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彼女たちが求めるもの

「あ、あの、そんなに怒らなくてもいいではないですか……!」

「もう許したじゃありませんか。これ以上何をお望みなのやら」


 スミレの発言でひと悶着あったものの、限られる時間を無駄にしないためにも早々に切り上げ、ライトたちは屋敷内部を探索していた。


「そもそも、元をたどればライトさまが――――!」

「『心象閲覧(シンパシ)』を使って勝手に人の心を覗き込んだ挙句、それをわざわざ口に出しておいてまだ言いますか?」

「け、軽率な発言だったと謝ったじゃないですか!」

「それでも、気を付けるべきだとは思いますよ? 誰だって、触れられたくないものはあるでしょう?」

「そ、そうですね……。反省だけじゃなく、こうして“ダァリン”を探してもらっている以上、迷惑をかけている自覚を持つように以後気を付けます……」


 脱出ではなく、探索をしている理由。それは何もスミレの“ダァリン”を見つけるためだけではない。

 彼女たちの話を聞く限り、サルヴェイは亜人たちの扱いに慣れている。

 それに最古参のアイナ曰く、助けられた亜人種は相当数に上るが、彼女たちと同様に何処かに囚われている可能性があるらしい。

 アイナは治療に専念するため隔離されていたこともあり、彼らがどこにいるのか把握することは出来ていないとのことだった。

 また、従者も人間より亜人種を雇っているようで、ライトを連れてきたあの男以外、見かける従者たちはみなそろって亜人種だった。

 つまるところ、亜人種好きのサルヴェイにまだ囚われている者たちがいる可能性を加味し、こうして方々を探し回っていた。


 当然、巡回を行っている従者たちに見つかると連れ戻されそうになるが、対策を怠るほどライトは無能ではない。

 二十日鼠(メゾラット)変身(メタモル)したナトリーに先導してもらい、アイナには蛇特有の熱感知感覚器で、覗き見ることのできない扉の奥を探知してもらっている。

 両者に通路の安全を確認してもらったのち、彼らは従者たちが居ない通路を選択して通過していた。

 だが、それでも運悪く巡回している従者に見つかってしまう時もある。そういった時にはヒスイが『眠り詩』や『惑い詩』を歌い、無力化させていた。


「それにしても、ライトさまはあのようにおっしゃっていた割には、何もしていないように見受けられるのですが……」

「『観測者』を名乗ってはいましたが、流石に何でもできるわけではないです。自分一人だけならばまだしも、貴女方と行動を共にする以上、もっと合理的な手段があるわけですから」


