ギャップ
「あの~それだけお金に余裕があるのなら高級ホテルでいいんじゃないでしょうかサキ様」
「ダメ、あんたはあたいのアシ。アシが常に側にいないと仕事が出来ないからね」
「ではわたくしも、同じホテルに泊まってというのは如何でしょうか」
「無駄な経費は認められないわ」
「私が自腹で出しますので」
サキ様はしばらく考えてたんだけど俺のアパートでいいやって言いやがった。
「もう、コレだけセッティングしちゃったし面倒くさいし、あんたの作るご飯ってお母さんみたいだから気に入ったわ」
面倒くさいんだろうなー、昨日帰ってきてから俺の部屋宇宙船のコクピットみたいにされちゃったもん。
いまさらだろうけど俺はどーでもいいのかよ。
コタツで寝るのもキツいから一度も使った事の無い来客用の布団出したよ。
「まだ早いからコーヒー飲みたい」
缶コーヒー出したらこんなもん飲めるかって言われた。
旨いんだけどな~マックスコーヒー。
しょうがないんで近くの喫茶店に案内する事にした。
ここは下町の商店街、午後6時。帰宅するサラリーマンや買い物の主婦や学校帰りの学生でごった返してる。
みんな普段着なのよ。銀座とか青山とか渋谷や恵比寿と違うのよ。ましてや突飛なカッコした人が新聞配ってる新宿とも違うわけ、確かに銀座は銀座だけど、おでんの具材とか持ち帰り用の焼き鳥とか売ってる北砂銀座なわけ。
その中にゴスロリ美少女がモデルさんみたいな歩き方で闊歩してる。
そりゃあ目立つよね。
でも三歩下がって俺が付いて歩いてるから誰も声掛けとか、ましてやナンパなんてしてこないよ。
たまに俺の知り合いのオバチャンが挨拶してくるんだけど『あんたいつからボディーガードやってんだい、タクシー運転手辞めたのかい、せっかく個人タクシー運転手になったってのにさ』という感じ。
馴染みの喫茶店にサキ様が入ると『おお!』ってなる。
その後、俺が入っても誰も気にしない。
だけどサキ様と同じ席に座ると『ええ!嘘』って驚く。
芸能人のマネージャーの気持ちってこんな感じかなって思った。
でもサキ様が口をひらいた瞬間、みんながっかりしてた。
完全にDQNなんだもん・・・。




