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異世界美将女群雄伝  作者: 不知火読人
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シュウゲン

 統一歴 二千二百九年 文月四日 転移百六日目 尾張



 赤塚の戦いと清洲攻め、那古野城の戦いに決着がついてすぐ後、那古野城に戻った信長により生け捕りにした捕虜の沙汰が下された。


 大和守家の有力家臣はほぼスナイパーライフルで遠距離から射殺され、生き残ったのは早々に降ることを決めた斯波義統の元家臣が多かった。

 兵の損耗も少なく済み、まずは伊勢守家攻めに対する準備も含めて完全勝利と言っていい内容である。


 信長は虜にした将兵に対し、常備兵として銭で雇われきちんと命に従うなら召し抱えると宣言し、その条件を飲んだものは召し抱え不満を訴えたものは追放した。

 今川に内情が伝わるのはまずいので美濃に追放したのだが、道三はそれを見逃す代わりに義龍との婚姻を催促してきた。


 それが記された書状を持って武蔵総合学園を訪れた信長は、自らの祝言もまだ上げることが出来ていないのにと苦い表情でクラーラ達に愚痴をこぼしていた。


 信長のおかげで穂村と生涯を共にする伴侶という立場を得た以上、房中術を体得しても彼女を抜きにして穂村と深い関係になるということに引け目を感じていたクラーラたちは、この際穂村の奥に入る者達で纏めて祝言を挙げればいいと提案した。


 これに対し信長は、

「伊勢守家との決着をつけてもその後に今川との戦が長引くやもしれぬ。祝言を挙げるなら時は今しかないやもしれぬな」

 と前向きにとらえ、尾張下四郡を領する豪族や美濃の国主の娘としてはいささか小規模かつ簡略的ではあるが祝言を挙げることを決めたのだった。


 盛大な式は伊勢守家、そして今川との抗争が一区切りついた後でやり直せばいい。


 目出たい祝いは何度やっても良いのだから。


 そう思って信長は道三に対しとりあえずの祝言を挙げる趣旨を説明した書状を出し、これに道三が乗ったことで一週間後に義龍の嫁入り行列が来ることが決まった。


 清州の利便性の良さに目を付けた信長はそこを流通の中心として居城とすることを決め既に引っ越しが始まっているのだが、それに加えて織田家と武蔵総合学園の代表者による評定、そして祝言の日程を組み、準備を始める。


 既に穂村達生徒会役員を始め印こそ結べなかったものの校内で能力の高い生徒や、数少ない秘名を得た生徒達は房中術の技能が使えるようになっており、校内で男女の交接は合意の上であるなら認められている。


 ただ場所は新たに商業科の校庭に建てられた夫婦寮でしか認められてはいない。


 穂村と女子生徒会役員達はそちらには住んでいない。

 未だに元から住んでいた生徒寮で個別に暮らしている。

 これは三郎信長に対する遠慮もある、彼女たちは信長という脅威のおかげで一致団結し関係を前に進めることを決意できたが、肝心の穂村はまだ実感がない。


 穂村は彼女たちを嫌っている訳ではないし、今まで良い関係を築けていた、好意的に接してきたつもりでもあった。


 だが未成年で未婚である自分にいきなり六人の妻が出来、更に義龍を加えて七人の妻を娶るという現実に対して違和感を持っていることも確かなのだ。


 穂村は理性ではそれが必要であり重要な事であることを理解している。


 しかし感情的な面で不安を覚えずにはいられないのだ。


 そしてクラーラから告白を受けて以後、元の世界では一夫一婦制だったから穂村が自発的に誰を選ぶのかを任せていたが、この世界では甲斐性さえあればどれだけ妻を娶っても構わないのだし、穂村を支える家中の者は絶対必要になると説明され

『そんなものかな?』

 と思い始めたのだが、自分なんかと結婚して後悔はないのか?

 とそれぞれに問うた。


 クラーラは

「わたしが教えたことを何でも一生懸命覚えようと努力し続けたほっくんを昔から好きでした」

 と返され、愛子には

「帰国子女で漢字もろくに読めなかったあちしに呆れることなく粘り強く分かり易く色んなことを教えてくれたことには感激したしその頃から大好きだった。でも振られるのが怖くて友達以上は望まないようにしてた。けどこの世界ならお嫁さんになっても大丈夫だよね?」

 と瞳に涙を湛ながらそう言われ、菖蒲からは

「中学の頃懸命に頑張るあなたを見ていると、わたくしも頑張る勇気を貰えて、気が付いてたら好きになってました。でも元の世界ではわたくしにはしがらみがあり、あなたの隣にはクラーラ様がおられました。それ故結ばれることはないだろうと諦めていましたが、この世界なら奥の序列はあっても愛することは許されるので転移したことに感謝すらしています」

