文字数チャレンジ(2)1000字程度
1040字
昔々、グリッタ王国という小さな国がありました。グリッタ王国のお城の側には、昼なお暗い森がありました。森の奥には、7色に輝く不思議な湖があると言われていましたが、誰も本当にはその湖を見たことが無いのでした。
まだ肌寒い早春の事でした。お世継ぎの王子様ブライト君が、森で迷子になりました。
王子様は今年で17歳になる背の高い少年です。柔らかに波打つ明るい金髪に、快活な青い瞳をしていました。少しだけニキビの見える、愛嬌のある顔立ちでした。
朝の散歩のついでに花でも摘んで帰ろうかと思ったのですが、気付けば知らない場所でした。暗い森をさ迷うこと2日。突然開けた場所に出ました。
「なんとまあ、美しい」
ブライト王子は、息を呑みました。目の前には、7色に輝く伝説の湖が御座います。そして、7色の湖の岸辺には美しい銀の竜が、力なく倒れております。それは冬の間だけ生きられる、冬竜という生き物でした。
ブライト王子が冬竜を見るのは初めてでした。銀の鱗が7色の泉に木漏れ日を反射する様は、例えようもなく美しいものでした。
けれども、竜の弱々しい姿に、ブライト王子は心を痛めました。
ブライト王子は、落ち葉を踏んで静かに冬竜へと近付きました。
「苦しいのかい、可愛そうに」
竜は、辛そうに瞼を挙げて、冬の夜空のような深い藍色をした瞳を王子に向けました。その瞳には、王子の気遣いへの感謝が見えます。
「ああ、いいんだよ。無理に眼を開けなくて。済まなかったね、辛いのに」
ブライト王子は、慌てて囁きます。銀の竜は、体も羽もだらりと伸ばして横たわっております。少しだけ離れて立つ少年王子に、竜が微かに笑ったようでした。
その気高い微笑みに、王子は胸の高鳴りを抑えることが出来ません。初めて感じる甘い心の疼きに戸惑いながらも、今消えて行く命の灯火を守れない不甲斐なさに、王子は唇をキュッと噛みました。
心優しいブライトは、せめて安らかに逝けるようにと、吹雪の魔法で竜を包んであげました。周囲の地面も凍って行きます。地面が持ち上がって出来た霜柱を、竜が億劫そうに食みました。
次の日も、また次の日も、王子は7色の湖に行きました。冬竜は、その度に王子の作る霜柱を食べ、だんだん元気になりました。
そして、嬉しい奇跡が起きました。春先に失いかけた冬竜の命が、すっかり冬を越したのです。
「ブライト王子、ありがとう。私は、シャインと申します」
竜はなんと、美しい姫になって王子様に御礼を言いました。それからずっと竜と王子は、幸せに暮らしましたとさ。
お読み下さりありがとう御座いました。
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