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都子ちゃんは晶君を嫁にしたい~女子力高い幼馴染が本当の女の子になっちゃった件~  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
番外編

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海神(わだつみ)の花嫁⑦


 海底ある社の拝殿に、多くの人が集まっていた。


 ワタツ様(マグロ)をはじめ、イカ、タコ、サーモン、海老、サバ、いわし、貝、あなご、ワカメにサンゴ、サメといったものまで、さまざまな種類の海洋生物っぽい雰囲気の人たちだ。回る寿司屋かな? お腹がぐぅと鳴る。

 どうやらワタツ様のお嫁さんの種族の代表者たちらしい。

 そんな彼らの前に置かれているのが――じゃじゃん!


 そこにあるのはシーフードカレーを中心としたさまざまな料理。

 海藻のサラダから始まりタコや白身魚のマリネ、赤身魚のカツに、バターソテー、から揚げに天ぷら――そう、カレーと相性の良い料理たちだ。ちなみに磯部揚げやちくわ、かまぼこはあたしの趣味だ。け、結構おいしいんだからね?


 そして皆は一心不乱に食べていた。


「カツが……このふっくらとした衣とカレーが合わさり、単体で食べるものと違った味わいに!」

「カレーパウダーで味付けされたこのバターソテー、なんと食の進むことか!」

「マリネやサラダのさっぱりとした酸味が、カレーの辛さと相まって至極の味わいに昇華されておる!」

「ちくわ……かまぼこ……あれ、意外と合う……? あ、このくにくにした触感結構癖になるかも……」


 各所からおいしさに喜ぶ声が聞こえてきている。

 だから晶、お代わりどんどん作っちゃって!

 手が足りない?

 あはは~、あたしに言われても……その、手伝うとどうなるかわからないよ? 

 え、あきらめてる? うぐ……しょうがない、出来る人を応援にやろう。


「タケさーん、フツさーん、手が足りないみたいだから、台所手伝ってあげて。あーもうほら、嫌な顔しないで行った行った!」

『『『『っ!?』』』』


『ったく、神づかいが荒い巫女様だぜ』

『しょうがない、で、どれを切ればいいんだ?』

『『『『っ!?!?!?』』』』


 というわけであたしは、カレーを一緒になって食べていたタケさんとフツさんにお願いした。

 2人は普段から焼きそばつくったりカレーを作ったりしているのでその辺はお手の物だろう。


 で、なにかな?

 タケさんを顎で使ってる? 暴れ馬を手なずけてる?

 何か妙な視線で見られてる気がするけど……

 もしかしてタケさんとフツさん、恐れられてる?

 まぁ怖い顔つきだから分からなくもないけど……普通に料理とお酒と騒ぐのが好きな気のいいおじさんだよ?


 え?


 そういう問題じゃない?

 う~ん、よくわからん!

 わからない時は食べて色々飲み込むに限る!

 ほら、食べた食べた! 丁度タケさんが上がったカツとか天ぷら持ってきてるよ


 え? 恐れ多くて食べられない?

 あっはっは、何言ってるのかなー? それともなに?


「あたしのあきらのカレーが食べられないってーの?」


『『『『喜んで食べさせていただきます!!!!』』』』


 うんうん、美味しいからどんどん食べてね。

 あーその、食べきれないなら無理しなくていいのよ?

 ワタツ様?

 どうしてあたしの方を見て土下座しながら食べてるのかな? 器用なのかな?