 と微笑みながら告げられ、ちはやからは

「穂村君とは高校に入ってからの付き合いしかないですけど、一目見た時からかっこいいなぁって一目惚れしちゃって、生徒会に入ってからのあなたを見てると優しい子だなってもっと好きになっちゃいました♥ でも会長との仲を引き裂くような真似は出来なくて、苦しくて、でも諦める事も出来なかったからこうしてお嫁さんにしてもらえるなんて夢のようです♥」

 と幸せそうな表情で話をされ、聖子からは

「あんたあたしと結婚するのが嫌なの!?」

 と凄まれ、そうではないと誤解を解き”相手が自分でいいのか?”と問い直すと、

「あたしだけを愛してもらえる訳じゃないっていうのは悔しいけど、でも他の子もずっとあんたを好きだったんだから仕方ないよね……でもあんたのことを一番好きなのはあたしだから!」

 と顔を真っ赤にしながら答えたのだった。


 信長()になんで結婚する気になったのかを聞いたところ

「余の心に寄り添おうとしてくれたものはお主しかおらぬ。余を敬う者や導こうとするものは他にもおったが余を真に理解しようとしたものはお主だけだ。故に余の伴侶はお主しかおらぬ、それ故秘名をお主には与えた。余の生が終わろうと、この世が終わろうと余が愛するのはお主だけだ」

 と熱烈に口説かれた。


 彼女たちの心を聞いて穂村は心を固めつつあった。



 統一歴 二千二百九年 文月十一日 転移百十三日目 尾張 清州城



 嫁入り行列でやってきた義龍に穂村が本当に自分でいいのか? 嫌ならまだ帰ることもできるぞと本音を尋ねた所。

(わたくし)めと母は決して仲が良くはありませんでした、母は私めを認めて下さらず、妹たちを溺愛するばかり。ですが穂村様方に対することには意見が一致し『さすがわしの娘じゃ!』と褒めて下さったのです。私めはそれが嬉しく、その言葉を引き出すもととなった穂村様には感謝の念しかありません」

 おっとりとした口調でそう言って頭を下げると。

「我が秘名は帰蝶、これより穂村様を愛し、支え、覇業の助けを成す者。幾久しくお願いいたします」

 と命綱ともいえる秘名を穂村に明かし、微笑むのであった。


 それにより穂村がまた体内に嵐のような衝撃を受けるが、同時にそれぞれの内に納得できる理由が見え、彼女たちを幸せにすると心に決めたのだった。


 花嫁達が白無垢に着替え準備を整える間、穂村は信長の親族と義龍を送ってきた明智光安に囲まれる。


 信長の叔母織田信光からは

「那古野城の戦いにおける穂村殿の武者ぶり、古今無双の勇将としか呼べぬ者でありましたな。上総守様が穂村様に嫁げるなど弾正忠家としては望外の喜びにございます。三郎をよろしくお願いいたします」

 と一門衆筆頭の立場として喜びとともに挨拶をする。


 次に義龍を送ってきた明智光安には

「我らが姫の事よろしくお願いいたしますぞ」

 と念を押された。


 信長と同じ卵子の組み合わせで土田御膳が産んだ織田信勝ら妹たちに対して穂村は

「これよりこの穂村がお主等の義兄となる、上総守信長に従えぬ者は我に従えぬ者とみなす、ゆめゆめ忘れることなきようよろしく頼むぞ」

 と、勘十郎信勝を睨み据えながら闘気を撒き散らしながら挨拶する。


 その場にいた家臣も含めてその威に圧倒される。


 例外は誠の隣に座る信広のみであった。


 土田御膳は信秀が亡くなる前に寺に押し込められ、今は信秀の菩提をともらっている。


 一益や時々那古野や古渡に戻っていた政秀より話は聞いていたが、ここまで桁違いの武威を放つ者が複数人いる武蔵総合学園の人材を見て織田家中は静まり返る。


『うつけ』と侮っていた姫と結び一日にして尾張下四郡を平らげた傑物達が婚姻同盟として、当主の夫としてこれより彼らの上に立つのだ。


 目にするまでは不満もあったが、逆らえばどんな目に遭わされるかわからない。


 それだけの差を感じずにはいられなかった。


 その後上座に穂村と奥の序列ににより座った花嫁達が並び祝言が執り行われ。華燭の典を祝われるのだが信長に二心を持っていた者達の顔色は悪くなるばかりであり、誠と優一によりそれらは漏らさずチェックされたのであった。


 そして一部の者を除いて賑やかに式が滞りなく進むと穂村達は初の床入りの為寝所へ向かうのであった。


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