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これがもし恋のうたなら

作者: 曲尾 仁庵

 これがもし恋のうたなら


 いつか私にもわかるだろうか


 小さな針を刺すような


 この胸の痛みの意味が




 世界は薄いヴェールを一枚


 隔てた向こう側にあって


 どこか作り物めいて見える


 視界はいつも


 少しだけぼやけていて


 目に見えるものすべてを


 心のどこかで疑っている


 私とすれ違った誰かは


 本当に生きているか


 私と言葉を交わした誰かは


 幻でないと言えるのか


 私はただ


 私の妄想を生きてはいないか


 私は存在しているか


 生温くまとわりつく


 漠然とした不安と共に


 ぼんやりと


 生きている




 名も知らぬ人を


 電車の中で


 毎日


 見ていることに気付く


 乗る電車が同じだけの


 ただすれ違うだけの人


 ああ


 きっとこの人も


 ただそれだけの人なのだろうと


 そう思いながら


 いつの間にか


 少し痛い




 何を望んでいるのか


 何を期待しているのか


 ヴェールの向こう側の世界に


 何を求めているのか


 イヤホンで音楽を聴くあなたを


 ぼんやりと見つめながら


 問いかけている




 これがもし恋のうたなら


 いつか私にもわかるだろうか


 あなたの実在を


 手を伸ばせば触れられることを


 好きも愛してるもわからない


 間の抜けた私でも


 これがもし本当に


 恋のうたなら


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― 新着の感想 ―
[一言] 砂礫零さんの割烹から飛んできました! この感覚凄くよくわかります! 私も初恋はこんな感じでしたw 若い頃って自分を含めてこの世界が本当に実在しているのかってことにたびたび疑問を持っていたので…
[良い点] 切ない……! 人って時々、存在すること自体がというか、自分に縛られること自体が悲しいよね、と思いました。 そうした感覚を、恋と擦り合わせて表現とか、美しすぎて涙でます……
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