プロローグ
作者の気分転換で新作を書きました
此方は気分転換の為、基本的に不定期更新となりますが、読んで頂けると幸いです
西暦XXXX年冬。
人類は悪影響も無く、安全な無限のエネルギーを生み出した。
それは「核」とは別のエネルギーとして、「ニューロ」と呼ばれ多くの動力となった。
飛躍的に科学は進歩し、人々は繁栄を謳歌していた。
だが、その栄華に影が差した。
某国がニューロを密かに兵器に転用してしまったのだ。
そして、長年怨みを抱いていた隣国に対し、その兵器を使用。
その結果は凄まじい物だった。
首都は消滅、近隣にも壊滅的な被害を齎した。
そして、国際的に非難された某国は、ニューロ兵器を武器に世界に宣戦布告。
当初は、ただの小国と侮っていた大国も、ニューロ兵器の威力に恐怖した。
その後、戦争は激化し、多くの国を巻き込んだ世界大戦となってしまう。
結果、某国は押され、ニューロ兵器の製造が追い付かなくなった時、遂に禁断の兵器を使用してしまった。
核。
ニューロが誕生してから廃れていき、保有する国家も少なくなった超兵器。
それを各国に対して発射。
大半は迎撃に成功したが、失敗した国は核の炎を受ける事になった。
それを受けて、周辺国も対抗して核を使用。
世界中で核の炎が上がり、大規模な汚染を引き起こした。
その汚染により、森林は枯れ、大地は死の平野となってしまった。
残された人々は小さなコロニーを建造して生き残っていた。
だが、しぶとく生き残っていた某国が、そのコロニーに対して戦闘を仕掛ける。
残されていた人々は、汚染された大地でも生き残れるように、身体の一部を機械化していた。
その集団に手酷く返り討ちにされた某国は、その戦闘集団に対し、自律型戦闘兵器を開発し、対抗。
戦争は泥沼化したが、度重なるニューロ兵器を使った某国は、遂に世界統一を宣言。
だが、それに反発する勢力は集結し、レジスタンスを結成。
レジスタンスも自律戦闘兵器を開発し、某国に対抗し続けた。
その某国とは目と鼻の先に隠されたまさに「灯台下暗し」の位置に、一つのレジスタンスの秘密基地があった。
十数人がそこに隠れ住み、対抗勢力の筆頭としてレジスタンス活動しているメンバーだった。
「リーダー、手に入れた情報ですと、新型自律兵器の性能は最早、我々の倍以上のようです」
「製造工場の位置は?」
「山向こうの都市部外周にあるようです」
暗いライトの下で、数人の男達が机を囲んで話し合っていた。
彼等はただの人ではない。
身体のほとんどを機械化した機械兵であった。
故に、休憩や睡眠をほとんど必要としないが、定期的にメンテナンスを受ける必要があった。
リーダーと呼ばれた男は、左目と左腕を失い、身体中に傷を付けている。
資材が尽きかけている今、機械化していても修理する事ができない状況になっていた。
「こちらの戦力は?」
「ここにいるメンバー以外ですと・・・最早・・・」
報告する男が悔しげに言う。
最早、レジスタンスは瓦解寸前にまで追い詰められていた。
某国が作り出した自律兵器は無慈悲に抵抗している人々を狩り続けた。
その結果、多くのコロニーが消滅し、人々は死んでいった。
レジスタンスは対抗しながらも、和平交渉を続けていた。
だが、某国から毎回告げられるのは、「服従し奴隷として生きる、か、惨たらしく死ぬか」の二択だった。
「例の計画はどうなった?」
「最終調整には入りましたが・・・」
「一度、発動すると制御不能です」
ニューロが誕生してから技術的に試みられた事がある。
それが、既存の超エネルギーだった「核」と、新世代の超エネルギー「ニューロ」の融合。
だが、その二つをあわせると、瞬時に超膨大なエネルギーが発生し、大被害を齎してしまう。
故に、誰もが不可能と諦めていた。
だが、ここに来てレジスタンスは遂に融合に成功した。
ニューロと核の融合は、既存の核兵器を更に小型化させることに成功していた。
その名を・・・
「ニューロクリアリアクター・・・これに賭けるしか我等に残された道は無い」
核と同じ名を持つ超兵器にして、ニューロと核の融合した超物質。
