晶君は見えないとこまでこだわりたい
その日、あたし達は買い物に来ていた。
そう、買い物。
いやデートでもいいんだけど、それはまだちょっと恥ずかしい。
「これ! みやこちゃんにはこういう色が似合うと思うんだ!」
「え、色はいいんだけどさ、ちょっとデザイン際どくない? あたしぺったんだし」
「いいえ、お客様のスレンダーさだからこそ、服のシルエットが生きてきますよ!」
店員さんもこう言ってるし、試着しよ?
晶はそんな期待の籠もったにこやかな瞳で見てくる。
ちなみに今日の晶は男の娘モードだ。
いそいそと服を選んではあたしにどうかと見せてくる姿は、完全に景色と同化しており、違和感が全然なかった。
うんうん、元から女子力高いからね。
「ほらほら、こっちもよさそだし、こっちも……みやこちゃん、とにかく一度着てみてよ」
「あ、あたしだけじゃなくてあきらも……ほら、色違いでこっちのなんてどう?」
「そうですね、親友同士で色違いってのも、いいものですよ!」
それはさりげない店員さんの言葉だった。
だけど晶はショックを受けてしまったらしい。
「親友……親友……あはは、そうだね」
「あ、あきら?」
「お、お客様?!」
急にシュンとして暗い顔をして乾いた笑みを浮かべる晶。
店員さんは何か悪いことを言ったのかと、オロオロしている。
うん、晶の気持ちはわかるよ。
店員さんの気持ちもわかる。
傍から見れば、どうみても仲の良い女子同士だもんね。
でも店員さん、あれあたしの彼氏なんだ……可愛いだろう? 男なんだぜぇ?
◇ ◇ ◇ ◇
「と、いうことがありまして」
「あーしが店員でも同じこと言うと思う」
と、真琴ちゃんが呆れながらそういった。
今日はうちに真琴ちゃんが遊びに来ているのだ。
「男に戻ったんだし、普通に男女でデートすればいいじゃん」
「いやぁ、それがそのぉ……恥ずかしいといいますか……」
「恥ずかしいって……そんな事言ってると、誰かに取られても知らないし?」
「うっ! あ、あきらに限ってそんな!」
「あんなに可愛かったら男が放っておかないし」
「無いと言い切れない! こないだも2人で歩いてたら、晶ナンパされてたし!」
「マジで? どっちで?」
「男の娘の時!」
「やべぇ! その話ちょっと涎出てくるし!」
そうだよ……晶が誰かに靡くなんてことは想像できない。
だけど、誰か怖いおじさんとかに手篭めにされる可能性は否定できない。
正直、あたしも男だったら手を出したくなる可愛さなのだ。
いや、ちょっと待てよ?
「真琴ちゃん、ちょっといいかな?」
「うへ?」
………………
……
「よし! ナイス真琴ちゃん! ていうかこういうのあったのね!」
「……コワいくらい似合ってるし」
用意してもらったのは執事の衣装だ。
メイクもばっちり、今のあたしは男装の麗人。
真琴ちゃんが『ヅカ……うん、ヅカもありだし……』と呟いてるが放っておこう!
それよりも晶だ。
「ちょっと行って来る!」
「へ?!」
向かったのはお隣さん、晶のとこだ!
勝手知ったるなんとやら、インターホンも鳴らさず上がりこむと、そこには着せ替え人形にされている晶とおばさんがいた。
「あきら……っ?!」
「みやこちゃん?!」
「まぁまぁまぁ!!」
一言で言えばお嬢様だった。
フリルとレースをふんだんにあしらった、ちょっとアンティークな感じのワンピースドレス。
たまに着せられるゴスロリと似てるようで違うような……ただ、晶に非常に似合っていた。
執事な私が隣に立つと、余計に絵になりそうだ。
「もっと……もっとこっちに目線を……そうよ、そうよみやこちゃん!」
あ、はい。既におばさんが写真に収めていた。
ていうかおばさん、最近あきらが男の状態でも女装させることにためらいが無くなってるね……受け入れてる晶も晶だけど。
いや、うん。でもこれは晶が可愛いのが悪い。
着せ替え人形にされ撮影会もされて、体力を消耗しているのか、ぐったりとしていた。
憂いの表情が妙に似合っており、どこか嗜虐心を沸き立たせてしまった。
意地悪したくなってしまったのだ。
「あきら、男なのに彼女より可愛いよね」
「み、みやこちゃん?」
「っ?! 耽美な構図きたわー!」
顔を近付け、すぅっと頬を手でなぞる。
ビクッとおびえたようにまつげを振るわせる晶と、普段は言わないような台詞にあたしは自分に酔い痴れる。
「ねぇ、お嬢様……お嬢様って本当に男? 確認していい?」
「え、ちょっとみやこちゃん?!」
「いいわよ、みやこちゃん! 母親として許します!」
スススと首筋を撫で上げ胸元に置き、視線は下半身に移動させる。
さすがに恥ずかしいのか、晶は顔を真っ赤にするが……その赤さの分だけあたしの嗜虐心を燃え上がらせた。
「お嬢様、スカートをたくし上げなさい」
「――ッ?!」
「(――――グッ!)」
自分でもびっくりな低い声が出た。
晶は目を見開き、涙を浮かべながら、どうしたことかとあたしを見つめてくる。
おばさんは息を潜め、シャッターチャンスをうかがっている。
やべぇ、うちの彼氏めっさ可愛えぇ……
あたしのなかで何かが目覚めそうになった。
おばさん、あとでその写真何枚か下さい。
「お嬢様、言う事が聞けないんですか? あたしが手伝いましょう」
「ちょっ?! みやこちゃん! ダメ! 今はやばいって!」
「(カシャ――カシャカシャカシャ――カシャ)」
晶が必死に抗議してくるけれど、それはもはや逆効果でしかなかった。
強引に、しかしゆっくりと晶のスカートを捲り上げていく。
あ、かわいいふとももこんにちわ。
もう少しあげると下着も見え――
「――ブッ!!」
「み、みやこちゃん?! 鼻血?!」
――興奮のあまり、鼻血が出てしまった。
くらくらして倒れそう。
「みやこちゃん、みやこちゃーん?!」
下着もしっかりガーターベルトだなんて……
うん、うちの彼氏はエロ可愛い。
そういやあたし、何しにきたんだっけ?
新作書いています!
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