料金清算前
「アイテテテ」
俺のタクシーの屋根に落ちてきたのはお客様だった。
「ちょおおっとおおおおおお!」
俺の周りに野次馬が集まったんで逃げられないよ、目撃者いるし。
俺は直ぐにガラケーで110番したんだ。
「ターゲットはレベル3以上の武装、コンバットアーマーの使用許可を!」
なんか男の娘が腕時計に向かって叫んでる。新しい腕時計型スマホかな。
そんな事はどーでもいー!
俺は泣きそうになりながらタクシーの屋根を見た。
もう、今日は営業は無理っていうか1週間は修理工場行きだよ。
今年買ったばかりの車だよ。
車両本体価格400万、タクシー仕様にするのに80万、税金合わせて500万こえてんだよー!
終わったよ、個人タクシーになってまだ1年なのに終わっちゃったよ!
何が何でもこの男の娘に弁償させようと顔を上げると目の前に居たはずの男の娘が居ない。
「行くぞ!」
イクゾジャナイヨネ、どこ行くの、逃げたら許さんから!
野次馬が、おお!とかいって上を見てたんで俺も見た。
男の娘がビルの3階位の高さまでジャンプしてんだよ。
有り得ないよね、人間じゃないよね、男の娘かと思ってたら何かちがうよ!
でもって男の娘の体が光ったんだよ。
何なんだよあの男の娘は!
そのままビルの破れた窓ガラスに突っ込んで行った。
音しか聞こえなかったけど凄い音だった。
殴り合ってるんだろうか、でもあの音はコンクリートが崩れるような音のような気がしたので、不安になってきた。
とうとう土煙まで上がってきてビルの中から人が悲鳴を上げて飛び出してきた。
もう、この場から離れようと思ってたんだけど料金清算してないし修理代も請求するのに身分証見せてもらわなきゃ後で困るから俺は少し離れたとこで男の娘を待ってた。
警察官もきたし消防車も来た。あとは男の娘がお金と身分証持ってくるだけかーって思ってたらビルがコンクリート粉を撒き散らして俺の目の前で崩壊した・・・。