それを自律兵器の1機に搭載し、某国の新型自律兵器工場に侵入させ自爆させる。
その威力は、少なくとも半径10キロを瞬間蒸発させる程の超熱量を発する。
搭載予定の自律兵器は、地下工場で製造されている。
動力は小型ニューロ動力炉を内蔵し、単機で長期間の戦闘を継続可能。
装甲は戦車砲の直撃にも耐える特殊複合装甲。
フレームや内部機構も耐火・耐爆・耐電仕様で、防水も完璧。
多数の銃火器を搭載、補助アームによって換装し状況によって使い分ける。
そして超威力の電磁加速砲を搭載。
周囲の状況を詳細に索敵する為の、滞空型リコンユニット。
もし破損した時の為、小型修理機を3機装備。
そして、超破壊兵器「ニューロクリアリアクター」を搭載。
現在のレジスタンスが持つ最強の自律戦闘兵器。
機体に名前は無い。
ただ形式番号があるだけだ。
「それで、AIは?」
「入手できたのは、型落ちの学習型だけです」
「学習型か・・・確か簡単な対話は出来るが、本作戦には不要な機能だな・・・」
「AIの方は調整不可能です」
「それでやるしかないか・・・」
リーダーが席を立ち、松葉杖を突きながら工場に向かう。
その後に男達が続く。
そして、リーダーの目の前に2メートル弱はある鉄の巨人が現れる。
鉄と言っても、その色は赤茶けており、素材もほとんど鉄ではないのだが。
全体的に角張ったフォルムをしており、頭部以外にも複数のカメラレンズが付いている。
機体設計は戦争中期の物であるが、そのフレームから外装までが頑丈であり、今回の作戦の為に復元されていた。
「NX-Gタイプ、製造番号0358742起動」
その声と共に、機体内部で静かに音が響き、各所にあるレンズが光を放つ。
そして、自律兵器が完全起動した。
「本機に指令を与える、これより指定座標に向かい新型爆弾を起動し、施設を完全破壊せよ」
「・・・指令確認中・・・」
自律兵器が確認するように音声を発する。
「本作戦を邪魔する障害は、その実力を持って排除せよ!」
「・・・任務了解・・・」
リーダーの命令で、自律兵器が壁に設置されていたライフルや、ショットガン等の銃火器を全身の武装ラッチに接続していく。
そして、リペアボットを左右の肩に1機ずつ、残り1機は背中に搭載する。
補充用弾薬箱も、両脚や背中の空いているラッチに装備する。
「では、出撃せよ!」
リーダーの言葉で、自律兵器が隠された秘密基地より歩み出た。
ガシャンガシャンと足音を響かせ、ある程度基地から離れると周囲を確認し、背中と脹脛にあるブースターが炎を吹き出す。
徐々に加速し、自律兵器が勢い良く地面を滑る様に進んでいくと、遠くに動く物体を確認する。
某国が放った自律兵器。
前世代の主力戦車だった物を改造し、自律兵器の上半身を組み合わせたタンク型。
それがこちらに向かっている。
「・・・障害と確認、排除開始・・・」
自律兵器の視界に菱形のロックマークが現れ、ピッとタンク型に菱形が重なる。
瞬間、持っていたライフルが連続して火を噴く。
そして、遠くにいたタンク型の装甲で火花が散り、タンク型は持っていた盾を構えて射線を遮る。
盾で防がれたのを確認すると、一気に加速し接近する。
タンク型が持っていたのはカノン砲と呼ばれる、一撃の威力は高いが連射が効かない武器だった。
カノン砲の射線を予測し、その射線から外れるように左右に機体を振りながら接近し、加速した状態のままタンク型を盾毎蹴り飛ばす。
機体の重量+加速力を加えた蹴りは、タンク型の上半身と下半身の接合部を簡単に破壊し、行動不能に陥らせた。
そのまま、動けない上半身に向けてショットガンを接射し、完全に機能を停止させる。
タンク型が持っていたカノン砲を回収し、余っている武装ラッチに接続し、予備弾倉も奪う。
手持ちの弾薬には限りがある。
任務遂行の為に、道中で出会う機体から武器や弾薬を奪い取り、自機の物とする。
この自律兵器に感情は無い。
感情が搭載されている自律兵器もあるらしいが、任務に感情は不要である。
ただ、命令された事を完遂する。
それがこの自律兵器に求められた事であった。
