ポーション
歌舞伎町2丁目のデカいホテルに逃げ込んだ相手を追うサキさんを俺も追い掛けてフロア中駆けずり回る。
相手は180センチ位の背丈の男っぽい見た目の宇宙人。
どうみても吸血鬼に見えるけど、凄い速さで飛んだりはねたりしてるし、夜なんで街の灯りではハッキリわからない。
サキさんも銀色に輝くコンバットアーマーってののお陰で人間ではあり得ない速さと跳躍力で相手と殴り合ってた。
ビルの強化ガラスが吹き飛び、ロッカーがグニャっと曲がり、床に穴が空いていってる。
そこいら中から悲鳴が上がり泣き叫んでいる人が見えてる。
俺はサキさんから渡されたサングラスみたいな物に映し出される指示データに従って、武器が入ってるキャリングバッグを運んだり指示された通りのタイミングでサキさんに捕獲用武器を手渡したりした。
もう、ビルは何棟壊したんだか分かんないけど、歌舞伎町がパニックになってるのはハッキリ分かってる。
一応死傷者のカウントはゼロって出てるけど誰が数えてるんだか。
「クソ、大分回復してやがる。かなりの量の血を補給しやがったみてえだ」
サキさんは俺からパワーパックを受け取ってコンバットアーマーに装着すると直ぐに相手を追う。
その間に相手も逃げてるんだけど、この前失敗した捕獲作戦の時、追跡用の信号を発信するマイクロマシンが相手の身体に撃ち込んであったんだって。
サキさんが俺のアパートでのんびりしてたわけだ。
相手の位置情報がナビゲーションデータと共に俺の付けてるサングラスに表示される。サキさんに離されないように俺も必死に追い掛ける。
それにしても血の補給って言ってたけど、やっぱり吸血宇宙人なのかよ。
もう、俺の体力も限界かなって思ってたら、サングラスの表示にリポXの画像が映って骨伝道でバッグに入ってるそれを飲めって音声で指示された。
俺はリポXというよりビンの形がアリナミンZっぽいものの蓋を開けて一気に飲んだ。
喉が渇いてたし。
俺はとんでもないものを飲んでしまったようです。
目がシャッキリして力が湧き出て何でも出来る超人になったような気分。
ヤバい気がした。これアレだよね、もしかしたらもしかすると。
俺は超人になった。
気のせいとかじゃなくて、余裕でサキさんに追いついたから身体に変化が起きたんだと思う。
こういうの飲んでしまったけどって凄く心配になってサキさんに気持ちを通信で伝えた。地球上でも違法じゃないしこの業界じゃ、ここぞというときみんな飲むんだってさ。ああ、よかった。
俺が飲んだのは安心安全なバウンティーハンター必須の『ポーション』と言うらしい。
あんたどこから来たんだよ。
そんな疑問も湧いたけど、ゲームでよく出てくるモノっぽい名前なんでちょっと安心した。
けど、飲み慣れない物はきらくに飲むもんじゃないよね。
あとで身体にくるのを想像してなかったんだ。
しかも値段が300sd、日本円で300,000円。
そりゃあ効くわ、効かなきゃ詐欺でしょ。
俺が払うんだってさ、経費は自腹なんだって。
たった1時間で使った経費が300sd。
凄く不安になった。