 細長い形状をした鉄の棒をいつでも振えるように構えたまま、ライトは多少ぶっきらぼうに答える。

 攻撃を行ってくる者は今のところいないが、万が一に備え彼はスミレのすぐ傍で護衛行動をとっていた。

 ちなみに、ライトが手に持っている鉄の棒は、階段に設置されていた格子状の扉から、その一部を切り取って拝借している。

 代替案として武器に変身したナトリーを手に持っておくことも提案されたのだが、それでは状況把握が厳しいと判断し、今の状態となっている。

 それに、変身出来るからとはいえ、女性をそのように扱うのはどうかというライトなりの配慮もあった。


「まあまあ、そんなにカリカリ怒りなさんな。ダンナにゃ怒り顔よりも困惑した顔が似合ってますぜぃ」

「ナトリーの場合は、俺を困らせることを主目的に話してないか?」

「はてさて、何のことやらさっぱりわかりませんなぁ」


 偵察を終えその場に戻ってきたナトリーは、鼠の姿のままアイナの背に登り、チチチと笑う。

 元よりも明らかに軽い生物に変身しているわけだが、消えた質量は一体どこに消えているのだろう。

 ライトは問いかけようとして、一度バリューに似たようなことを聞いて叱られたことを思い出し、やめた。


「何、まだ怒ってるわけ? 器の小さい男ね。蟠りが何よ、注意されたことばっかに気を取られているから、囚われているって言われているのがわからないわけ?」

「余計なお世話だ。アイナたちだって、思い出したくもない過去はあるだろ」

「勿論あるわよ。でも、忘れ去るなんてできるはずないでしょ。それなら、それなりに答えられる覚悟をするべきじゃない?」

「答えられる覚悟……?」

「はぁ……、アンタには直接見せないと分からないみたいね」


 そう言うが早いか、アイナは一切躊躇することなく上着を脱ぎすてる。

 肩に乗っていたナトリーは、あーれー、と面白おかしそうに尾に沿って転がっていった。


「ちょ……っ!?」

「あら、食い入るような目で見つめてくるかと思ったら、恥じらいで頬を染めて目を逸らすなんて、なんとまあおかわいいこと」

「う、うるさい! 亜人種は人間に比べて性に無頓着すぎるんだよ! 大体何だ、急に服なんか脱いで――――」

「よくよく見なさい。これが私の恥じる過去、わが身に受けた最大の屈辱で、今でもその時間に幽囚されている痕よ」

「ぐぇっ!? わかった! 分かったから手を――――!」


 一向に目を向けようともしない彼の頭を両手で鷲掴みにすると、半ば強引に胸元へと引き寄せる。

 これに慌てふためくライトだったが、無理やり見せつけられたそれに、抵抗するのをピタリと辞めた。


「……これは、火傷の、痕か」

「そう。ヒスイも言ってたでしょ? ある程度治ったからもうこれくらいしか残ってないけど、最初は上半身の殆どがこんな感じだったわ」

「誰が、こんな……」

「誰って、勿論、わたしたち一族を襲ったハンターよ。わたしたちが熱感知を持っていることを逆手にとって、森に火を付けられて目くらまししてきたわけ。わたしは命からがら逃げだせたけど、家族の安否なんて知る由もないし、炎の中を突っ切って来たから全身大火傷を負っているわけだから、もう死を覚悟したわ」

「……そんな時、サルヴェイに助けられたと」

「そうよ。まさかこうして生きていられるとはホントに思ってもみなかったから、まあ、その点は感謝してもしきれないわね」


 ライトの頭から手を離すと、ナトリーから尾の先に引っ掛けてもらっていた服を手早く着込む。

 さも問題ないとばかりにふるまっていた彼女だが、やはりと言うべきか少しばかりは恥じらいがあったらしい。


「……まさかとは思うが、他の二人もそうなのか?」

「アイナよりかは悲惨じゃないかな。アタシの場合だと、羽を毟り取られた後、四肢を切り落とされて慰み者にされるところだったくらいだしー」

「……どの辺りが悲惨じゃないのかよくわからないな」


 ヘラヘラと笑っていたヒスイの首元をよく見ると、長く伸びた髪の陰に隠れて、縦に裂かれたような細い傷痕が複数見えた。

 彼女の尖った爪で首輪を外そうとすると、必然的にそのような傷が付くことだろう。

 決して笑って語れる話ではない。下手すればトラウマになっていてもおかしくはない状態だったにもかかわらず彼女が笑っていられるのは、楽天家だからの一言で済ませられることではないだろう。


「まあまあ、こうして助かってるしー、自分から海辺を離れちゃったことも原因だもん。海に囚われた生き方はあまり好きじゃないけど、生きていくにはしょうがないしねー。それに、アタシたちの過去がどうであれ、何かに囚われていない人の方が、少ないんじゃないかなー」

「そうですぞ、ライトのダンナぁ。皆が皆なかったことにしたい過去と向き合って生きているってなぁ。まぁダンナの気持ちもわかんなくはないですぜぃ。価値観は人それぞれってなぁ」


 結局誰かの上に乗りたかったのだろうか、二十日鼠(メゾラット)に姿を変えたままのナトリーは、最終的にライトの肩に飛び乗った。

 鼠の姿である以上その表情を汲み取ることは出来ないが、相も変わらずからりとした笑顔をしているようにライトは感じた。


「ナトリーも、そうなんだろう? ここに来るまでの経緯ってのは」

「ん、あっしですかい? あっしは二人に比べちゃだいぶマシですぜぃ? 気がついたらこんな力を身に着けていて、それ以外に自分の事なんか一切わかんなかった程度ですからなぁ」