それから数度の戦闘を行い、敵機の持っていた銃や弾薬を奪った。
ダメージらしいダメージを受けず、目標に向かう。
そして、禿山に近い山に到着すると、目の前に巨大な洞窟が見えた。
「****鉱山」
前部の看板の文字が削り落ちている為、読み取れないが昔の坑道らしい。
インプットされているデータから坑道のデータを探す。
すると、かなり古い地図データの中に座標が似ているデータを見付ける。
どうやら、この坑道を通れば目標近くに出るようだ。
迷わずに坑道に入り、地図データを元に進む。
そして、坑道の中ほどまで進んだ時、異変は起きた。
巨大な地震と、視界が一気に砂嵐になる。
自律兵器は慌てずに、その場で片膝を突いた状態で停止する。
そして、揺れが収まるまで、自機に起こった異変を調査する。
砂嵐の症状は電磁パルス、いわゆるEMPを受けた時のような症状に似ているが、その威力が桁違いに強い。
この鉱山の近くで核兵器でも発動した可能性がある。
自律兵器はAIシステムを守る為に、そのシステムを一時シャットダウンした。
しばらくして、搭載していたリペアボット達が動き出す。
周囲は揺れもEMPらしき影響も収まっていた。
リペアボットがコードを伸ばし自律兵器と繋がると、システムチェックを行い始める。
そして、自律兵器のメインシステムが復帰し、立ち上がる。
「・・・システム、リチェック完了・・・コンディション確認・・・オールグリーン・・・」
徐々にシステムが復帰していく。
そして、周囲を再確認する。
壁が少し崩れているが、通行に問題はない。
リペアボットを搭載し、坑道を再度進む。
さっきの揺れやEMPが核の影響であるなら、早くこの坑道を抜けなければならない。
そう判断し、進んだ先で自律兵器は足を止めた。
データでは直線のはずが、坑道は左に大きく曲がっていた。
古いデータであるから、データに間違いがある可能性がある、と判断しそのまま坑道を進む。
だが、しばらくして、その推論が間違いであると自律兵器は判断した。
坑道に入る前に、データから推測した突破時間を倍以上過ぎているのに、未だに出口に到達しない。
それに、整備されている様子から、ここは天然洞窟でもない。
とにかく、どんどん進む事にした。
さらに数時間進むと、目の前に光が漏れる壁が見えてきた。
それに近付くと、それが坑道の入り口を塞いでいる板だとわかった。
ただの板如きで、自律兵器を止められる訳もない。
自律兵器はそのまま、止められていた板を破壊して外に出る。
センサーが太陽の光で一瞬ホワイトアウトするが、すぐに調節される。
そして、目の前の光景を確認して、自律兵器は歩みを止めた。
一面の緑。
周囲は木々が多い茂り、足元には雑草が生える大地。
自律兵器は周囲を再度確認する。
そして振り返って自機が通った坑道を見る。
「*****」
文字が読めない。
謎の象形文字のような文字が、坑道の上に掲げられていた。
状況を確認する為に、肩からリコンユニットを発射する。
パシュンッと軽い音がして、2つのプロペラを持つ細いユニットが飛ぶ。
そして、周囲のデータを自律兵器に送る。
大気、異常無し。
大地、汚染無し。
植物、異常無し。
次々と有り得ない情報が自律兵器に送られてくる。
世界は核戦争を起こした為に、至る所で汚染が進み、最早、死の星になりつつある。
たとえ、それがコロニーの中であっても同じだ。
それが、ここには一切の汚染も異常もない。
座標を確認しようにも、表示されるのは「通信エラー」の文字。
まるで、衛星がすべて消えたかのようだ。
そして何より、先程の核爆発があったとされる影響が無い。
とりあえず、上空に浮くリコンユニットを回収して歩き出す。
ここが何処なのか不明だが、任務を果たす為に情報を集める必要がある。
だが、この時の自律兵器は知る由もない。
自機を含め、この先に大きな運命が待っていることなど。
此方を読んで頂き有難うございます
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