 ともかく。どんどんと目減りしていくお皿を見ながら、みんなの食が進んでいるのは確かだった。


 そして小一時間もすれば、すっかり料理は平らげられていた。

 皆もお腹をさすりながら満足そうな顔をしている。


 おもむろに立ち上がれば、皆の注目が集まる。

 和やかではあるが、どこか不思議そうな視線だ。


 当然だろう。いきなり集められたかと思えばカレー三昧なのだ。

 だがこれこそがあたしの狙いだった。


「さて――どれが一番美味しかったかな? これぞ、と答えられる人はいる?」


『『『『…………』』』』


 沈黙が広がった。皆、貝のように口を閉ざしている。シーフードだけに。


 悩ましい表情ばかりが並んでいた。

 誰しもが答えを出しあぐねている。

 どれもこれも美味しかったのだ。ナンバー1を決めるのなんてできるハズもない。


 そんな中、ワタツ様があたしにおずおずと尋ねてきた。


『その、巫女様……どれも美味しくてどれが一番だなんて決める事なんてできません。それぞれが美味しさを引き立て合って素晴らしい味へと仕上がっていて……』

「それよ!」

『それ、とは……?』


 それこそがあたしの一番言いたかったことなのだ。


「サラダ、カツ、練り物……色んな組み合わせによってカレーは無限の可能性を秘めている。全てを包み込む包容力、すなわち食の母なる海」


『『『『食の母なる海?!』』』』


「この海の前では、たとえどれだけ小さいものであろうと全てが混然一体となって主役になるのよ! そもそもルーの材料のスパイスだって粉でめっちゃ小さいし!」


『た、確かに!』

『はっ! 魚粉パウダーをスパイスとして使えば……』

『待て、今回は生肉からの成形だったが、乾きものとかはどうだ?!』

『スープの出汁に骨とか使えないか?!』

『く、くぅぅ、奥が深い』


 そして皆が騒めき始めた。話し合いに熱中していき、収拾がつかなくなりそうだ。

 だからあたしはそっとワタツ様に目配せした。


『静粛に! 巫女様の御前だ、静粛に! 僭越ながらこのワタツ、これよりカレートーナメントの神判をさせていただく!』


『『『『うおぉおおぉぉぉおおおぉん!!!』』』』


 ……あれ?


 いつの間にか変な流れになっていた。

 トーナメントって何?


 あの、タケさんにフツさん、それにウカちゃん? 特別審査員って何?

 晶さん? そんな変な目で見ないで?


 ……ああ、もうわかってるって!


「じゅ、準備があるから勝負は三日後ね! あと全ての作品はウカパパさんたちにレシピ送るから!」


 そうだった。

 元々はバカンスでなくシーフードカレーの調査に来たのでした。


 あ、あきらとのバカンスが……ぐぬぬ……




  ◇  ◇  ◇  ◇




 あっという間に3日間が過ぎていった。


 準備期間中は各地に味見として呼ばれ、当日はトーナメントというよりは完全に野外カレーフェスティバルだった。

 要はひたすら食べていただけである。そんなあたしをよそに、晶は色んな所にアドバイザーとして呼ばれ、ビーフポークチキン戦争の発端を担ったタケさんやフツさんも海と山の幸のコラボのために奔走、ウカちゃんはひたすらシーフードに合うスパイスの研究に明け暮れていた。そしておばさんはひたすら衣装を作っては色んな人が犠牲になっていた。


 なんだかあたしだけ疎外感があったのは否めない。いいもんいいもん。特に気に入ったカレーはにはお墨付きをあげた――というか巫女ご用達って看板に掲げてるのはなにかな? かなっ?!


 ともかく、様々な問題が一度に解決した。カレー様々にである。困ったときはカレーが一番だね、うん。


 そんなことを思い返しながら、帰りの電車に揺られつつ夕日に照らされた海を見ていた。皆はへとへとなのか寝息を立てている。食べていただけのあたしは特に疲れてないっていうか、いいもんいいもん!


「はぁ、結局あきらとあんまり遊べなかったなぁ……」

「あはは、みやこちゃんと行くと事件ばっかり起こるから」


 拗ねたように言葉を漏らせば、困ったように晶が笑いかけてくれる。慰めてくれるようだった。


「せっかく海に来たのに全然泳げなかったしさー、あたしもあきらの水着姿見たかったー! もちろん女の子の方で!」

「そ、それは……」

「ま、でも楽しかったといえば楽しかったんだけどね」

「そうだね。ボクも楽しかった」


 そう言って晶と顔を見合わせ笑いあう。お互いこの3日間の色んなことを思い出している。

 ま、いい思い出にはなったし、こういうのもあたしたちらしいんだろう。


 うーん、でも――


「でもさ、今度は2人きりで来たいね、みやこちゃん」

「――ぁ」


 同じ気持ちだったのか、晶がそんなことをこっそりと耳打ちをする。

 するとどんどん嬉しさやら気恥ずかしさやらで、顔が真っ赤になっていくのがわかる。


 あーなんだ、これ、不意打ちだ。


「………………ぅん」


 あたしはそうやって小さく頷くことしかできなかった。

 微笑ましい目で見てくる晶が少しだけ恨めしい。ので、女の子に変えてやった。


「み、みやこちゃん?! いきなりだと服がぶかぶかで?!」


 うるしゃい。あーもう、旅行資金のためにバイト探さないとね!


 あと、ちょっとずつ恋人としても慣れていかないと……ね。


これにて一旦完結で。

また何かネタを思いついたら書きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の最後までお腹が空きました。やばいです。 なんというかごちそうさまという感じでした。 [一言] こっちにはエオルゼアの住民がいないと思いきや何故か聞き馴染みのある地名が……水着集めに周…
[一言] ああ尊い、とかいうのでしょうか? 面白かったです。 良い物語をありがとうございます。
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