失望人生からのやりなおし
僕は高杉聖也 高校2年生、どこにでもいる普通の高校生。
変わったところがあるとすれば、昔からスポーツは全くできなかったけれど、知識については、1回目を通したものなら忘れない。
僕にとってはもう当たり前のことだけど、何故か周りのみんなは僕を天才、神童とよぶ。
この世界で生きるって簡単で、つまらないっ。
スポーツなんてのは、別に出来なくていい、この世は知識で、楽に生きていけるのだから。
「おい!あぶねえぞ!」
ん?なんだ?
そう思って振り返ると大型トラックが僕の目の前に迫っていた!
あ、これ間に合わない・・・死んだわこれー 僕の好きなラノベとかと同じ感じだ・・・
んーーー
「目覚めましたか?高杉聖也さん」
何処からともなく女性の優しい声が聞こえる
「ん?ここはどこですか?」
「ここは死後の世界。私は簡単に言ってしまえば女神と呼ばれる存在ですね。貴方はトラックに跳ねられ亡くなってしまったのです。ですが、貴方のその特殊な能力で別の世界を救っていただきたく、こうしてお願いにまいったのです。」
ん?特殊な能力?てゆーか名前も間違えてる?てか、死んだ?わけわかんねえ
「あの?俺の名前 雨宮 仁 っていうんですけど?あと、俺はトラックにはねられたんじゃなくて、運転していたほうなんですが?」
「ん?あれ? 高杉さんではない?・・・なぜ・・・」
なぜといわれても・・・
「信号青で直進してたら急に子供が飛び出してきたので・・・かわしたんですけど・・・?」
そう、あの子供が信号無視して死角から急に飛び出してきたもんだから、昔好きだったラノベを思い出して・・・
転生なんかさせるかって思いながらかわして壁にぶつかって・・・
しょんべん垂れ流しながら震えて尻もちついてる子供をみながら良かったと思って目をつぶったら・・・ここにいたんだ・・・
俺は記憶を思い出す。ほんのさっき起きた出来事を。
「そうでしたか・・・すみませんでした。本来であれば、雨宮さんがその子供を引いてしまい、ここに来る予定だったのです・・・貴方はそこからも何とか立ち上がり、数々の偉業を成し遂げる。そんな運命、大役が待っていたのですが・・・」
数々の偉業?大役?そんなわけがない。俺は・・・
「俺はただのトラックの運転手。前職はただの警察官ですよ?なんも役に立つ資格がなく、手に職もなく、そんな俺が偉業を成す?ましてや人を殺して、逮捕された後に?ハッそんなの・・・無理ですよ・・・さすがに耐えられない。」
これは俺の本心だ。高校を卒業してすぐに警察官となり10年をすごし、嫌というほど現実を叩きつけられ、糞みたいな仕事、警察を逃げるように退職、そして大型運転手になった。自分には何もなく、何も変えられない。そんな絶望の中のこの出来事。
正直・・・死んでよかった・・・この先に希望があったんだとしても、もう、疲れ切っていた。生きている意味もわからなかった。
もうとっくに・・・死んでいた。女神様のせめてものやさしさなんだろう。俺が偉業を成し遂げるなんて、あるはずがないのだから。
「あったはずの未来をお教えしても、なんにもなりませんね・・・失礼しました。貴方は・・・どうしたいですか?貴方の記憶は正直とても悲しいものです。ですが・・・貴方が過去に好きだったもの、ゲームや漫画そんな世界にいけるとしたら、どうしますか?やり直してみたいと、思いませんか?自由に生きたいと思いませんか?」
「やり直したい?そりゃ・・・やり直したいです、あの時を・・・俺の人生を、楽しい人生にしたかった。選択肢はものすごく沢山あったはずなんだ、それを全部、楽なほうへ流れてきてしまったんだと思います。後悔しかなかったんです。昔みたいにまた笑えるように、やり直したいですね・・・」
俺の記憶を見てくれたのなら・・・俺の気持ちを感じてくれたのなら、俺はそれだけで、とても楽な気持ちになれた。それをもう一度やり直せるなら、そんなゲームみたいな世界でやりなおせr・・・ん?ゲームや漫画の世界?
「貴方は自分に厳しすぎるのですよ。自分がしたいように、思うように生きてみてください。あちらの世界で目が覚めたら、まずはステータスと念じること、それからリストと念じること。いいですね? それでは、あなたにとって良き人生となりますよう・・・」
「ちょ!まっ」
女神はそれを早口で言い終えると、俺の言葉を遮るように目の前を暗闇が覆いつくした。
お読みいただきありがとうございました。