「……記憶が無いのか」

「あるにはあるんですぞ? でもあっしが元々人間だったことと、失敗作と呼ばれていたことぐらいなんで、あってもなくてもって感じですなぁ」

「元人間ってことは――――」


 恐らく生物兵器として彼女は改造されていたのだろう。

 限りなく本物に近い構造に変身できる力など、兵器として利用するには十分すぎる能力だ。

 ……だが、彼女は何らかの原因で捨てられた。失敗作とまで蔑まれて。


「あっしの場合、二人とは違って“出来事”ではなく“記憶”に囚われてるんですな。けど、そいつぁ失くしちまえるだけでなく、無かったとしても生きていける代物なわけで。だから、あっしは気楽に生きていくことにしたんだぜぃ」

「……そうか。だとすると、俺としては一つ疑問が浮かんでくるんだが」

「疑問、ですか?」


 少し困惑しがちな声でスミレが問いかける。

 三人が置かれていた環境については知っていたであろう彼女のことだ、それについての戸惑いではなく、ライトが唐突に発した質問の意図が汲み取れなかったのだろう。

 対して彼は、自らの過去を語ろうとしなかったスミレに、敢えてそのことを追求しなかった。

 彼女が置かれていた境遇に関しては、全く違う環境で育ったライトであっても理解できるものだから。


「ええ。スミレさんに関してはまだ理解できます。けれど、貴女たちは何故、今更になって脱走を目論む俺の案に乗ったんだ? ここにいた方が安心できるのもそうだが、サルヴェイはアイナたちのことを心から思いやっている。不満なんて――――」

「沢山あるわよ」

「沢山あるのか……」

「どれほど住みやすくっても故郷の方が全然いいわね。それにここにいても暇なのよ」

「空と潮風が恋しいんだよねー。さっきも言ったけど自由に飛び回ることもできないし、恋愛なんてもってのほかでしょー?」

「気楽に生きていくとさっき言ったけども、何の変化もない建物に閉じ込められるのは勘弁でしてなぁ。どうせならこの体をフル活用しまくって、あれやこれや好き勝手できる旅をして見たいもんだぜぃ」

「本当に沢山あるんだな……」


 今までの鬱憤を晴らせる機会とみたのか、三者三様に好き勝手文句を告げていく。

 どんどんエスカレートしていく愚痴の言い合いに、ライトは口を挟めなくなっていた。


「当然です。いくら良くしてもらっているとはいえ、わたくしたちはあのお方から囚われていることに違いはないですから」


 そんな中、唯一言い合いに参加せずただ聞く側に回っていたスミレは胸の前で両手を合わせ、女神のようににっこりと微笑む。

 いや、女神なのは女神なのだが、言動や見た目のせいで『深海から来た深窓の令嬢』といった印象がライトの中で強くなっていた。


「それと引き換えに安心できる生活を送れているとは思うんだが、それはそれで違うんだよな」

「ええ。彼女たちはそれよりも自由を望んでいるのです。自由に選択できるということは、いつでも自分の身に危険が迫る可能性があるということ。それでも、わたくしたちは誰かの意志に身を委ねることを良しとするほど弱くはありませんよ。それに、自らの今までを投棄してしまう事は、絶対に良いとは言えないでしょう?」

「……そうだな。確かにその通りだ」


 スミレの言う通り、それこそ彼女が囚われていると言った通りに、ライトたちは過去を引きずって生きてきた。

 今までも、そしてこれからも、その過去は決して拭い去ることのできない事実であり、自らの弱さと愚かさを痛感させられることだろう。

 心身ともに縛りつけられる(しがらみ)から抜け出すことは困難の極める。だが、それでも前を向くことは出来る。

 自由を求める彼女らと同様に、ライトたちもまた、自らを許せる時がいつの日か来るのかもしれない。


(レイジさん、俺、もう少し今の自分と向き合ってみるよ)


