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遭遇 Side.B

 ―――ここに戻ってくるのは、やけに久し振りに感じた。

 まだ、あの日から一週間ほどしか経っていねぇのに。

 けどまあ、あの頃のオレと今のオレは全然違ぇから、そう思っちまうのも仕方ねぇよな。


 結局、オレは外出許可を貰うことなく、じじいが外出している時に、いつの間にか修理されていた武器をかっさらって、地下から地上に戻ってきた。

 心配なんてしようが、知ったこっちゃねぇな。

 オレは早くあいつらを見つけて、手足の復讐をしなけりゃいけないんでね。


 術後、オレは結構早い段階で意識を取り戻した。

 新しく取り付けられていた、蒸気機関の手足に驚いたけど、問題なく動くことが分かったんで、すぐさま地上へと戻ろうとした。

 けど、左腕と右足の蒸気機関に体がついて行かなかったんで、馴染むまで七日ほど鍛錬してたってわけ。


 にしても、じじいがオレの体に術を施すとは言っていたが、まさか、手足の代わりに蒸気機関を引っ付ける術だとは、流石に思っていなかったぜ。

 てか、術というよりか、じじいから俺専用の義腕義足を貰った、と言った方が正しいんじゃねぇかな?

 ……なんて感じてたけど、手足の切断面にあたる部分は、金属の板が引っ付いた状態から、完全に機械化されているような感じになっていやがった。

 ようするに、明らかに義腕義足として扱う物ではない蒸気機関を、無理矢理体に引っ付けている感じなのかもしれねぇ。


 そんな蒸気機関だが、左腕はやけにデカくて、バランスが取り辛ぇし、右足は重くて動かしにくい。

 それに、常に蒸し熱い蒸気を体に浴びるのは、たまったもんじゃねぇんだよ!

 まあ、それに見合う操作性と、兵装は満足し足りない程だけどな。

 じっとしているのは性に合わねぇから、地下にいた間、手足の動作確認もしていたけど、機関に内蔵されていた機能は、わりとやべぇものだった。


 ゴツイ右足には、じじいが見せびらかしていた、蒸気ブーツと同じ機能がついていた。

 おまけに、ブーツ二つ分の圧力が出やがる。

 広い空間で試していた時、圧力が強すぎて天上にぶつかりそうになったのは、ほんとヒヤリとしたぜ……。

 そして、左腕のこのどでけえ蒸気機器!

 ほんと、コイツはヤベェ!

 蒸気の扱い方さえしっかりと把握しちまえば、一種の兵器なみに強ぇ!

 ちょっぴり試してみただけでも、地下がぶっ壊れそうになったっけな。

 おかげでこっぴどく叱られたけど、そもそも、取り付けた本人に怒られる筋合いなんてねぇんだよなぁ。


 とはいえ、そんな手足を装着することになったが、オレはこうやって昔と同じぐらい元気になれた。

 勿論、じじいには感謝してるが、オレを長い間匿い続けるわけにもいかねぇだろうし、奴らを野放しにしておくわけにもいかねぇ。

 それに、オレがいなかった間、〝暗部〟がどうなってんのかも気になる。

 死に物狂いの訓練で、どうにか新しい手足にも馴染めたことだし、少しとばしてみっか……!


 意識して右足に力を溜めた。

 そうすると、右足から噴き出していた蒸気が、徐々に足から出なくなっていく。

 感覚的にだが、徐々に足の中へ熱が溜まってんのが分かる。

 そして、ある程度温まったところで、ジャンプするように、地面を蹴りだす。

 その力を感じ取った右足は、足裏から蒸気を一気に噴出した。

 こうすることで、あの蒸気ブーツみてぇに、高速で移動できるし、ある程度の高度まで跳躍できる勢いが得られるんだよな。

 着地も少しコツがいるけど、足裏から蒸気を吐き出しゃ、あまり衝撃を受けずに着地できっから、特に問題はねぇ。

 慣れちまったら、なかなかに快適なシロモノだった。


 急いで〝暗部〟に向かうため、オレはピョンピョンと建物の上を飛び回る。

 そうしているうちにふと思った。

 今のオレは人間を捨てちまってんだろうな、と。

 赤褐色に染まった巨大な左腕と、強靭な右足。これだけでも、人間だとは思えねぇ。

 そのどちらとも、僅かな隙間から絶え間なく蒸気を噴き出していやがるから、なおさらだ。

 今の意思だって、ヤツらへ復讐するという気持ちの方が強ぇし、今の顔はまるで大鬼のように仏頂面してるに違いねぇ。

 そんなの傍から見たら、まるで、物語に現れる悪魔と思われても仕方がねぇよな。

 ……いや、生まれ変わったあの時から、たった七日しか経ってねぇから、今のオレはただの小悪魔か。

 そんじゃ、オレの欲望を叶えていくと、そのうち大悪魔にでもなるんだろうな。

 ―――そうなったら、いつかは正義のヒーローにオレは倒される。

 子供のころ、オレが憧れていたヒーローに。

 その前に、オレにこんな運命を背負わせた神様を、ガツンと一発殴り飛ばしてやりてぇものだ。


「あぁ、それもアリだな。それも、生きがいの一つにしとくか!」


 そう口にしただけで、自然と口元が緩んだ。

 そうだ、それでいい。オレに正義なんて似合わねぇ。

 オレは、オレがやりたいようにやってやる……!


