するに、コレ、懐炉の中身である。しかも、ドラゴンの鱗なので壊れにくい上に持続性が高いので、この大陸自体が飛んでおり、温暖とは言えない浮遊大陸と言う環境ではかなりの需要を持っていると言う訳だ。それが、今回トラブルで規定量取れなくなっているとなれば、まあ、そら拾う事が出来る者を必死で探すわな。更に言えば、季節が巡り、秋が見えてくるかもしれない季節の前に採集しておかねばならないらしい。理由が・・・
「冬眠するから・・・・・・ドラゴンなんですよね?」
『ソノハズナンデスヨネ』
いや、まあ、変温動物と言うか、トカゲの仲間と考えれば不思議は無いんだけど。何故か、秋と言う冬の訪れの予兆をいち早く察知すると、マグマの海の深い所まで潜ってしまうと言う。勿論だが、そうなるとどんな装備があっても追いかける事が出来ない。なんと、サラマンダーすらギブアップする深度らしいからね。
「ドラゴン?っーか、ニーt・・・・」
『『すいません。それ以上は勘弁してあげてください』』
うん、まあ、ここまでにしておこう。依頼に関しては女性陣も頷いてるので、受ける事にする。
「お受けしましょう。大体、鱗が落ちてる辺りを示す地図とか貰えるんですよね?」
『『勿論です!』』
お、おう、そこまで切羽詰まってるのか・・・・・・う~ん?
「念の為聞きますけど、最低何枚拾えば?後、現在までに最高何枚拾えてましたか?」
『拾えた数に関してはアイテムボックススキル無しで最高で2枚、スキルありなら10~15枚ですね。鱗自体が大きい事、鱗を持っていれば並のモンスターが近づいて来ないので無しでも行ける事を確認しております』
『拾う数に関しては拾えるだけとしか言いようが無いんですよね。落ちた鱗が何枚あるかは運にもよりますし、それにお分かりになるでしょう?』
ゴルさんの言葉の後のカリンさんの言葉にああ・・・となるシェルター内。要するに、需要がありすぎるが故に出来る限り拾って来て頂きたいって事ね。調べたい事もあるだろうし。こりゃ、思ったより面倒な仕事になりそうだ。
「承知しました。正確な地図のご用意、お待ちしております」
はぁ~~~~~~、本当に厄介な依頼だよ。でも、報酬は本当に美味しいけどね。
本当に久しぶりの依頼となりました。うん、火山地帯の溶岩操れる敵と敵対するぐらいなら、剝げた鱗を採集する方が安全ですよねと言うお話。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 9
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV1




