うどん
30年前に或る異世界人がこの地球に転移して来たんだって。
それでその異世界人は地球で事業を始めてあっという間に大企業を育て上げて世界一のIT関連、軍事、医療なんかの財閥を作り上げたんだって。
財閥の名はコーデル財閥。総帥の名前はマクシミリアン・コーデル。
知ってるよ俺、有名人だもん20万人もの大集団拉致事件起こしてどっかに消えたとんでもない犯罪者。
サキさんが教えてくれたのはマクシミリアンは自分のきた世界と地球を救った英雄なんだってさ。おかしいよね、大集団拉致事件起こしてるのに。
マクシミリアンって言ったら、『様をつけろやコノヤロー!』って言いながら殴られた。野蛮だよ宇宙人。
そのマクシミリアン様は世界中の権力者に友人がいて、その人達に匿われたのか弱みを握って脅して匿わせたのか、どこか誰も来ないとこで自分のきた世界から持ち込んだ魔法と地球の技術を融合させて科学技術の発展に尽くしたらしい。
そんな話を一つのベッドの中でサキさんから聞いてる。
何もないよ。
季節は冬真っ盛りで気温は1度あるかどうか。俺のアパートは築20年は経ってる木造しかも断熱材が入ってないんだよ。
この部屋に引っ越ししてきた時エアコンが付いてなかったんで電気屋さんにエアコン付けて貰おうと頼んだんだけど、外の機械と中の機械をホースで繋ごうと穴を調べたら無かった。
大家さんに穴をあけてもいいと了解を貰って業者さんに工事してもらったんだけど、その時『ここ断熱材入れてないんですね、こりゃあ大変だ住むの』って笑われた、俺のせいじゃないのに。
そう言うわけで部屋の中はエアコンを暖房にして動かしても温かくない。
俺はもう慣れてるけどサキさんは寒さに弱いらしい。
『すごいよ、これってスラムなの。さすが地球だわ』
とかいって俺の布団の上掛けまで自分の寝てるベッドに掛けてる。
それでも寒いらしい、どれだけ軟弱なんだよ部屋の中は15度あるじゃん。
話を戻すと、隠れながらも地球を救ったコーデル財閥はその後、宇宙に進出したんだって。天才と言われる人をいっぱい雇ってて当時でも世界で最も進んだアメリカ合衆国の文明から50年は進んだ科学技術を有してたんだって。
マクシミリアンとその仲間で作った超空間航法の出来る宇宙船で地球を離れてアチコチの惑星を旅してたら、重力計数の違う宇宙空間に突入したんだそうだ。
そこで見つけた地球っぽい惑星に住む事にしたんだけど、文明レベルが日本でいう縄文時代。
あっという間に神様に祭り上げられたんだって。
そこでマクシミリアン様と仲間の皆さんは科学技術を更に発展的させてった。
ところでマクシミリアン様がいた空間は地球からみると時間がかなり速く進む
らしくて地球での1年がむこうだと100年なんだそうです。
マクシミリアン様はその惑星で科学技術を発展の中心に据えた大帝国を築いたそうだ。
ちなみにその空間は銀河がすっぽり入る位だそうです、凄いです。
更に驚くことに物理的に世界に影響が与えられる事のできる有機生命体がどの惑星にも居なかったらしい、天下取ったよね。
コーデル帝国はもう、1000年存在してて色んな惑星に関わってんだって。
コーデル宇宙帝国なんだそうだ。
久々に地球に来たマクシミリアン様(もう量子コンピューター内の住人)は第二のふるさとにガッカリして地球の友人にも会わずに帰ったらしい。
重力計数の違う空間の知る限りの惑星開拓を済まし、そこから出られるようになったマクシミリアン様は通常空間で旅をしながら惑星開拓してるんだって。
太陽系が100個位入るスペースを埋め尽くす宇宙船団で・・・。
サキさんはマクシミリアン様が開拓してきた星々の治安を守る警察機構の下請け組織、宇宙バウンティーハンター協会に加盟するマルコ傭兵騎士団株式会社の正規職員なんだってさ。
其れにしては雇用条件がきびしいよねって言ったら、歩合に夢があるんだって。
一髪じゃなくて一発当てれば一生ものなんだそうだ。
どっかの芸能人でしょうか。
そんな事より何より俺もマクシミリアン様の科学技術力でフサフサにしてもらおう、つては出来たし。
時々、サキさんが俺に抱きつくけどなんもしないよ。
いい匂いするけど俺は自分が制御できる小心者だ。
ヘンナコトシタラ怖いことになりそうだし、俺は気の小さい個人タクシードライバーなんだよ。
暖房器具代わりに抱きつかれてるのでも十分幸せじゃん。
この幸せを壊したくないでしょ。
お腹が空いたんでうどんを作れといわれたんでベッドからでると『寒いから速く作ってね』とカワイく言われた。
巧いよね人を使うの。
俺は急いで準備に取り掛かる。
買っておいた掻き揚げ天ぷらと卵と麺、蕎麦つゆをキッチンテーブルに用意してお湯を沸かしながらネギを刻み始める。
ガスコンロの火と湯気で少し部屋は暖まったと思う。