 スミレたちの意志に感じるところがあったのだろう。

 過去、そして今の自身をこのような存在だと定義してきたライトだが、その考えを改めて、もう少し自分と向き合うことを誓った。

 だが、その根底にあるのは結局のところ――――。


「あっ! 皆さん、止まってください!!」


 スミレたちの考えに感化されたライトが脇目も振らず思考を巡らせているうちに、スミレはいつの間にか少し離れた位置で大声をあげていた。

 これには、未だ文句を口に出し続けていた三者も我に返る。


「「「「(しーっ! 静かに!)」」」」

「(す、すみません! 皆さん、止まってください!!)」

(いや、なぜ言い直した……)


 わざわざ二度も同じことを全員に伝えたスミレは、興奮した様子で目の前の扉を指さしていた。


「ここです……! ここにダァリンが閉じ込められているはずです!」

「ここって言われても……」


 指さした扉の前には、ご丁寧にも剣と盾の紋章が飾られている。

 ああいった装飾が施された扉の先にあるものは、大体の方が想像できるだろう。


「この扉の奥は武器庫、だよな?」

「それっぽいですなぁ」

「一応熱感知してみたけど、これといった温源は感じられなかったわよ」

「もしかしてだけど、スミレさんって、こういった物に疎いのではー?」

「「「それは…………ありえる」」」


 初対面の時から何処か抜けていると思ってはいたが、やはり箱入り娘のような状態だったのならば、物事に疎いと言うのもわからなくはない。

 妙に納得したとばかりの表情で、ライトを含む三人はヒスイの言葉に賛同の意を示していた。


「もう、なんだっていいじゃないですか! 皆さんわたくしは先に入ってますからね」

「え、いや、ちょっと、スミレさん!?」


 スミレは誰の言葉に耳を貸すまでもなく、扉を何の気なしに開きするりと中に入っていく。

 急ぎ後を追いかけた四人を出迎えたのは、やはりと言うべきか、理路整然と並べられた武器の数々と、部屋の最奥の壁に飾り付けられている子供の背丈ほどの大きさをした錨だけだった。

 当然ながら、ひと一人どころか、生命らしきものが存在しない単なる武器庫。

 それでも、スミレは愛しき人を見つけたかのように、一目散にそれへと駆けよる。


「あぁ、ダァリン! やっぱりここにいらしたのね! 会いたかった……会いたかったわ!!」


 そして、人目を気にすることなく大粒の涙をぽろぽろ零し、二度と離すまいと力いっぱい抱きしめた。


 ――――壁にかけられていた、あの錨に。


「いや! ちょっと待ってくれ! 錨が“ダァリン”だって!? あの時間違いなく人って言ってただろ!?」

「いいえ、人とは言ってないわよ。 似たような言い回しをしていたからわたしも騙されたわ……」

「彼女の場合、愛する物と書いてダァリンと呼ぶのでしょうなぁ」

「何だよそれ……」

「じ、じゃあ、イチモツってのはー……」

「えっ! 見てわかりませんか!? この剛健で立派な逸物(イチモツ)を!」


 スミレがうっとりとした表情のまま、呆気にとられている四人へ見せびらかすように愛おしく撫でていたのは、錨に巻き付けられた鎖だった。

 言われてみれば、確かに付属品には相応しくないほどの装飾と、それでも頑丈であるかをアピールしているかのごとく、風化や錆の跡一つすらありはしなかった。

 とはいえども、そんなことを知る由もなかった四人にとっては何よりも困惑の方が大きく……。


「いや、その、流石にわからないです……」

「えぇ。ほんっと、わかりづらいわね」


 ライトに対してはよく悪態を吐いていたアイナが、珍しくスミレに対しても文句を言っているほどだったた。


「で、でも、無事見つかったからよかったよねー! それに、種族を超えた愛……とても素敵じゃない!?」

「アンタの口から『愛』とか『恋』とかの話されてもね……。どちらにしろスケールが違いすぎるし」


 人間同様に同種同士の交配が当然と考えているアイナにとって、攫った男性の精気を全て奪い取ったのち、死んでしまった場合は海に投棄するといった鳥人(ハルピュイア)の生態には理解が示せないようだ。

