85話 カジノ船騒動 後編
『馬鹿な!ギルドの奴等、どこだ!どこから入りやがった!』
現在、深夜のカジノ船は大パニックである。そりゃそうだ。大勢のスキル封印の特技やスクロール持ちのギルドナイトが唐突に船内に出現し、制圧・摘発を行っているのだから。
「証拠を中々掴ませないなら証拠があればいい。それだけだからねえ」
まあ、ここまで言えばお分かりと思う。まずはルイさんから何人かの、今日からしばらく休暇を取る予定のギルドナイトをお借りした。勿論、応接間以外には入れないようにしてではあるが。ナイトの皆さんも、まさか即日来る訳なさそうだし、長期戦になりそうと予想していたので、この結果にはゲラゲラ笑っていた。そして、自ら犯行を語ってくれたカジノ船オーナーの言質などを映像用の魔石に記録。現在に至ると言う訳だ。
「まあ、普通は幼女の中にギルドナイトが多数居ますとか誰も信じませんよね」
ぶっちゃけ、本当に即日来たのは予想外だった。これだけは本当である。あ、転生者のオーナーも捕まった。なんか、海に逃げようとしたようだが、すでにギルドの船が包囲し、スキル封印でスキルが使えなくなり溺れた所を確保されたようだ。なんで、ここがあ!とか喚いていたが、これまた簡単である。
「なんでってなあ、ギルドナイトが連絡用の魔石やギルドがナイトの居場所分かるアイテム持ってない訳ないよな」
全員が頷く。まあ、向こうにとってはそもそも、シェルターの中にギルド関係者が居るのが予想外だったんだろうけど。
「まあ、これでカジノ船については片が付いたかな?」
「まあ、解決だね。ただ、どうして、犯罪に手を染めちゃったのかな?私達と同じ所から降ろされた転生者でしょ?」
オウカさんの言う事は分かる。転生者はそれなりの知識を持っているし、ラノベ的展開も知っている。だが・・・
「うん。でも、もし転生者がお約束展開を願ったとしたら?そう、例えば、チートを大量に持つ代わりに・・・赤ちゃんからの転生!とかね?」
『あっ!!!』
そう、赤ん坊に転生した。それが重大な間違いであったと言う事だ。確かに、赤ん坊の中で意思を持っていれば思想に染まらないと思うかもしれない。だが、赤ん坊の頃からの教育は思想を容易く変えられてしまう。つまり、赤ん坊から育った転生者は、育成環境によりはするが、意思も思想も容易に変えられてしまうって事だ。今回の彼はそのパターンの典型だったって事だな。
「必ずしも悪徳貴族系のお話から善意貴族が誕生するとは限らんって事だなあ」
『ああ~・・・』
もしかしたら、更生の余地があるかもしれないし、全く無いかもしれない。うぅん、色々と世知辛い事件だったなあ。
「ふ~む?」
さて、現在、あれから港に戻った後も歩兵愛の町で自分達は足止めを食らっている。と言うのもだ・・・
「まあ、分かる、分かるんだがなあ・・・」
「まあ、しばらくはゆっくり出来なかった分の休暇と思いましょう」
レインさんが苦笑しつつ言う。あの後、何かの陰謀に巻き込まれたかと言う訳ではない。事件ではないがある意味事件ではある事件とも言えるかもしれない事に巻き込まれているのである。
「カジノ船の所有権オークションかあ」
そういう事である。事件の解決に貢献と言うか、解決してしまった自分はカジノ船を手に入れてしまったのである。うん、まあ、オーナーが逮捕というか、極刑は確実で、船員に関してはアイテムボックス、シェルター能力持ちには密輸容疑がかかってて、その他の船員に関しても共謀の疑いありで、船を動かす奴隷に関してもオーナーが極刑確実で解放なのだが、やはり、こう能力の疑いの余地ありで拘留。で、そうなると船の所有権が空いてしまうので、事件解決の功労者である自分に回ってきたと言う事である。でも、ぶっちゃけた話・・・
「要らんよね、船?」
『 は い 』
満場一致でこうなる。まず、船を動かす知識はないし、船員を雇う伝手がない。いや、紹介して貰えばあるかもしれないが、そもそも・・・
「船は定期船使えばいいしね。と言うか、定期船ルート以外を周るなんて怖い」
『ですよね』
うん、こうなる。ぶっちゃけ、船は管理も大変だし、大きさも考えると相当大きなドックも必要になる。多分、歓楽大陸辺りに専用のドックがあるんだろうけど、今回の件もあって向こうの国が一先ずの接収する事になるだろう。船ってのは壊れないように管理や維持費とかもあるし、正直な所、シェルターがあるから絶対的に要らないとなる。
「んで、オークションって訳だけど、レインさん、こういう場合はどんぐらいの価値になるの、コレ?」
「そうですね。まず超大型船であり、武装もあり、元が娯楽施設船です。全ての要素に置いて・・・・・・金額は未知数とも言えますね」
「と言うと?」
「大型船、所謂軍船の納品とかであれば取引は見た事があります。ですが・・・」
あ~、そういう事ね。理解した。つまりだ、大型船を超える大型船であり、軍船にも転用可能な上に内部には娯楽関係が充実しており、噂に聞いてた闘技場用に魔物を捕らえる檻や大人しくさせる為の設備などもある。
「更に言えば、それまでついてた付加価値。転生者が作り上げたが付くとすると・・・」
「正直、他大陸の国々がオークションに参加してもおかしくはありません。ちょっと、いえ、かなりの準備期間が必要になるでしょうね」
オウ、なんか、事がメッチャ大きくなる予感しかしない。あれ?
「そういや、カジノ船の噂聞いたの歓楽大陸についての時ですけど、向こうに船に関する所有権ないんですかね?」
「港と言うかドックは土地を使ってるので接収してるでしょうけど、船に関しては個人の持ち物ですからね。おそらく、近日中にドック及び拠点にあった物が送られてくる可能性もありますね」
あ~、整備の為のアイテムとかもこのカジノ船貰うならそいつの物になるのか。所有権について、やけに書類の束があったのもこういう関係っぽいね。
「・・・・・・あの、レインさん?」
「なんでしょう?」
若干目が逸らされた気がするけど、これだけは聞かねばなるまい。
「試算、いくらになります?」
「ギルドマスターの私ですら見た事ないようなプラチナ硬貨のタワーが机の上に建つんじゃないですかね?」
マジですかぁあああああああああああああああああああああ?!
まあ、そう言う訳ですね。必ずしもラノベ展開のように思想、嗜好が変わらないと言うのは難しいって事ですね。
現ステータス
NAME
シロウ・カミヤ
SKILL
安全シェルター LV 9
健康的な体 LV MAX
投石 LV 1
鑑定 LV MAX
鍛冶 LV 7
念動 LV1