表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

青春に殺される

作者: Re:over


 もう一度だけ。もう一度だけでいいんだ。

 あと一瞬だけ。あと一瞬だけでいいんだ。

 君の、本当の笑顔を見せて欲しい。


 どれほど懇願したって君は意味のない表情で、価値のない言葉を返すだけ。


 君もまた、僕と同じように被害者なのだ。


 その美しい容姿から、『人形みたい』だと形容できるけども、本当の人形になってしまったかのようで悲しい。


 こんなことなら、青春なんていらなかった。空を支配する青と、冬の息の根を止めた春。これらに取り憑かれた僕は、彼女と同じ道を歩むだろう。


 彼女もまた、この二つに取り憑かれ、恋をしていた。僕のように。しかし、いくら人形のような美少女でも失恋することがある。君は失恋してなお、相手のことを忘れられずに苦しんでいた。


 青春にがんじがらめにされ、動けなくなり、いずれ死ぬ。もう、彼女は歩く屍同然たった。それなのに、彼女の瞳は明らかに生きている。そのせいで、僕は彼女に吸い寄せられた。虚無に満ちた世界へ誘われたのだ。


 屋上へ向かう僕からしてみれば、マイナスがゼロになったようなものだった。だから、君に依存するしか生きる術はなかった。逆を言えば、君のせいで《・・・》生きている。


 ということは、君が灰になった今、僕が何をすればいいかは明白だ。生きる術は燃え尽きた。失恋したって、夕飯は残さず食べた。君がこちらを振り向かなくたって、僕は生き長らえている。


 生きる術を失った僕は、彼女と同じように、また、前の自分と同じように階段を上るだけだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