その始まりは、終わりへの旅路
序章がこの位置なのは少し理由があるのです。(一番最初に移動できなかったこともありますが……)
それと、次話が終章なので今回あとがきはありません。
以下本文です。
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かけがえのない大切なものを失った時から、二人の終わりは始まっていた。
「――――貴殿らに、最後の任を命じる」
「レイジ・アベのロケットを遺族の元へ届け、城まで帰還せよ」
物々しい玉座にて、深く腰を下ろした二国の王たちは、それだけ告げると再び口を固く結ぶ。
重く静かに淡々と語られた勅令。それはきっと弾劾の声なのだろう。
少なくとも、その令を賜った彼らには、そうとしか考えられなかった。
「……はい」
「承知いたしました」
虹彩が霞んだ瞳の下には濃い隈が広がり、顔面からは表情が抜け落ち……それでもなお、二人は騎士で居続けようとした。
行ってきた罪の精算と、友との約束を果たすために。
――――それも、この任務を遂行する事で終わりを迎える。
自身が不甲斐ないせいで多くの人が傷ついた。
取り返しのつかない悲劇を招き、剣呑なる場を混乱に陥れ、挙句の果てに守らなければならない大切な人まで守りきれず、自害されている。
ならば、潔くその罪を償い、贖い、悔いて恥じ、己の愚かさをその身にしっかりと刻み付けたうえで、道を歩むことを止め、ただ、目的を果たすことだけを考えよう。
この重任を終えるより遥か昔から、騎士を名乗る素質などありはしなかったのだから。
「…行くか」
「……ああ、行こう」
令を賜って二日と経たずに、彼らは国境の門前に立つ。
手荷物は傍目で見る限り皆無。……元より、欲望など殆ど持たない生き方をしていた二人には、必要不可欠なものなどほぼありはしない。
この身と体力、装備と得物。そして決して失えやしない大切な思い出と、遺品の首飾り。
たったそれだけで十分だった。
「……」
「……」
一言も言葉が発せられない、堅苦しい空気で一歩踏み出す。
二人の心内で蟠り続ける、逃れようのない辛苦と絶望。
騙し騙し生きて行こうとも一生癒えることのない傷と、一生消えることのない罪の烙印。
……それでも、彼らは逃げる事を拒み、我が身を顧みることなく先を急ぐ。
親愛なる友のため、己の全てを終わらせるための終点への旅は、こうして始まりを告げた。