 ……〝暗部〟付近まで来たが、特に変わった様子はねぇようだな。

 辺りを見回ったが、相変わらず人気がねぇくらいで、これといって問題は起こってねぇようだった。

 ちょっとばかりほっとして、北方へと視界を向けて……。

 そこで、ようやく気付いた。


「……誰だ、あいつら?」


 見たことねぇ二人組が、〝暗部〟から南下して出てきやがった。

 二人組っつーと、オレを襲った人数と同じだ。

 思い出すだけで、歯ぎしりしちまう。

 ―――クソ。アイツら、次会った時は覚えてろよ……!


 にしても、目の前にいる奴らも、ここらに住んでるヤツらとは違って、とても変な格好だった

 一人は巨大な甲冑に身を包んで、巨大な剣を持ってやがる。

 典型的な近くで出くわしたくねぇ相手だ。

 あんなのじゃ、ろくな銃弾も弾くに違いねぇ。

 もう一人は鎧を纏っているのかどうかすら怪しい薄着で、変な形の剣を持っていた。

 一目見ただけだとただ無防備なカスだが、欠けガキと同じで、わけわかんねぇ術かなんかを使うヤツだろう。


 変な旅人とも思えなくはねぇが、本能的に、ヤツらは危険だと頭が警鐘を鳴らす。

 そもそも、旅人ならこんな辺境に……ましてや、〝暗部〟に行こうとは思わねぇ。


「……まさか、あいつらの仲間か?」


 十分にあり得る話だ。

 欠けガキを守るヤツが一人だと、ゾウと名乗ったバケモノですら、守り切れない可能性がある。

 けど、四人だったらどうだ?

 どこから来たとしても、欠けガキがここまで無傷でやってこれてもおかしくはねぇだろうな。

 どちらにしろ、〝暗部〟へと侵入したうえで、のうのうと脱出しているということは、中の環境を荒らされた可能性が高ぇ。

 そうだったら、生かして帰すわけにはいかねぇ……!

 ここで情報を引き出し、始末してやる!


 歩いているヤツらから、少し離れた建物の屋上に着地し、背中に背負っていた折畳式蒸気機関ライフルを構える。

 狙いは、至近距離では敵うかわかんねぇ、あの鎧の脳天。

 厄介なヤツは始末するに限る。一人は即死しようが構わねぇ。

 どうせもう一人が生きてさえいりゃあ、そいつから情報を引き出せるわけだし。

 ……まあ、そもそも、生きて帰す気なんてさらさらねぇしな。

 鎧の頭蓋へと標準を合わせ、悦びに身を震わせる。

 ようやく、ヤツらに一矢報いる機会が訪れたんだ。

 今度こそオレが勝つ!


「さあ、復讐の始まりだぜぇ……!」


 相方が振り向いていたが、構いやしねぇ。

 オレが放った弾丸は、一寸の狂いもなく、鎧の頭へと吸い込まれていった。



 *



「やれやれ、せっかちなやつじゃのう」


 一言も告げずにその場を去ったブロウへと、老人は小言を零す。


(だがまぁ、久々に()を使った割に、腕が鈍ってなかったようで助かったわい)


 皺だらけだが筋肉の失われていない腕をさすり、鍛冶場へと戻ろうとしたその足は、数歩も進むことなく、その場に止まった。


「……確かに、ここから急いで逃げ出すことは、得策だったようじゃな」

「いえいえ、きっと彼は貴方を巻き込みたくなかったのでしょう。左腕と右足を理解しがたい力で取られ、ボコボコにされた相手から」

「ここがバレるとは思わなかったがのう。これも老いのせいかねぇ……」

「おじいさんの逃走劇は凄かったよ、最初はどこ行ったか分からなかったもん。でも国から出られそうになかったし、あのあと国中を調べていたから、あとは地下と〝暗部〟ぐらいしか行く場所が無かったからね」


 老人の目の前、鍛冶場の入り口には、眼帯の少年と紅いスーツの男が立っている。

 どうやらブロウの痕跡を追っているうちに、ついにこの場所を嗅ぎつけたようだ


「貴方には借りがありますからね。ここで返させていただきます」

「おや、わしは貸しを作った覚えはないぞ? ……この歳なんで、ボケが始まっているのかもしれんがの」

「そういえば! おじいさん、その瞳綺麗だね。老いを感じないほど、鋭く光って見えるよ」

「そんなことを言われたのは初めてじゃな。……ふむ、今わしは非常に機嫌がいいから、お前さんたちがここに勝手に入ったことを、見逃してやってもよいぞ」


 未知の存在であるゾウとアントを目にしても、老人はものおじをするどころか、冗談まで口にしていた。

 だが、キラキラと目を輝かせていたアントは、老人のその一言を聞いて、つまらなさそうな表情をする。

 まるで最初から、老人の人格には、これっぽちも興味が無かったかのように。


「そんなことはどうだっていいよ。さっき出てったやつを助けたことも、寛大なぼくが許してあげる。……その瞳を僕にくれたらね」

「なんじゃ、最初からその気じゃったか。ならば、おぬしらをあやつの元へ行かせるわけにはいかんのう」

「全く話が通じないですね。アント、貰ったら先を急ぎますよ。どうせ、まだ近くにいるはずです」

「はーい。じゃあ、おじいさんの()()()()()ね」


 アントがそう返事をするとともに……。


 老人の元へ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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