雨に歌えば
アメリカ合衆国には1時間で着いた。
もう、俺の相棒は変わってしまった。垂直離着陸できるわマッハ10で巡航してるわミサイルをビームで撃ち落とすわコクピットじゃ俺に話しかけてくるわでどーしたらいいのか分かんないよ。
反重力エンジンなんだと、俺のタクシーのエンジン。それくらい出来ないとマクシミリアン様は重力特異点から脱出できないよね。
飛んでる間は全部自動操縦なんだけどさ、もしかして地上も本当は自動で走ってんのかな、俺はお猿の電車のお猿さんかも知れない。ゴリラです、すいませんでした。
タクシードライバーとしては、こんなにかなしい事はない・・・。
「ミサイル撃ってきたのあんたんちだよね」
アメリカ合衆国大統領が土下座してます。
「あのさあ、識別コード出してたの分かってるよね」
大統領は身動ぎもしないで『うちのもんが大変失礼しました』って泣いてる。
「コーデル伯爵様には何卒今回の事をご内密におねがいします!」
多分、軍の一番えらい人だと思う。
カンカンに怒ってるサキさん。
大統領の襟首つかんで立たせると、この始末どーつけんだ!オラ!オラ!オラって頭をグラグラさせてる。
あれだよね、堅気じゃ無いよねサキさん。バウンティーハンターってみんなこんな感じかな。怖いよね宇宙って。
「帰っても良いんだぜ、なあー鈴木、ソーダヨナー」
揺すってるよ!大統領を身も心も揺すってるよ!。
俺はサキさんと目を会わせないようにしながら『そうですね、サキさんの言うとおりだと思います』と答えた。
少しでも距離を置いとかないと、サキさんがいなくなったら俺は殺されるっぽいじゃん!米軍特殊部隊に。
「是非ともこの件はこれでご勘弁下さいませんでしょうか」
財務省の係官が電卓をサキさんに見せる。
10,000,000,000$かな、日本円に置き換えるのももう面倒くさいや。
人の命はお金には換えられないよね。ましてや相手は地球をぶっ飛ばせる爆弾抱えてるっていうしね。みんなまとめて逝っちゃうより良いよね。
「おい、ちょっと湿気てねえか」
もうやめてあげようよサキさん!
サキさんが会社に連絡すると今回の事は財務省の係官が出してきた金額で手を打つ事になった。
もちろんテロリストの事については別にお金が払われるんだってさ。
堅気じゃないよねマルコ傭兵騎士団株式会社って。
それでも金額は安いんだってさ、コーデル宇宙帝国的にはね。
マクシミリアン様の第二の故郷だからだって言ってた。
そんなこんなで俺とサキさんはニューヨークの最高級ホテルに居る。もちろん同じ部屋だ。気が休まらねーよ!
下着の着替え以外全部俺がやることになっちゃったんだ。
大統領の事を揺すってた時の俺の態度が気に入らないんだってさ。
タクシードライバーから奴隷だよ、奴隷解放したアメリカ合衆国で今更奴隷だよ。
まあ、そこまで酷く無いんだけどさ。
掃除洗濯はホテルの従業員がやってくれるんだけど、着替えからマッサージ、お風呂で背中流させるのには参っちゃったよ。
自制心ギリギリなのに、わざわざ背中を流させるのは拷問だよ。
俺は抱き枕でも十分きついっていったのになー。
サキさんの背中はすべすべでした。
お尻も可愛かったです。
ニューヨークに降る雨の中を無心に走っています。