 勿論、ライトも同意見である。


「まあ、ヒスイの言い分も尤もだ。誰が何を愛そうが、本人たちが納得いくのなら別にこれといって文句を言うことはない。それに、アイナやヒスイの奪われた装備だとかもここに整頓されているんだろう。探す手間が省けたと思えば一石二鳥だしな」


 各自の所有物を探すように促しつつ、ライトも格子片の代わりになりそうな物を探す。

 これでも戦えないことはないが、耐久性に難があることやあまりにも軽い点を考慮し、正規品の武器を用いようと考えていた。


(まぁ流石に破剣の代わりになりそうな物はないよな。仕方がない、もう暫くは棍を使うか)


 当然だが、あの武器ほど相手の武装を破壊し、行動を封じることに特化した代物はそう簡単には見つからない。

 その代わりに手頃な鉄棍が見つかったので、塞がっていない右手を伸ばす。


「ん……っ?」


 伸ばした右腕が一瞬だけ動かなくなり脱力しかけたものの、すぐに何事もなかったかのように棍棒を掴むことが出来た。


(この感覚……)


 左手に持っていた槌をそっと元の位置に戻し、彼は違和感を覚えた右肩を撫でる。

 痺れや痛みを感じることはないが、少しだけ感覚が麻痺しているように覚えた。


「どうかなさったのですか?」

「いや、何でもありません。先を急ぎましょう」

「嘘です。明らかに何か隠してますよね」

「……また『心象閲覧(シンパシ)』ですか」

「いいえ。あなたさまの顔を見ればすぐにわかりました。観念してください」

「……右肩に少しだけ変な感覚が覚えた、ただそれだけですよ。今はもう普通に動きますし」

「あまり無理はなさらないで下さいね」

「大丈夫です。この程度、何の支障もありません」

「そう、ですか……?」


 忠告を突っぱねられたからだろうか、スミレは目を伏せもの悲しげに笑う。

 あれほどダァリンと再会し喜んでいたにもかかわらず、関心を四人の方へと向けている辺り、本来の目的を見失ってはいないようだ。

 そのダァリンこと錨だが、鎖をたすき掛けするようなな形でスミレの背に固定されている。

 時折、金属の擦れる音が聞こえてくるが、隠密行動に支障をきたすほどではないだろう。


「にしても、どうしてすぐに嘘だと気づかれるんだ……? バリューにもすぐに勘付かれるし、一体何が原因なのやら……」

「そうね……。まずはその愛想のない顔をどうにかしたら?」

「――そうか、真顔だから嘘だとバレるのか。だとすると、これからは表情もうまく切り替える必要があるな……」

「ライトのダンナって、もしや馬鹿なのでは……?」

「頭が良い脳筋って嫌いー。わけわからない理由で的確な事を言ってくるもん」


 変わり映えの無い表情を指摘されたライトが、頬をつねったり眉をひそめているうちに、それぞれの手荷物を無事見つけ出したのか、ヒスイとナトリーがその場に戻ってくる。

 最初に発言したはずのアイナは彼に興味を無くしたのか、体を限界まで伸ばし、天井付近にある窓を覗き込んでいた。


「そういえばー、バリューって誰?」

「ああ、伝えてなかったな。一緒に旅をしている俺の相棒で、今は確かマーケットで俺の帰りを待っているはずだ」

「……それ本当?」


 窓の外を見つめていたアイナは、身をひるがえすととぐろを巻きつつライトのそばまで近寄る。

 決して冗談を言いそうにない、やけに深刻そうな顔をして。


「嘘を吐く必要ないだろ」

「だとしたら状況は最悪かもね」

「なんだそれ、もったいぶらずに教えてくれ」

「もったいぶってないわよ。篝火にしてはやけに明るい火の明かりがマーケット付近に発生してる。熱感知するまでもなく、あれはマーケット自体が燃えていると考えるべきね」

「何だって!? マーケットが、燃えている……!?」


 そう、彼らがダァリンを探し屋敷の中を徘徊している間に、マーケットでは異常事態が発生していたのだ。

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